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「どんな現場でも、どうやったら楽しいかを考える」―俳優・石原良純さん

~GoodayTalk&Clinic 石原良純流 多忙な人のためのベストコンディションの作り方【後編】

12月14日に開催されたセミナー「日経GoodayTalk&Clinic」では、東海大学医学部教授の川田浩志さん、日経Goodayの『石原良純の「日々是好転! ときどきカラダ予報」』連載でおなじみ、俳優で気象予報士の石原良純さん、キャスターの榎戸教子さんによる楽しいトークが繰り広げられました。今回の後編では、石原さんの運動のお話、仕事のモチベーションアップの秘訣などに踏み込んで伺っていきます。(12月22日に公開した前編はこちら

12月14日の「日経GoodayTalk&Clinic」は、俳優で気象予報士の石原良純さん、東海大学医学部教授の川田浩志さん、進行役にキャスターの榎戸教子さんが参加して楽しいトークが繰り広げられた。会場となった日経カンファレンスルームは、仕事帰りのビジネスパーソンらで満席に。
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<運動編>「男は30にして走る! 人は体力から衰え始める」

 石原さんは、日頃から駒沢公園をランニングしたり、フルマラソンにも出場する本格派アスリートでもあります。石原さんが運動を続ける理由とは?

榎戸さん 「石原さんはフルマラソンで「サブフォー(フルマラソンを4時間以内で走ること)」を達成されたとのこと、すごいですね!」

石原さん 「まあ、未公認ですけどね……。横浜市が悪いんです!(※コース距離が約186メートル短かったことが判明し、今年の横浜マラソンの記録はすべて未公認となった)」

榎戸さん 「マラソンはずっとやっていらっしゃるんですか?」

石原さん 「はじめてマラソンをしたのは20年前、上岡龍太郎さんに誘われたんです。それからしばらく中断をしていて、東京マラソンが始まってから、再び走り始めました。体力、気力、知力があるとすると、一番最初に衰えるのは体力ではないかと思うんですね。知力は社会に出て働いていれば、ある程度キープすることができるし、気力も仕事で責任ある立場になれば自然と上がっていく。でも、体力は、僕自身30歳を過ぎたころに『あれ?』と思うことが増えたんです。これはなんとかしないと、と思って走り始めた。いわば自分との戦いですね。ちょっとかっこつけて言えば、男は30にして走る、っていうことでしょうか」

「体力、気力、知力があるとすると、一番最初に衰えるのは体力ではないかと思うんです。体力は僕自身、30歳を過ぎたころに『あれ?』と思うことが増えたんです。これはなんとかしないと、と思って走り始めたんです」(石原さん)
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榎戸さん 「なるほど。では、川田先生、医学的にも、人は体力から衰えるのでしょうか」

川田さん 「そうですね。体力が衰えると『もう無理が利かない』と思い込んでしまい、気力も知力も落ちてしまって閉じこもりがちに―。そんな悪循環が起こってしまうのです。反対に、体力を維持できれば『自分はまだやれる』と自信がつき、良い循環が起きるんですね」

 35歳のときよりも今のほうがスピードも速くなったのは「とことん練習したからです」と話す石原さん。

石原さん 「とにかく練習をしてきたけれど、その経験から感じるのは、僕らアマチュアがやるべきなのは練習量を増やすことや体重を落とすことよりも、まずフォームをきちっと整えること。人それぞれ、上り坂は得意だけど下り坂がどうも、とか、得手・不得手があると思うんです。そんなときにも正しいフォームを知ることで故障も防げる、スピードも速くできる。もし伸び悩んでいる人は、思い切ってプロの指導を受けてみるといいですよ」

榎戸さん 「会場の方から、『年齢とともに回復が遅いと感じるが、どうすればいいか』というアドバイスをいただいていますが、先生、いかがですか」

川田さん 「そうですね。体をいっぱい動かしたあとはストレッチ、入浴、マッサージ、睡眠が大事です。睡眠不足のままのスポーツは故障のもとです」

石原さん 「でも、ストレッチ、つまんないんだよねぇ!(会場爆笑) 体を使ったらその分だけストレッチ、とよく言われるけど、1時間走ることはできても1時間ストレッチはできない。でもね、僕、ストレッチをやって背が伸びたんですよ。だからストレッチは絶対やったほうがいいですね(笑)」

 川田さんによると、年齢とともに体はだんだん硬くなり、それが猫背などの見た目の老化にもつながっていくとのこと。若々しい姿勢の維持のためにも、読者のみなさんもストレッチを心掛けましょう。石原さんのように背も伸びるかもしれません。

<メンタル編>「どんな仕事でも、楽しいことを探せば何かあるんです」

 続いて、メンタル面へと話が続きます。

 セミナーの前編で川田さんが力説したとおり、人生を楽しむことは健康に幅広く影響を与えるもの。毎日を「楽しい!」という気分で生きることが大事ですが、はたして会場のみなさんはどうでしょうか。

