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Gooday 通信

向井亜紀さん「がんはいつか自分のところにもやって来る。検診で見つかれば、それは大成功」

日経Goodayスペシャルセミナー「がん検診の現在と未来」トークセッションより

 氏家裕子=ライター

「がんになったことで夫と普段はできない話をし、今まで感じられなかったものを経験する機会になった」

向井さん 夫の高田は格闘技をしていて気が強そうに見えるんですけど、本当は気が弱いんですよ。蹴られたりする“面の痛さ”には強いけど、注射などの“点の痛さ”には弱いんだって言っています。私が病気のときには本当に心配してくれて、「病院怖いだろ? どこかに逃げよう」って真顔で言ったりしていましたよ(笑)。

 がんになることで、普段話せない弱い部分を病室の中で2人きりで見せ合えたのは、いい時間でした。父と母とのかかわりもそうです。両親は鹿児島の人間で、それまでは割と強い言葉で親子の会話をしてきたんですけど、がんになったときに初めて、弱い自分を心配して涙を流す母親を見ました。今まで感じられなかったものを感じられる機会になりましたね。

同じがん患者さんとの交流で感じたことはありますか?

向井さん 同じ時期に同じ病気で入院している友だちがどれだけ頑張っているかを見てきました。子宮頸がんっていうのは比較的若い年代の女性に多く、マザーキラーって言われるがんなんです。がんの治療で免疫の状態が不安定な患者さんのところには、子どもはお見舞いに来られないんですね。なので彼女は、子どもに会えた時にはこうしたい。入学式の時にはママをやりたいなど、こうなりたいという未来をイメージしながら体調を引っ張り上げていました

 そうして頑張っている女性をたくさん見てきたので、私も、胸の中のスクリーンに未来のイメージを映さないとやっていけないと思うようになりました。病気はしんどいけれど、病気になったことで心が広がって勉強になった部分はあります。

ご家族に変化はありましたか?

向井さん 高田もすごく強くなったんですよ。内視鏡検査を、気の弱い男3人で一緒に受ける、ということを年間行事の1つにするようになりました。検査の前には夜、電話で「下剤飲み始めた?」とか話して(笑)。検査をしてなんでもなかったら、みんなでおうどんを30回噛んで食べて帰ってきます。

1人ではなかなか検診に行けない人が、同じ気持ちの人と集まってイベント化するというのはいいアイデアですね。さて、まだまだお話を続けたいところですが、時間も迫っていますので、森山先生、向井さんから明日からできることを一言ずついただけますか。

森山先生 検診を受けてください。余裕があれば精度の高い検診を受けてください。これに尽きると思います。

向井さん 後悔をしないような選択をしてください。やってしまったことに対して「若気の至りだった」という甘酸っぱい後悔とは違って、検診をしなかったというのは、苦い後悔だと聞いたことがあります。人間はいつか必ず死にますし、ほとんどの人ががんになります。10分でも1時間先の未来でもいいからイメージしながら、自分らしい時間をどう過ごせるかを考えてほしいです。

(写真:海老名 進)

向井 亜紀さん
タレント
向井 亜紀さん 埼玉県出身。1964年11月3日、耳鼻科の医師の父と高校の化学教師の母のもとに生まれる。日本女子大学在学中にラジオ番組のDJとしてデビュー。以後、テレビ・ラジオで人気を集める。94年、格闘家の高田延彦氏と結婚。2000年、妊娠するも子宮頸がんに罹患していることが分かり、子宮全摘出。03年、米国での代理出産により、双子の男子を授かる。現在は、毎週土曜日の朝、旅の情報番組『朝だ!生です 旅サラダ』(朝日放送)の司会を務めるほか、講演活動、エッセー執筆など多方面で活躍中。さらに、夫・高田延彦氏主催の高田道場が開催する子供向け体育教室『ダイヤモンド・キッズ・カレッジ』に参加。MCとして全国の子ども達に身体を動かす楽しさを伝えている。
森山 紀之さん
医師、医療法人社団ミッドタウンクリニック理事 兼 医療法人社団進興会理事長
森山 紀之さん 1947年和歌山県生まれ。千葉大学医学部卒業後、76年に国立がん研究センター放射線診断部に入局。04年同センターがん予防・検診研究センター長、13年医療法人社団ミッドタウンクリニック常務理事。2016年4月より現職。ヘリカルスキャンX線CT装置の開発に携わり、早期がんの発見に貢献。05年に高松宮妃癌研究基金学術賞、07年に朝日がん大賞を受賞。主な著書に『がんはどこまで治せるのか』(徳間書店)。

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