日経グッデイ

ぐったり&もやもやが翌朝スッキリ! 深く眠る、元気に起きる睡眠術

睡眠を妨げる5つの病気の最新対策【後編】

悪夢、寝汗、酸っぱい胃液がこみ上げてきて眠れないのは病気が原因?!

不快感で寝付けなかったり夜中に目が覚めたり、睡眠時間はとっているのに日中眠くて仕方ない─。あなたの眠りが“悪い”のは病気のせいかもしれません。その見分け方と対処法、最新の治療法を2回にわたって紹介します。

1.ムカムカして目が覚めたり、眠れなかったりする 胃食道逆流症

「週3回以上胸焼け」がある人の7割は睡眠障害あり

 胃食道逆流症は、一度、食道を通って胃に入ったはずの食べ物が逆流して、酸っぱい胃液がこみ上げたり、頻繁に胸焼けが起こったりする病気。一見、睡眠には関係なさそうだが、「『酸っぱいものがこみ上げてきて飛び起きた』『胸焼けがして眠れない』と訴える患者さんは意外に多い」と話すのは、胃食道逆流症治療・研究の第一人者の東北大学の本郷道夫名誉教授。

 全国の通院患者を対象にした調査では、逆流症状が週1回ある人の約40%、3回以上ある人の約70%が、なかなか寝付けない「入眠障害」、途中で目が覚める「中途覚醒」があると回答した(下図グラフ)。睡眠時無呼吸症候群と胃食道逆流症を併発する人もおり、胃食道逆流症の治療をしたら、睡眠時無呼吸症候群も治る人がいるという。

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 「腰の曲がった60歳以上の女性や40歳以上で肥満の男性に多い病気だが、30~50代の女性でも、暴飲暴食をしたときやウエストを締め付けるような服装をした日の夜に胸焼けや逆流が起きやすい。脂っこいものを食べすぎたり、ストレスが多かったりすると、胃酸の分泌が多くなり、逆流が起こりやすく、酸に弱い食道を荒らしてしまうので要注意」と本郷名誉教授は話す。

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生活習慣などを見直す プロトンポンプ阻害薬も

<対 策>

 睡眠中に胃食道逆流症が起こらないようにするには、まずは夕食で脂っこいものをとるのは避け、暴飲暴食をしないこと。ウエストを締めつけたり、辛いものを食べすぎたりもご法度。食べ物の消化には3時間程度かかるので、睡眠前3時間は飲食をしないことも重要だ。

 「みかんなどの柑橘類やビールやコーラなどの炭酸飲料で胃酸の逆流や胸焼けが起こりやすい人もいる。原因になる食べ物は人それぞれだが、“これを食べたら胸焼けした”というものは避けること。気分転換をしてストレスとうまく付き合うようにすれば、胃酸の逆流も治まり、よく眠れるようになることも多い」と本郷名誉教授。

 それでも症状が解消しない場合には薬物治療が有効だ。夜だけ逆流がある人は市販薬の「H2ブロッカー」でも症状が改善する可能性がある。しかし、それで治らない人は、消化器内科で、昼夜を問わず胃酸の逆流を抑える「プロトンポンプ阻害薬」を処方してもらうといい。

 受診先は消化器内科へ。

こんな生活は胃酸を逆流させる、炎症も起きやすくなる
N G・食べてすぐに横になる
・辛いものの食べすぎ
・補正下着やベルトなどで体を締め付ける
・食べすぎ 飲みすぎ

 規則正しい生活と腹八分目の食事が基本。30~50代の女性は、食道の炎症がないのに逆流症状が出る場合が多く、そういった人は、生活習慣を見直すだけで症状が解消しやすい。

2.朝起きて憂うつ、夜中に嫌な気分で目覚める 悪夢

悪夢+意欲低下なら うつ病の危険性あり

 「悪夢にうなされた」経験は、誰にでもあるはず。「眠っている間は身を守るリハーサルをしているようなものなので、夢というのは基本的には悪夢。悪夢を見たからといって気にする必要はない」と日本大学医学部の内山真主任教授。