榎戸さん 「人生を楽しんでいる人は病気になりにくい、というお話がありました。人生を楽しんでいる、という質問への答えがイエスの方、ぜひ手を挙げてください」

 会場では6~7割の人が手を挙げます。

川田さん 「おおー、多いですね!」

榎戸さんが「『人生を楽しんでいる』という質問の答えがイエスの方、ぜひ手を挙げてください」と参加者に呼びかけると、6~7割の人が手を挙げた。
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榎戸さん 「では、逆にノーという人は……」

石原さん 「逆はいいんじゃないですか? そんなつらいことをしてもらわなくても、ねぇ?(会場爆笑)。しかし、やはり前向きな方が多いんですね。こういった場に足を運ぶという、その思いが大切だということなんですね」

BSジャパン「モーニングプラス」のメーンキャスターを務める榎戸教子さんが、石原さんに質問を投げかけていく。
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榎戸さん 「人生を楽しむ。石原さんはその秘訣はどのようなことだと考えていらっしゃいますか?」

石原さん 「楽しむ、というキーワードから思い出すのは、昔刑事ドラマに出ていた頃のことですね。うちの叔父が、西部署とか七曲署とかの課長や係長をやっていた時代です。辛かったですよ、現場。怖い方がいてね、怒鳴られて。撮影現場は怖いものだと思いました。当時は、それぞれのプロが緊張感を持って働いて、それが映像につながったときに輝いていればいいんだと思っていました。でも、ベルリンの壁が1989年に崩壊して、僕も自由に生きよう、と思って刑事を辞めて、叔父のところを出たんですよ」

 「そのときに出演依頼されたのが、ダウンタウンやウッチャンナンチャンがやってた、フジテレビの『夢で逢えたら』という夜の番組です。そこでは打ち合わせで台本を読み、立ち稽古をして、ランスルーといって台本なしで動きます。ところが、いざ本番になると、みんな違うことやるんです。『今までのはなんだったの』っていう話です。セットから落っこちて、スタッフがそれを見てゲラゲラ笑っているんです。『なんだこりゃ』という感じですよ。でもね、こうやって楽しむことを最優先にする現場もあるんだな、物の作り方の新しい感覚なんだなと関心しました」

 今では、俳優、バラエティ、天気予報など、さまざまなジャンルで大活躍中の石原さん。常に心掛けているのが「僕はどうやったら楽しいだろう」と考えることだといいます。

石原さん 「朝早い現場でも寒い現場でも、何か楽しいこと、ここに来た甲斐があったよなぁと思うことを探すと、何か拾えるものがあるんですよ」

川田さん 「なるほど、どんな状況でも、あえて楽しむ。お手本にしたい、ポジティブな選択ですね!」

鈍感力には自信がある。でも、自分のことは自分が見ている

 現場で常に「楽しむ要素」を探すという石原さん。自身のメンタルパワーのもう一つの源は、「鈍感力」だと説明します。

石原さん 「僕はどうやら、人の話を聞いていないんだな(会場爆笑)。いろいろ人から怒られても、まあ、そりゃそうだ、人間だから気にくわないこともある、こうやって悪口も言いたくなるんだろうなぁ、なんて思っているうちに相手の言葉が聞こえなくなるんですね(笑)。あとで冷静に振り返ると『あれは相当怒っていたな』と思うこともありますが……」

榎戸さん 「石原さんはずっとそういう感じだったんですか?」

石原さん 「そうだなぁ、若い頃のあの厳しい現場でも耐えられたのは、鈍感力のおかげかもしれない。でも、人の言葉は聞こえていなくても、誰よりも自分の言葉は聞いているんですよ。自分がしたことは自分が知っている。『天知る地知る俺が知る』っていいますけれど、自分がずるした、サボった、やっちゃいけないことをやった、というのは誰よりも自分が見ているんです。先週も、わかっていたんです。お酒は飲まないほうがいいと思っていたのに、ゆっくりしたほうがいいとわかっているのに、飲んだ結果、急性胃炎になった(笑)。運動もそうで、無理をすると怪我するとわかっている。だから自分の声は聞くようにしたほうがいいです」

ストレス解消のために。1日1回、空を見上げよう!

榎戸さん 「もう一つ。会場から、失敗したとき、落ち込んだときの回復術を教えてください、という質問が来ています」

石原さん 「落ち込むのは当たり前ですよね。何もかもすべてうまくいくわけがない。僕も今日のように表に出る仕事もあれば、原稿書きをすることもあるし、スポーツで汗を流すこともある。こういうふうにチャンネルの数を増やしておくと、気持ちの切り替えがしやすいかもしれないですね」

川田さん 「そうですね。落ち込んだときに反省するとよけい気持ちが暗くなってしまいます。反省は自分が調子に乗っているときにするもの。自分が傷付いているときによけいに自分をいじめることはない。メンタルが回復してから、冷静に考えるといいと思います。落ち込んだときは単純な事務作業などに集中するのもおすすめですよ」

