日経グッデイ

ぐったり&もやもやが翌朝スッキリ! 深く眠る、元気に起きる睡眠術

入眠後3時間の深い眠りで 体も心も回復!肌にもいい!

脳を休める「徐波睡眠(じょはすいみん)」が熟睡のカギだった。

睡眠時間が短い、眠っても疲れが取れない…。現代人の多くが睡眠の量や質に問題を感じています。睡眠は体と心を休ませ、元気を回復させる時間。でも、忙しいと、つい、睡眠を削りがち。そうでなくても眠りの質は年齢とともに、悪くなるのです! 今夜からできる対策で、ぐっすり眠り、すっきり目覚める快眠生活を手に入れましょう。

90分サイクルの「浅い眠り」「深い眠り」を活用しよう

 眠りにはリズムがあり、約90分のサイクルで、深い眠り(ノンレム睡眠)と浅い眠り(レム睡眠)を交互に繰り返す。特に大切なのが、入眠してからの3時間。ここで最も深い眠り「徐波睡眠(じょはすいみん)」が訪れる。徐波睡眠は、“脳の睡眠”とも呼ばれている。

 「徐波睡眠の状態のとき、体の中では、昼間に仕事やストレスで熱を帯びた脳の温度を下げ、脳の神経を守るケアが行われている」と国立精神・神経医療研究センターの三島和夫さん。

 最も深い眠りが訪れるこの時間には、成長ホルモンも分泌される。「成長ホルモンは昼間、紫外線に当たって傷ついた肌の細胞を修復、再生する働きもあるなど、若返りホルモンとも呼ばれる」(スリープクリニック調布の遠藤拓郎院長)。

 このように、眠りを深くする必要があるのは、体にそもそも備わるアンチエイジング効果を高めるためでもある。

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眠りの質が上がると体にいい7つのことが手に入る

 入眠後、すぐに訪れる「徐波睡眠」を、できるだけ深く、長い時間、確保できるかが、睡眠の質を高めるポイントだ。だが、ストレスや悩みを抱えていたり、冷えやほてりなどで体温を下げる放熱がうまく機能していなかったりすると、スムーズに入睡できず、徐波睡眠を十分に確保できないようになる。そのためにも、普段から「光」「食事」「体温」の3つの要素を意識しておこう(詳しくは前回記事「深い眠りを実現!「光」「食事」「体温」の3つのルール」を参照)。睡眠の悩みをなくし、その質を高めておけば、それだけで体にうれしい7つの“ご利益”がもたらされる。

1.ストレスに強くなる

 睡眠時間を増やし、さらに質も上げることで、ストレスに対する抵抗力が高くなる。「睡眠時間が6時間を割り込むと、確実にストレス耐性が下がることは研究でも明らかです」(早稲田大学スポーツ科学学術院の内田直教授)。睡眠に悩みを持つ人は、主に昼間のパフォーマンスに影響が出やすい。1日のやる気や昼食後の“睡魔”にも関連する。

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2.疲れが取れて 気持ちも前向きに

 睡眠には、体の修復と心の整理をする大きな役割がある。「体の修復は“ノンレム睡眠”と呼ばれる深い眠りのときに行われ、記憶の定着にも関与しているとされる。一方、“レム睡眠”という夢を見る睡眠では、感情の整理をしているとされます」(三島さん)。つまり、十分な眠りは、翌日の疲労回復と気分の爽快感にもつながるわけだ。

3.代謝が良くなり太りにくく!

 睡眠の質がダイエットにも影響することは、最近ではかなり知られてきた。寝不足だったり、不規則だったりすると、食事での満腹感を与える「レプチン」、空腹感をつくる「グレリン」というホルモンが乱れて、食事量や栄養バランスを崩しやすい。規則正しい睡眠は、食のリズムを整えて、代謝を正常に戻す。

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4.免疫が上がり 病気になりにくく!

 睡眠中は副交感神経が働くことで血を全身に行き渡らせ、細胞を修復する。このとき、免疫細胞である「ヘルパーT細胞」や「NK細胞」の働きが活性して、免疫力が高まるとされる。最近の米国の研究では、睡眠時間が6時間未満の人にB型肝炎ワクチンを投与したところ、睡眠時間が6時間以上の人に比べて、ワクチンの有効性が11.5倍低くなることがわかった。

5.頭がスッキリ 気持ちも前向きに

 3時間や4時間といった短時間睡眠では、深い眠りばかりか、浅い眠りにも影響が大。「記憶や感情の整理ができないうえに、仕事のミスなどのエラーを増やす原因になる。どんなに短くても4.5時間以上は睡眠を確保してほしい」(遠藤院長)。

6.潤いとツヤ、ハリがある 美肌を保てる

 睡眠のリズムが崩れると、肌のリズムも乱れることがわかっている。資生堂の実験では、深夜5分間隔で睡眠を中断する実験をしたところ、実験直後から「皮脂量低下」「水分保持量低下」が起こった。1週間後には乾燥が気になる状態になり、肌のリズムが乱れることが明らかに。

7.酸化を防いで アンチエイジングに

 質の高い眠りが、人間の心や体を無理なく再生するのは、ここまで説明した通り。つまり、満足な眠りを手に入れることは、アンチエイジングにもつながる。「6.5時間から7.5時間の睡眠帯が最も長寿だという報告があります」(遠藤院長)。

 もしも、これまでに紹介してきた睡眠の質を上げる方法を実践しても、あまり効果が実感できなければ…。次回からは、睡眠を妨げる5つの病気とその最新対策について取り上げていく。


(写真:岡﨑健志/取材・文:村上富美)

内田 直さん
早稲田大学スポーツ科学 学術院 教授 医学博士
内田 直さん 1983年滋賀医科大学卒業。現在、「あべクリニック」(東京都荒川区)でカウンセリングも行う。「交感神経はそもそも頭と体を同時に動かすときに働くものだが、現代では頭ばかりを使う生活でバランスを崩しやすい。体側の自律神経を調えるためには運動が大切」
遠藤拓郎さん
スリープクリニック調布 院長
遠藤拓郎さん 1987年東京慈恵会医科大学卒業。睡眠トラブルの治療を数多く手がけ、テレビ雑誌などでも活躍。近著『朝5時半起きの習慣で、人生はうまくいく!』(フォレスト出版)のタイトルどおり、自身は午前1時就寝~5時半起床の4時間半睡眠を実践する。
三島和夫さん
国立精神・神経医療センター 精神保健研究所 精神生理研究部 部長
三島和夫さん 1987年秋田大学医学部卒業。同大学助教授などを経て現職。睡眠障害の治療・研究に当たる。「日本の女性、特に仕事を持つ女性は睡眠時間が短い。夜型で寝付きが悪い人は起床後6時間は日光を浴び、午後からは、強い光を避けるよう心がけましょう」

(出典:日経ヘルス2012年12月号)