 ただ、嫌な夢を見て朝調子が悪い状態が続くのであれば、その背景には病気の危険があるかもしれない、。さらに、「一日中憂うつ」「一日中何もしたくない」状態が2週間以上続き、食欲不振、睡眠障害、自殺のことばかり考えるなどの症状があれば、うつ病の危険性大だ。事故や災害、事件の後に起こるPTSD(心的外傷後ストレス障害)も悪夢にうなされやすいという。

何日も続くなら うつ病の専門家に相談を

<対 策>

 「悪夢が続いて調子が悪く、一日中憂うつで生活に支障が出ているようなら、一度、精神科や心療内科でうつ病か、あるいはほかに原因があるのか、診断・治療を受けて」と内山主任教授はアドバイスする。

 うつ病と診断された場合は、SSRI、SNRIなどの抗うつ薬による治療と休息が必要。PTSDの場合には、本人が体験したつらい出来事を受け入れるための心理療法も重要だ。

 受診は、精神科や心療内科へ。

悪夢を見て、夜中に暴れる「レム睡眠行動障害」も

悪夢を見て叫んだり、腕を振り回したり、殴る、蹴るといった実際の行動に出るのが「レム睡眠行動障害」。本人は行動に相当する夢を体験している。60歳以上の男性に多く、500人に1人ぐらいが発症。時々叫ぶくらいなら大きな問題はないが、立ち上がるなどの行動を伴うようなら、転倒の危険があるため、抗てんかん薬による治療を。

3.汗をかいた不快感で目覚める、寝覚めが悪い 寝汗

寝汗と微熱が続く人は 悪性の病気のサインかも

 寝ている間は、体温調節のために誰もが汗をかく。しかし、不快感で目が覚める日が続くと、心配になる。

 「寝汗で来院する患者さんの大半は布団のかけすぎ。しかし、頻度は低いが微熱が続いているときには、結核や悪性リンパ腫の危険性があるので病院で検査を」と本郷名誉教授。

 それ以外の寝汗には、手のひらや首筋などに部分的に汗をかく「精神性発汗」と全身に汗をかく「温熱性発汗」の2種類がある。40~50代の女性で、首筋や顔だけに汗をかく人は更年期のホットフラッシュが睡眠時に起きている可能性が。日中も顔のほてりや汗が気になるようなら婦人科へ。強い不安などのストレスが原因で自律神経が乱れ、体温調節がうまくできなくなって寝汗をかく場合もある。

 一方、全身性発汗が続き、疲れやすい、食べているのにやせる、眼球が飛び出た感じがするという場合は甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の可能性がある。

更年期ならホルモン補充 バセドウ病には抗甲状腺薬

<対 策>

 更年期のホットフラッシュの場合はホルモン補充療法が効く。「加味逍遥散」などの漢方薬でも症状が抑えられる。強いストレスが原因の場合は、睡眠導入剤や抗不安薬を心療内科などで処方してもらうといい。

 バセドウ病は、甲状腺ホルモンが必要以上に産出してしまう病気。抗甲状腺薬で甲状腺ホルモンを抑えるのが治療の中心になる。若い女性の場合には、手術や放射線療法も検討される。

 「必要以上に寝汗をかかないようにするには、かける布団の量の調節、入浴後1時間以上たってから寝床に入る、ワサビや唐辛子など発汗を促すようなものは控えるといった対策も大事」と本郷名誉教授は話す。

 手のひらや首筋・顔だけに汗をかくタイプなら、受診は婦人科や心療内科。

 全身ぐっしょり汗をかくタイプなら、受診は内分泌科や内科。

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(取材・文:福島安紀/イラスト:小迎裕美子(イメージ)、三弓素青)

前編でご紹介した「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」と「むずむず脚症候群」は、こちらをお読みください。
内山 真さん
日本大学医学部 精神医学系 主任教授
内山 真さん 1980年東北大学医学部卒。国立精神・神経センター精神生理部部長などを経て06年から現職。日大医学部附属板橋病院精神神経科部長。著書に『睡眠障害の対応と治療ガイドライン』など。
本郷道夫さん
国立黒川病院管理者 東北大学名誉教授
本郷道夫さん 1973年東北大学医学部卒。同大心療内科助教授などを経て96年同大総合診療部教授。12年より現職。GERD(胃食道逆流症)研究会会長。著書に『逆流性食道炎-病態・診断・治療-』など。

(出典:日経ヘルス2012年12月号)