「落ち込んだときに反省するとよけい気持ちが暗くなってしまいます。落ち込んだときは単純な事務作業などに集中するのもおすすめです」(川田さん)
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 忙しいときこそ無理をしないために重要となるのが、「休むポイント」です。お忙しいお二人はどのように考えているのでしょうか。

榎戸さん 「休むポイントを見逃さないようにするには、どうすればいいですか」

石原さん 「多くの人は、アラームが鳴っていることを自覚しているはずです。僕の身の回りでも、血圧の高さを気にしているのに病院に行くのが怖いと放置する人の多くは大病になっています。怖いから行かないという気持ちは誰しも抱くものですが、自分が発しているアラームに気づくこと。無理を重ねて長い休みをとることにならないためにも、休む勇気を持つことも必要です」

川田さん 「僕はエクセルに毎日の体調と気分を5段階評価でつけています。数値が3.5以下になると青字に変えるんです。青字が増えてきたら、今は余計な仕事をやらないほうがいいなとセーブするようにしています」

 最後に石原さんから「一つだけ、みなさんにお伝えしたい」というメッセージが。

石原さん 「現代のように、近距離で情報が常に行き交うような生活は、人間にとってかなりのストレスになっていると思うんです。だから、山に行きたい、海に行きたい、大自然の中でぼーっとしたいと誰しも思うものですが、都会に暮らしているとすぐには行くことができません。でも、海よりも広く山よりも高いのは、空です。どこにいても、100キロ先を見渡すことができるのが空。日本の空は表情豊かで絶品だと思います。1日一度、家の前や会社に入る前など、同じ時間に空を見上げる習慣を作っていただくと、気持ちも晴れるし、天気予報も面白く理解できると思いますよ。ぜひ空を見てください!」

 なんとも、気象予報士らしい見事な締めくくり。心がからっと晴れるようなセミナーに、会場からは大きな拍手が起こりました。

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セミナー参加者から感想を聞かせてもらいました

 30歳を過ぎて体力の衰えを感じ、これまで通りに体が動かない自覚があり、なにかいい情報をもらえたら、と参加しました。なかでも印象的だったのは「楽しいことを探す」という石原さんの言葉。仕事をしていると、楽しいことばかりではなく、つらいことも多い。でも、いかに自分で自分を盛り上げるか、ということを心掛けると仕事への取り組み方が変えられるかも、と思いました。川田先生の「幸せは伝染する」というお話もありましたし、まずは自分が変われば周囲も引っ張られて職場も変えていけるのではと思いました。お二人のような人が組織にいると組織が活気づきそうです。自分がそんな存在になれたらいいなと思いました。(越智和明さん 31歳 IT通信会社勤務)

 石原さんはざっくばらんで明るくて、テレビに出ているときとまったく変わらないですね。石原さんは楽しいので大好きです。私もマラソンをするので、石原さんがご自身の実体験を話していただいたのがとてもためになりました。川田先生のメンタル面のお話や、『人生楽しみ度』が高いと死亡リスクが低くなるという研究報告のお話も、これまでまったく考えたことがなかったので新鮮でした。(坪井 昌恵さん 54歳)

 川田先生の「ポジティブに人生を楽しんでいることが健康につながる」という話がとても面白かったです。自分にも当てはまると思いました。「この調子で行けばいいんだな」と納得しました(笑)。最近、父も運動していなくなっているので、家族にもこの話をぜひ聞かせたいと思います。(A・Sさん 40代女性)

 石原さんはすごくパワフルですね。あのエネルギーと周囲を引き込む話術はぜひとも見習いたいと思いました。川田先生の「ポジティブだと行動範囲が増える」というお話は目からうろこで、心の持ち方が健康にいかにいい影響を与えるかが理解できました。楽しくてあっという間の時間でした。(C・Mさん 40代女性)

(まとめ:柳本操=ライター/撮影:竹井俊晴)

石原良純(いしはら よしずみ)
俳優・気象予報士
石原良純(いしはら よしずみ) 1962年1月15日生まれ。神奈川県逗子市出身。慶応義塾大学経済学部卒。テレビ、舞台、映画など幅広く活躍。趣味はマラソン。自宅から10キロ先の所属事務所まで走って通うことも。
川田浩志さん
東海大学医学部血液腫瘍内科教授
川田浩志さん 東海大学医学部内科系大学院修了後、米国サウスカロライナ州立医科大学ポストドクトラルフェローを経て、現在に至る。内科診療とともに抗加齢医学の普及にも力を入れ、東海大学東京病院抗加齢ドックならびに東海大学ライフケアセンターの立ち上げに参加。現在は海老名メディカルサポートセンターのアンチエイジング ドック顧問も兼任している。自らがアンチエイジング実践派という本領を発揮しての生活指導には定評があり、講演依頼やTV・ラジオ・雑誌などからの取材も多い。日本内科学会認定総合内科専門医・指導医、日本血液学会認定専門医・指導医・評議員、日本抗加齢医学会認定専門医・評議員、日本再生医療学会評議員、米国内科学会・血液学会のインターナショナルメンバー。 受賞歴:東海大学総長賞(松前重義賞学術部門)など。