今知りたい! 中性脂肪・コレステロール対策の食事
中性脂肪や悪玉コレステロールを下げるために、食事で控えるべきは何?
日経Gooday編集部
中性脂肪を下げるために「脂っこいものを避ければいい」は誤解
なぜ脂質よりも糖質を減らしたほうがいいのでしょうか。「糖質は小腸で吸収・分解された後、肝臓に運ばれます。そして肝臓では、その糖質からグリセロール(グリセリン)を合成し、血液中の脂肪酸を原料にして、中性脂肪が合成されています。つまり、糖質をとればとるほど、合成される中性脂肪が増えていくのです」(寺本さん)
一方、食事で摂取する脂肪(油)は、「体の中で燃焼し、エネルギーとして使われます。食べた脂肪の多くは燃焼し、一部は速やかに肝臓に運ばれるので、血液に影響を及ぼさないうちに運命を終えていきます」と寺本さんは解説します。
食事からの糖質摂取を控えるといっても、どれぐらい減らせばいいのでしょうか。寺本さんは「むやみに糖質を減らしてはいけません」と注意を促します。
「1日のエネルギーの半分くらいは糖質からとらないと、ほかの栄養とのバランスが悪くなります。糖質が減ったぶん、肉類などの動物性脂肪(飽和脂肪酸)の摂取が多くなると、悪玉のLDLコレステロールを増やすことにつながるからです。また、糖質は体の中でアミノ酸を作るプロセスにも関与しています。アミノ酸の中には生きていくうえで欠かせないものがあり、それが不足すると、うつ傾向になるなどの悪影響が出ることも考えられます」(寺本さん)
寺本さんが勧めるのは、1日の摂取カロリーのうち、50%程度を目標に糖質をとること。一般に、糖質の比率は6割程度なので、それを2割程度、「ちょっと減らす」イメージと考えればいいでしょう。もちろん、いつもごはんを大盛りにしている人のように、もともと糖質をとり過ぎの人は、2割と言わずガッツリ減らしましょう。
スイーツ好きの人も要注意です。体にゆっくり吸収される穀類と異なり、砂糖(ショ糖)は吸収されるスピードが速く、中性脂肪へと合成されるのも速いのが特徴です。ケーキなどの菓子類、ジュースなどのとり過ぎには注意しましょう。
アルコールは中性脂肪の分解を邪魔してしまう!
寺本さんは、中性脂肪が高い人の傾向として、「女性は甘いものの食べ過ぎ、男性はお酒の飲み過ぎの人が多い」と指摘します。
通常、お酒をよく飲む人が気にするのは、γ-GTPなど肝臓の機能を表す数値でしょう。しかし、アルコールには肝臓で中性脂肪が分解されるのを抑え込む働きもあるのです。

寺本さんは、個人差はあるものの、アルコールをやめると、中性脂肪の値は顕著に変わってくると言います。
「中性脂肪が高い患者さんに、『1週間、お酒をまったく飲まないようにしてください』とお願いすることがあります。その後で、今度はいつも通りにお酒を飲んで1週間過ごしてもらいます。その2パターンの血液中の中性脂肪値を比較すると、ものすごく差が出ることがあります」(寺本さん)
一方で、お酒には良い効果もあるといいます。「少量のお酒であれば、善玉のHDLコレステロールを増やす働きもありますから、必ずしも禁酒が必要というわけではありません。しかし、酒量が多くなれば、中性脂肪が高まる問題のほうが大きくなってしまいます」と寺本さん。
つまりは「適量の飲酒」がいいということ。日本動脈硬化学会の「脂質異常症診療ガイド2018年版」では、お酒の摂取の目安として、「アルコール摂取を1日25g以下に抑える」ことを推奨していまず(*1)。アルコール25gとは、ビールなら大瓶1本に相当する量だ。もちろん、お酒に弱い人(顔が赤くなる人)や女性、シニアの人などはより少ない量にするのが望ましいでしょう。
青魚のアブラ、EPA・DHAは積極的にとろう
寺本さんが、中性脂肪を下げるために意識してとってほしいと話すのが「魚」。特に、青魚を積極的に食べるのが良いそうです。
魚に含まれる、EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)などのn-3系多価不飽和脂肪酸(オメガ3)が体にいいことは広く知られている通り。それは中性脂肪に関しても例外ではありません。高中性脂肪血症の治療薬、つまり中性脂肪を下げる薬の中には、EPAを含む薬(EPA製剤)もあります。
「中性脂肪を下げる薬として存在しているように、オメガ3には中性脂肪を下げる効果があります。食事由来のオメガ3の摂取によって大きく下がるとまでは言えませんが、ある程度の効果が期待できます」(寺本さん)
そして、「魚をたくさん食べた人は心筋梗塞の発症率が低いというデータも出ています(下図)。やはり魚が体に良いのは間違いありません。積極的にとるようにしてください」(寺本さん)
