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すぐに始めたい! 血管を強くする食事

乱れた食生活を続けていくと、血管はボロボロに

 日経Gooday編集部

新年、明けましておめでとうございます。新年の今こそ、食生活の見直しに着手しましょう! (c)structuresxx-123RF

 みなさま、明けましておめでとうございます。

 年末年始に暴飲暴食を続けてしまったという人は少なくないでしょう。こうした乱れた食生活を続けていくと、血管はボロボロになっていきます。

 近年、血管の健康が注目されています。ご存じのように、人の生命力は血管によって維持されています。血液がスムーズに流れると、新陳代謝が促進されて体の健康、そして若さが維持されます。しかし、不適切な食生活や運動不足、さらにストレス過多な生活を続けると、血管が傷みやすくなり、血管は硬くなり、血液の質も悪化し、健康や若さは損なわれてしまいます。

 これから先の人生で、健康寿命をどれだけ延ばせるか、そして見た目の若さを維持できるかも、血管をいかに若く保てるかにかかっているわけです。そこで今回は日経Goodayのこれまでの記事から、血管の健康を保つために実践したい食事のポイントを紹介しましょう。年が明けた今こそ、食生活の改善を始める最大のチャンスです。できるところから着手しましょう。

血管を強くするための食事法には3つの原則がある

食生活は血管の若さを保つための重要な要素です。血管は年齢ではなく、乱れた食生活でボロボロになっていきます。(c)santosh chavan -123RF

 「血管は年齢ではなく、乱れた食生活でボロボロになっていくのです」と話すのは、ドイツのボッフム大学永代教授で、冠心会大崎病院東京ハートセンター顧問の南和友先生です。

 「血管を若返らせる食事」というと、タマネギ、納豆など“特定の食材”がフォーカスされることが多いと思います。もちろん、タマネギも納豆もいい効果があります。しかし、南先生は、はやりの食材を「部分的」に取り入れることは避けたほうがいいと話します。

 「血管や血液にいい食材というのは確かにあります。ただし、単体で取り入れて満足するのではなく、生活そのものを変えるために使ってください」(南先生)。例えば、納豆を取り入れても、高塩分のおかずを好んで食べ、炭水化物の重ね食べを続けていたら、血管を若返らせることはできません。つまり、基本となる食生活を変えずに、ただ流行の食材だけを取り入れるだけでは意味はないのです。

 では、基本となる食生活をどうすればいいのでしょうか――。血管を強くするための食事法には3つの原則があると南先生は話します。

 その3原則は極めてシンプルです。具体的には、(1)低塩分、(2)糖質を控えめに、(3)善玉のHDLコレステロールを増やす、の3つです。南先生は、この3原則を守り、血管を強くする食生活に切り替えると、約3週間後から徐々に効果が表れると話します。

 血液は、新たに作られては壊れるという、新陳代謝を繰り返して常に新鮮な状態をキープしています。「成分によっても異なりますが、おおむね血液は、約21日、3週間程度で徐々に入れ替わっていきます。まずは21日間、食事や運動に気をつけることで血液の質が徐々に変わっていき、少しずつ血管力が高まっていきます」(南先生)

3原則の1つは「塩分」! 日本人は塩分をとり過ぎ

 血管を強くする食事3原則の1つは「塩分」です。塩分が血圧に悪影響を及ぼすことは、周知の通り。塩分の過剰摂取は高血圧と密接に関連し、血管の老化を推し進めるファクターです。

日本人は塩分をとり過ぎている。(c)yumehana -123rf

 「食事で塩分を控えることは非常に大切です。しかし、日本人は塩分をとり過ぎています」と南先生は強調する。日本人が1日に摂取する塩分量は、男性11.0g、女性9.2g(厚生労働省「平成27年国民健康・栄養調査結果の概要」より)。これに対し、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2015年版)」の目標量は、男性が1日8.0g未満、女性が1日7.0g未満です。南先生は、「(病院に来る)患者には1日6gまでと言っています」と話します。

糖質を抑え、善玉コレステロールを増やす食事を!

 次に取り組むべきなのが「糖質を控えめに」することだ。ごはんや麺類をしっかり食べる日本人は、炭水化物の過剰摂取に陥りやすい傾向があります。

 血液中の糖の濃度が高い「高血糖」の状態になると、血管が傷み、詰まりやすくなっていきます。そして、糖尿病の予備群になると、心筋梗塞・脳梗塞のリスクが高まることもわかっています。さらに、糖尿病になると、腎臓や目の網膜など体の各所で合併症を引き起こすようになります。また、糖質の過剰摂取は中性脂肪も増やすことも知られています。

白米のごはん1膳(150g)に含まれる糖質は55g程度。50歳を過ぎたら、毎食ごはんをしっかりとるのではなく、減らしていこう。(イラスト:Akiko Takagi)

