不快感で寝付けなかったり夜中に目が覚めたり、睡眠時間はとっているのに日中眠くて仕方ない─。あなたの眠りが“悪い”のは病気のせいかもしれません。その見分け方と対処法、最新の治療法を2回にわたって紹介します。
1.日中に強い眠気に襲われる 睡眠時無呼吸症候群(SAS)
黄体ホルモンの減少も影響 下あごの細い人、太った人がなりやすい
「夜中、息が止まっていることがあるよ」。家族などにこんな指摘をされたことのある人は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の恐れが。肥満の男性の病気と思われがちだが、実は、気道のハリを保っている黄体ホルモンが出なくなる閉経後は女性でも増える。
「30~40代の女性でも、下あごが小さい人が急に太ったりするとなりやすい。SASかどうかは、1日入院して睡眠中の脳波や呼吸の状態を調べる睡眠検査を受ければ、診断できる」と話すのは、日本大学医学部精神医学系の内山真主任教授だ。
口と鼻からの気流(空気の流れ)が10秒以上止まる「無呼吸」か、気流が低下する「低呼吸」が1時間当たり5回以上あったときにはSASと診断される。
SASは脳血管障害のリスクを高める
無呼吸になっているときには、あごやのどの脂肪などで気道が塞がれる(下図)。苦しくなると、無意識に脳が目覚めて、緩んだのどの筋肉を起きているのと同じ状態に戻して気道を回復する
そのため「SASの人は一晩中、眠りが浅い状態になり、日中の強い眠気で気づく場合が少なくない。夫のほうが先に眠ってしまう家庭などでは、妻の“無呼吸”は気づかれにくい。睡眠時無呼吸が続くと脳血管障害や心筋梗塞、不整脈のリスクが高まるので要注意だ」と内山主任教授は強調する。
鼻マスクで「気道の確保」太っている人はやせること
<対 策>
治療の第一選択は、睡眠時に鼻から空気を送り込み、気道が塞がるのを防ぐ鼻マスク「CPAP(シーパップ)」の着用だ。きちんと呼吸ができるので無意識に脳が目覚めてしまうことがなくなり、熟睡できる。
「CPAPを着けて寝るのは大変だと思うかもしれないが、使用後、久しぶりに熟睡できたと喜ぶ人が多い。睡眠時無呼吸が解消すれば心筋梗塞など命にかかわる病気を減らす効果もある」と内山主任教授。
また、軽症の人は、寝るときに、のどがふさがらないようにするマウスピース(口腔内装置)を着用する方法もあるという。
肥満が睡眠時無呼吸の原因になっている人は、体重を落とすことも大切だ。軽症なら、肥満を解消しただけで無呼吸になる回数が減り、いびきも減る。
受診は、睡眠外来や呼吸器内科、心療内科。
赤ちゃんの発育不全の予防にCPAPの検討は有効
妊娠中に急に太った人は、睡眠時無呼吸症候群になっていないか要チェック。もしそうなら、胎児に酸素が行きにくくなり、発育に悪影響を与える危険性が高いからだ。「妊娠中に大きないびきと無呼吸が続くようなら、産婦人科医に相談してCPAPの着用の検討を」(内山主任教授)。