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味覚障害は病気のサイン コロナ?肝臓や脳の疾患でも

 日本経済新聞電子版

新型コロナウイルス感染症の症状として注目されるようになった「味覚障害」。実は栄養不足や脳梗塞、肝障害、認知症などによっても症状が起きる。隠れた病気のサインとして捉え、適切に対処して予防したい。

写真はイメージ=(c)mangostar-123RF

 食べ物の「味がしない」「薄く感じる」など本来とは違う味の感じ方をする症状を味覚障害という。欧米の調査ではコロナ感染症患者の7~9割に見られるという報告もあり、関心が高まっている。

 国内では年間約24万人が味覚障害で受診したと推測されており、悩む人も多い。コロナだけでなく、様々な病気が潜むことある。貧血やドライマウス、肝障害、腎臓病、糖尿病、甲状腺疾患、顔面神経麻痺(まひ)、脳梗塞、認知症なども味覚障害を引き起こす。また、風邪の後遺症や、降圧剤や糖尿病薬など薬剤の影響、ストレスも原因になる。

 「味は舌の味細胞で感知し、神経を通して脳に伝わり認識される。そのどこかに異常が起こると味覚障害を起こす」。味覚障害のしくみについて兵庫医科大学で味覚外来を担当する任智美講師はこう説明する。例えば顔面神経麻痺では神経が影響を受け、脳梗塞では脳に障害が発生し、その結果、味覚障害が起こる。

 「味覚障害の多くは徐々に味の感覚が低下するため、自分では気づきにくいこともある。進行すると味を感じられなくなる可能性もあり、発症から時間が経つほど治りにくい傾向にある」(任講師)

 隠れている可能性がある疾患を発見するためにも、早めに気づき、治療することが大切だ。特に高齢者は様々な感覚が低下するので自覚しにくく、服用する薬も多く味覚障害を起こしやすい。家族が変化に注意したい。

 「おいしく感じない」「味付けが濃い」と指摘する、普段より多くの調味料を使うようになるなどがあれば味覚障害を疑う。2週間以上続くようなら、耳鼻咽喉科や味覚外来の受診を勧めよう。

[画像のクリックで拡大表示]

 では、どのように予防すればいいのか。味覚障害の最大の原因が亜鉛不足だ。任講師によると「亜鉛はDNAの複製に不可欠なミネラルで、不足すると細胞分裂が正常に行われない。味細胞の新陳代謝が遅れることで味を感じる機能が低下する」という。

 厚生労働省が定める食事摂取基準(2020年版)では、1日に男性は11ミリグラム、女性は8ミリグラムの亜鉛摂取が推奨されている。だが、帝京平成大学の児玉浩子特任教授によると「18歳以上では6割以上の人で不足している」という。

 亜鉛の欠乏を防ぐには、カキやレバー、赤身の肉など、亜鉛を多く含む食品を食べる。「食事で十分な量を確保できないならサプリメントを活用するのもいい。1日分の記載量を守れば取り過ぎることはない」(児玉特任教授)

 亜鉛の吸収が悪くなったり、体から排出してしまう量が増えたりすることも要因となる。「食品添加物の中には亜鉛と結合して吸収を阻害するものもあるので、加工食品の取り過ぎに注意する。また、過度な運動も汗や尿からの亜鉛の排せつ量を増やす」と児玉特任教授は注意を促す。

 風邪も味覚障害を起こしやすい。「味細胞の異常に加え風味を感じる嗅覚も障害を受けることが多く、治るまでには1年以上かかることもある」(任講師)。十分な睡眠と栄養をとり、風邪をひかないようにする。

 味覚障害になった場合、治療の柱は薬と心身の調整だ。「亜鉛不足が原因と考えられる場合は亜鉛薬を使い、自己治癒力を高めるための漢方薬を併用することもある」(任講師)。治療は総じて長期にわたる。亜鉛薬の治療だけでも3カ月、長い場合は1年以上服用を続ける。未然に防ぐことが何より大切だ。

(ライター 武田京子)

[NIKKEI プラス1 2021年2月27日付]

この記事は、日本経済新聞電子版「健康づくり」からの転載です。

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