2.横になるとじっとしていられない。女性に発症が多い、むずむず脚症候群。
不快感を抑える ドーパミン不足が原因
「安静にすると脚に不快感を覚え、脚を動かさずにいられないので眠りにつけない」──。まさか病気とは思わない人が多いだろうが、心当たりのある人は、「むずむず脚症候群」という睡眠障害かもしれない。
日本では成人人口の1~3%程度患者がいると考えられている。中でも女性に多く、特に妊娠中は5人に1人が発症するという。
「症状は多様(上図)だが、むずむずするというより、脚がほてったりピリピリと嫌な感じがして、たたいたり歩き回ったりすると楽になる。夏に冷たい板の間で寝たくなる人や布団から膝の下を出して寝ている人は可能性がある。奇妙な病名だが、安静にした途端、脚が不快で眠れないのだから、重症の人にとっては深刻」と内山主任教授。
原因は、筋肉の異常な感覚を抑える神経伝達物質「ドーパミン」の作用が不十分になるため。不快症状は脚を中心に出る。
「ドーパミンの量と働きが低下すると、脚を動かすことでしか不快感が抑えられなくなる。ドーパミンの産出に必要な鉄分の不足が原因になっていることもある」と内山主任教授。
寝る前の酒、コーヒーは× ドーパミン作動薬が効果的
<対 策>
不快感を和らげるには、保冷剤や保冷寝具で脚を冷やして寝ると効果的。ただし、脚が不快で眠れないからといって、単に睡眠薬をのんでも解決にはならない。
「冷やして寝られる人はそれでOKだが、症状がひどい人は『ドーパミン作動薬』という薬による治療が必要。この薬でドーパミン低下の原因自体が取り除かれるわけではないので、一般的には薬をのみ続ける必要があるが、鉄分の不足でドーパミンが減ってしまった人は、鉄剤を2~3カ月服用しただけで治る場合もある。ただし、鉄分の多い食品を多くとったくらいでは、病気を治すには不十分」と内山主任教授は話す。
アルコール、カフェイン飲料、タバコは筋肉の不快感を促進するので、寝る前の摂取は控えたほうがよいそうだ。
受診は、睡眠外来や神経内科。
- 家人に、「寝ている間、脚を曲げ伸ばししている」といわれる。
- 階段を踏み外したような感覚がある。
- 足がぴくついて夜中に目が覚める。
このような体験や症状の自覚がある人は、「周期性四肢運動障害」の可能性がある。これは、眠っている間に脚がぴくぴくしたり、脚を曲げ伸ばししたりする動作が、周期的に繰り返される状態で、むずむず脚症候群の人の8割がこの病気を併発しているとされる。本人に自覚はなくても、脚を動かすたびに脳が覚醒して眠りが浅くなるため、熟睡できず、昼間に強い眠気を感じる人が多い。治療はやはり、ドーパミン作動薬が有効のほか、抗てんかん薬が使われることも多い。
(取材・文:福島安紀/イラスト(イメージ):小迎裕美子/イラスト(解説図):三弓素青)
(次回、「寝汗」や「悪夢」などで眠りが妨げられる病気と対策を紹介します)
日本大学医学部 精神医学系 主任教授
国立黒川病院管理者 東北大学名誉教授

(出典:日経ヘルス2012年12月号)