 南先生は、「若いころと食事量が変わらないと糖質過多になってしまいます。50歳を過ぎたら、1日3食しっかり炭水化物を摂取するのは控えたほうがいいでしょう。まずは、ごはんやパンを半量にするなど、少しずつ減らしてみてください」と話します。

 このほか、血糖値の上昇スピードを穏やかにするには、「低GI食品」(GI:Glycemic Index)を選ぶ、野菜や肉・魚を、ごはんなどの炭水化物の前に食べるなど「食べる順番」を変えることも心がけるといいでしょう。

 3つ目が、「善玉であるHDLコレステロールを増やす」です。動脈硬化に深く関わる「コレステロール」には悪玉のLDLコレステロールと善玉のHDLコレステロールがあることが知られています。LDLコレステロールは肝臓で合成されたコレステロールを全身の組織に運ぶ「運搬役」、HDLコレステロールは余ったコレステロールを回収して、肝臓に運ぶ「回収役」です。

 LDLコレステロールが過剰になると、行き場をなくして動脈の壁に入り込んでプラークを作ったり、動脈硬化の原因となります。なので悪玉と呼ばれるわけです。しかし、悪玉のLDLコレステロールが増えても、善玉のHDLコレステロールが増えてきちんと回収作業をしてくれれば問題ありません。そこで、重要となるのが、運搬役のLDLコレステロールと回収役のHDLコレステロールのバランスを適正に保つことです。

 具体的には、LDLコレステロールをHDLコレステロールで割った「LH比」が2.0以上になると動脈硬化が疑われます。つまり、2.0を超えないことが健康の指標となるわけです。1.5以下なら、血管内はきれいで健康的な状態といえます。

 ではどんな食材を選ぶと、HDLコレステロールを増やせるのでしょうか。南先生は、「例えば、納豆、ねぎ、お茶、きのこ類、トマトなどを意図的にとるようにすると、HDLコレステロールを増やす効果を期待できます。『お・さ・か・な・す・き・や・ね(お魚好きやね)』を参考に、毎日取り入れるようにしましょう」とアドバイスします。

南先生が推奨する食材「お・さ・か・な・す・き・や・ね」

 「お・さ・か・な・す・き・や・ね」は、抗酸化作用が高く、血液サラサラにも効果がある食材を含んでいます。ねぎを野菜から独立させているのは、ねぎにアリシンという血液をサラサラにする成分が含まれているためです。

 この食事3原則のほかに、南先生が気をつけてほしいと話すのが、「たんぱく質を十分にとる食事を心がける」こと。たんぱく質は血管の材料になるためです。「たんぱく質は、血管内膜の結合を強くします。動脈壁そのものも強くするので、脳出血などを防ぐ効果が期待できます。特に動物性たんぱく質を意識してとりましょう」(南先生)。

血管の老化の原因の1つ「糖化」を抑える食事とは?

 近年、老化の元凶の1つとして、「糖化」が注目されています。糖化とは、体内の過剰な糖とたんぱく質が結びつき、たんぱく質が劣化する現象です。体内の血管、そして内臓、骨、関節などの機能も低下させ、さまざまな病気の原因になります。血管の若さを維持するためにも、糖化対策も怠らないようにしましょう。

糖化コントロールの3本柱
AGEsは、過剰な糖とたんぱく質が結びつき、複雑なプロセスを経て生成される糖化最終生成物のこと。

 糖化のプロフェッショナル・同志社大学 生命医科学部 糖化ストレス研究センター チェア・プロフェッサー教授の八木雅之先生は、糖化対策には大きく3つの柱があると話します。具体的には、「食後高血糖を抑える」「糖化反応を抑える」「できてしまった糖化最終生成物(AGEs)を分解する」の3つです。

 このうち第1の対策「食後高血糖を抑える」は、前ページで紹介した「野菜や肉などを先に食べる(食べ順を変更)」、「糖質の摂取量を抑える」「低GI食品を取り入れる」といった対策が有効です。

お茶やハーブ、スパイスで「糖化」に歯止めをかける!

 対策2は、余分な糖が体内でたんぱく質と結びついて糖化反応を起こすプロセスをブロックしようというものです。八木さんは、私たちの身近にある食材にこれらの働きがあることが分かってきたと話します。

 八木先生は、「糖化反応の抑制作用(抗糖化作用)は、多くの植物素材で報告されています。しかも、茶、健康茶、ハーブティー、スパイス、各種野菜、ハーブ類、フルーツ、発酵食品など身近な食品にその作用がありますから、普段の食事メニューに取り入れることは難しくありません」と話します。

 具体的に、糖化反応の抑制作用が期待できる主な食材例を以下の図にまとめました。八木先生によると、主に植物に含まれる「ポリフェノール」に糖化抑制効果があるのだと話します。

 この図にあるように糖化を抑制する食材は多岐にわたりますが、八木先生はまず、緑茶、玄米茶、甜茶、ドクダミ茶などの「お茶・健康茶」を上手にとるところから始めるといいとアドバイスします。

