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目まい頭痛に倦怠感…「寒暖差疲労」にうつ病リスクも

 日本経済新聞電子版

寒さが厳しくなるこの時期は、気温変化や暖房の利いた室内と外気との温度差による頭痛やだるさに悩む人も多い。「寒暖差疲労」とも呼ばれ、放置すると日常生活に響くだけでなく、うつ病などにつながるリスクもある。

寒暖差疲労には蓄積された別のストレスが遠因となるケースが多い(東京都港区のクリニックでの診療)

 「近所での買い物だけで疲れ果て、帰宅すると数時間寝込んでしまう」。都内に住む70歳代の女性は昨冬に原因不明の倦怠(けんたい)感に悩み、内科クリニックを受診。寒暖差疲労と診断された。

 寒暖差疲労の主な症状は頭痛や目まい、疲労感、体の冷えなど。季節の変わり目に加え、日中の気温の変化や空調の利いた室内と外部の温度差などがきっかけとなる。この女性は夏から秋にかけての気温変化に体がついていけず、負担となっていたようだ。

 せたがや内科・神経内科クリニック(東京・世田谷)の久手堅司院長によると「寒暖差疲労は自律神経の機能が乱れることで発生する」という。人間は自律神経の働きで、外部環境が変わっても体温を一定に保とうとする。自律神経のうち交感神経は緊張状態のときに、副交感神経はリラックスしたときに優位になる。

 寒いときは交感神経の働きにより皮膚の血流を減らしたり、体を震わせて筋肉を動かしたりすることで熱を逃さず体温を高めようとする。暑いときは副交感神経の働きで皮膚血流を増やしたり、発汗により熱を逃したりして体温を下げる。

 外気温の変化をうけストレスがかかると交感神経が優位になり続けるなどして、体調を崩してしまう。夏場のクーラー病が典型で「最近は季節変化などに応じて一年中起きやすくなっている」(久手堅氏)。

 東京有明医療大学の川嶋朗教授は「寒暖差疲労の潜在的な原因は、運動不足やストレスがかかる仕事など現代的な生活スタイルだ」と指摘する。運動不足で汗をかかなかったり、体を冷やすような飲食物を摂取したりして蓄積した体への負担で自律神経が正常に働かなくなる。寒暖差をきっかけに、それが症状として表れるケースが多いという。

[画像のクリックで拡大表示]

 寒暖差疲労は単なる頭痛ですまないリスクもある。川嶋教授は「寒暖差疲労が悪化するとうつ病を発症する場合もある」と話す。交感神経が優位になると不安やイライラをコントロールする「セロトニン」や、やる気などを感じさせる「ドーパミン」が脳で分泌され続けて疲労につながる。

 交感神経が張り詰めた状態が続いた反動で副交感神経が優位となると、神経伝達物質が急減してうつにつながる恐れがあるという。ほかにも気管支ぜんそくやアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患につながる可能性もあるとされる。

 治療や予防に役立つのは生活改善だ。歩行やストレッチといった軽い運動、長めの入浴は自律神経を整える効果があるという。やや熱いお湯でぬらしたタオルを目の上にのせ、目の奥にある副交感神経を刺激するのも一手だ。

 しっかりとした睡眠や下半身の保温、体内の熱を奪う働きがあるアルコールを飲み過ぎないこと、といった生活改善も欠かせない。食事で食べ物を十分にかむと、ストレス物質「コルチゾール」の分泌が抑えられるため、リラックスやストレス解消につながり自律神経の働きを整えるという。

 寒さが厳しくなる冬は、外出前に室内の快適な温度をできるだけ逃さないようにしっかり着込んだり、腹部や太もも、首など血流の多い部分を重点的に温めたりするのも有効だ。

◇     ◇     ◇

首や肩の負担も注意

 寒暖差疲労については医師の間でも広く理解されているとはいいづらい。症状が個人によって違うため、すぐに診断しにくい面もある。せたがや内科・神経内科クリニックでは2年ほど前に専門外来を開設。患者には自覚症状について専用のチェックシートを使って回答してもらい、診断の参考にしている。

 スマートフォンの長時間使用の有無も聞き取る。スマホは顔を画面に近づけてのぞき込むように使うため姿勢が前かがみになる。首や肩に負担がかかり、自律神経の乱れの一因となる。

 新型コロナウイルスへの感染防止のマスクの長時間着用も影響がありそうだ。あごへの違和感が続き、顎関節や首・肩の疲れにつながる。

(後藤宏光)

[日本経済新聞夕刊2021年1月6日付]

この記事は、日本経済新聞電子版「病気・医療」からの転載です。

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