座り過ぎは寿命縮める? 心臓病や糖尿病のリスク上昇
立ってパソコン操作、奨励する企業も
日本経済新聞電子版
座り過ぎていませんか?オフィスや自宅で座っている時間が長いと、糖尿病や心臓病などになるリスクが高くなることが分かってきた。このリスクは週末に適度な運動をするくらいでは減らせないという。パソコンを立って操作するよう奨励する企業など、座り過ぎ解消に向けた動きも出てきた。
東京都江東区にあるフジクラの本社ビル。1階の人事部健康経営推進室では、10人近くのスタッフが立ってパソコンに向かっていた。個人の席はない。パソコンなどを置く位置を昇降させ、立っても座っても作業できるデスクが部屋の中央に8台置かれている。

同社は従業員の健康増進を社を挙げて支援する「健康経営」に力を入れている。「座り過ぎが健康に悪いという知見を耳にして、3年前にこの方式に変えた」と同室主席技術員の篠原賢治さん。社員からは「肩こりや腰痛が気にならなくなった」といった声が上がっているという。
近年、座り過ぎが健康に悪影響を及ぼすとの疫学研究の結果が、国内外で次々に報告されている。
統計的に相関
2012年にオーストラリアのグループが、1日に座っている時間が11時間以上の成人は、4時間未満の成人と比べて総死亡のリスクが1.4倍高いと発表した。15年にはカナダのグループが各国で実施された研究を統計的に統合し、心臓や血管の病気やがん、糖尿病などと、座り過ぎの習慣との間の関連が確認されたと結論づけた。
座り過ぎが問題だとしても、週末などにしっかり運動をすれば大丈夫ではないか。早稲田大学教授(健康行動科学)の岡浩一朗さんは「多少運動をしても、座り過ぎによる健康リスクが簡単には下がらないのが問題です」と指摘する。
16年にノルウェーなどのグループが健康リスクを減らすのに必要な運動量を検証した。軽いジョギングやテニスの練習のような「中等度強度」の運動を1日60~75分すれば、座り過ぎによるリスクをほぼ相殺できるという。
だが「実際にこれほどの運動をしている人は少数。自分の健康管理に自信のある人ほど、座り過ぎの習慣に足をすくわれてしまう」(岡さん)。こうした人々は、英語で「アクティブ(活動的な)・カウチポテト」と呼ばれる。自分では活動的なつもりでも、実際はカウチ(ソファ)に座ってポテトチップを食べる人々と大差ない。
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