 対策3は、“体内にできてしまったAGEs”の分解を促そうというものです。八木さんは、近年の研究から体内で生成されたAGEsを分解する作用を持つ複数の成分が見いだされていると話します。

 「たんぱく質中に生成したAGEsを分解する化学物質としては、PTB(Phenacyl Thiazolium Bromide)が報告されています。この物質と同様の作用は、ヨモギ、レンゲソウ、ザクロ果実、ゆず果皮、ハーブなどでも確認されています。ショウガ科の植物にもこの作用があります」(八木先生)。

 また、八木先生は、「私たちの体には、酸化されたたんぱく質を分解するOPHという酵素(酸化たんぱく質分解酵素)が備わっています。この酵素には『酸化』という名前がついていますが、弱いながらも体内で生成されたAGEsを分解、排出する機能が備わっているのです」と話します。

 「ハーブなどの植物中にOPHの活性を増強させる成分が存在します。例えば、ハイビスカス、フェネル、フェヌグリークなどのハーブにOPH活性の増強作用が確認されています。さらにこれらのハーブはAGEsを分解する作用も兼ね備えています」(八木先生)

毛細血管の老化を抑えるために実践したい食事とは?

 血管の健康というと、動脈などの太い血管に目が行きがちですが、忘れてはならないのが「毛細血管」です。

 毛細血管が減って血流が途絶え、体の各所で機能が損なわれると、糖尿病や認知症などのさまざまな病気を引き起こすことが近年の研究から明らかになってきました。毛細血管が衰え、体中の臓器に栄養や酸素がうまく届かなくなる状態は「ゴースト血管」と呼ばれ、最近はテレビなどでもよく取り上げられています。

 老年医学や抗加齢医学の視点からゴースト血管の影響を研究する、愛媛大学医学部附属病院抗加齢・予防医療センター長の伊賀瀬道也先生は、ゴースト血管は特殊な病気ではなく、誰もが経験する加齢現象の1つで、早ければ40代から始まると話します。60~70代では若い頃に比べて4割もの毛細血管が減ってしまうという驚きの報告もあります。

 では毛細血管の衰えをどう防げばいいのでしょうか。毛細血管の衰えを進める要因に、先ほど触れた「糖化」、そして「酸化」があります。糖化を抑えるには、前ページで紹介したように、糖質の過剰摂取を控え、食べる順番を変えるといった取り組みを実践しましょう。

 酸化を抑えるために、抗酸化作用のある食材を積極的に摂取するのがお勧めです。抗酸化作用が高い食材には、色のついたカラフルな野菜(緑黄色野菜)やポリフェノールを多く含む、コーヒーや緑茶、ワインなどがあります。

毛細血管の「モレ」を減らすスパイスがあった!

 さらに、伊賀瀬先生は、いつもの食事にプラスαで取り入れることのできるスパイスやお茶の中に、血管の内皮細胞にある「タイツー(Tie2)(*1)」受容体を活性化させ、ゴースト血管に効くものがあると話します。

ヒハツ(左)とシナモン(右)の商品例。

 「タイツーを活性化する効果が期待できるのが、ヒハツ、シナモン、ルイボスの3つです。これらはゴースト化した血管を復活させる作用があることが分かり、最近注目されています」(伊賀瀬先生)

 ヒハツという名前になじみの薄い人もいるかもしれませんが、沖縄料理が好きな人ならピンとくるでしょう。ヒバーチ、島コショウ、英語ではロングペッパーと呼ばれる、独特の香りが特徴のスパイスです。

ルイボスティーの商品例。

 ヒハツと同じ効果は、シナモンやルイボスでも得られます。シナモンはお菓子やコーヒーに風味をつけるスパイス、ルイボスはルイボスティーの名で知られる南アフリカ原産のお茶で、いずれもスーパーで手軽に入手できます。

 「効果には個人差がありますが、私が診た患者さんで、ルイボスティーやシナモンの効果が見られた人がいます。その人は、上腕にアザや傷がたくさんあり、皮膚の血流が悪い状態でした。ところが、ルイボスティーやシナモンを取り入れる生活を始めると、約3カ月で傷の治りが早くなり、アザもできにくくなりました。目で見て、明らかに皮膚の状態が改善したのです。毛細血管の血流が増えた効果だと思われます」(伊賀瀬先生)

 ただし、血管に効くからといって、摂取し過ぎには注意しましょう。例えば、シナモンにはクマリンという成分が含まれ、多量に摂取すると肝機能に障害を起こす恐れがあります。何事もやり過ぎは禁物、1日0.6g(小さじ半分程度)までにとどめておきましょう。また、妊娠中の女性はシナモン、ヒハツの摂取を避けるようにしてください。

*1 毛細血管の内皮細胞の間にはわずかな隙間があり、その隙間から血液の成分が適度に漏れることで、周囲の細胞に栄養分や酸素を行き渡らせている。この仕組みを支えるのが内皮細胞が持つ「タイツー(Tie2)」という受容体。

(図版:増田真一)

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