2.朝起きて憂うつ、夜中に嫌な気分で目覚める 悪夢
悪夢+意欲低下なら うつ病の危険性あり
「悪夢にうなされた」経験は、誰にでもあるはず。「眠っている間は身を守るリハーサルをしているようなものなので、夢というのは基本的には悪夢。悪夢を見たからといって気にする必要はない」と日本大学医学部の内山真主任教授。
ただ、嫌な夢を見て朝調子が悪い状態が続くのであれば、その背景には病気の危険があるかもしれない、。さらに、「一日中憂うつ」「一日中何もしたくない」状態が2週間以上続き、食欲不振、睡眠障害、自殺のことばかり考えるなどの症状があれば、うつ病の危険性大だ。事故や災害、事件の後に起こるPTSD(心的外傷後ストレス障害)も悪夢にうなされやすいという。
何日も続くなら うつ病の専門家に相談を
<対 策>
「悪夢が続いて調子が悪く、一日中憂うつで生活に支障が出ているようなら、一度、精神科や心療内科でうつ病か、あるいはほかに原因があるのか、診断・治療を受けて」と内山主任教授はアドバイスする。
うつ病と診断された場合は、SSRI、SNRIなどの抗うつ薬による治療と休息が必要。PTSDの場合には、本人が体験したつらい出来事を受け入れるための心理療法も重要だ。
受診は、精神科や心療内科へ。
悪夢を見て叫んだり、腕を振り回したり、殴る、蹴るといった実際の行動に出るのが「レム睡眠行動障害」。本人は行動に相当する夢を体験している。60歳以上の男性に多く、500人に1人ぐらいが発症。時々叫ぶくらいなら大きな問題はないが、立ち上がるなどの行動を伴うようなら、転倒の危険があるため、抗てんかん薬による治療を。
3.汗をかいた不快感で目覚める、寝覚めが悪い 寝汗
寝汗と微熱が続く人は 悪性の病気のサインかも
寝ている間は、体温調節のために誰もが汗をかく。しかし、不快感で目が覚める日が続くと、心配になる。
「寝汗で来院する患者さんの大半は布団のかけすぎ。しかし、頻度は低いが微熱が続いているときには、結核や悪性リンパ腫の危険性があるので病院で検査を」と本郷名誉教授。
それ以外の寝汗には、手のひらや首筋などに部分的に汗をかく「精神性発汗」と全身に汗をかく「温熱性発汗」の2種類がある。40~50代の女性で、首筋や顔だけに汗をかく人は更年期のホットフラッシュが睡眠時に起きている可能性が。日中も顔のほてりや汗が気になるようなら婦人科へ。強い不安などのストレスが原因で自律神経が乱れ、体温調節がうまくできなくなって寝汗をかく場合もある。
一方、全身性発汗が続き、疲れやすい、食べているのにやせる、眼球が飛び出た感じがするという場合は甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の可能性がある。
更年期ならホルモン補充 バセドウ病には抗甲状腺薬
<対 策>
更年期のホットフラッシュの場合はホルモン補充療法が効く。「加味逍遥散」などの漢方薬でも症状が抑えられる。強いストレスが原因の場合は、睡眠導入剤や抗不安薬を心療内科などで処方してもらうといい。
バセドウ病は、甲状腺ホルモンが必要以上に産出してしまう病気。抗甲状腺薬で甲状腺ホルモンを抑えるのが治療の中心になる。若い女性の場合には、手術や放射線療法も検討される。
「必要以上に寝汗をかかないようにするには、かける布団の量の調節、入浴後1時間以上たってから寝床に入る、ワサビや唐辛子など発汗を促すようなものは控えるといった対策も大事」と本郷名誉教授は話す。
手のひらや首筋・顔だけに汗をかくタイプなら、受診は婦人科や心療内科。
全身ぐっしょり汗をかくタイプなら、受診は内分泌科や内科。
(取材・文:福島安紀/イラスト:小迎裕美子(イメージ)、三弓素青)
日本大学医学部 精神医学系 主任教授
国立黒川病院管理者 東北大学名誉教授

(出典:日経ヘルス2012年12月号)