中村格子さん「若々しさの源は骨と筋肉、いい姿勢」
「老け見えの原因は抗重力筋の衰え」 Gooday流ビューティフルエイジング・セミナーより【前編】
日経Gooday編集部
外見だけではなく、加齢による「体の中」の変化に目を向けて
中村先生の話は、年齢とともに起こる女性特有の変化について踏み込んでいきます。その象徴の一つが、ホルモンバランスの変化による加齢現象。「エストロゲン(女性ホルモン)」「テストステロン(男性ホルモン)」「副腎皮質ホルモン」「成長ホルモン」という、体を健全に保つ生理活性物質の分泌が加齢とともに減少してくると、心機能の低下をはじめとして、体脂肪や骨量の変化、さらには皮膚の乾燥といった老化現象が現れることが知られています。私たちはついつい「外見の変化」ばかりに気をとられてしまいがちですが、実は先に挙げた変化が「体の中」でも一斉に進んでいるのです。
「予備能力」「ホルモン」「皮膚」など、加齢現象はさまざまなサインからでも自覚できますが、中村先生が特に強調していたのが、「骨の代謝と筋肉の量」という新しい視点です。言い換えれば、「骨の代謝と筋肉の量」をいつまでも保ち続けることが、今回のセミナーのテーマになっている「ビューティフルエイジング」の第一条件とまで言い切ります。
骨は全身の「健康指標」、骨粗しょう症の本当の怖さ
「まずは骨の話からはじめましょう。みなさん、骨粗しょう症をご存じですか。私には関係ない、年をとってからの話でしょ、転ばないように気をつければいいんでしょ、などと思っていませんか?」(中村先生)
中村先生が会場に向けてこう問いかけると、ハッとした表情を浮かべた人が多数。
骨粗しょう症は国内でおよそ1300万人が罹患(りかん)していると推定され、うち75歳以上の女性が50%を占めるとされています。近年の研究では、心血管疾患、糖尿病などの全身の病気と関連が深いことが明らかになっています。骨がスカスカになって骨折しやすくなるという認識だけでは甘い、と中村先生は続けます。
「骨粗しょう症の生存率は8年後でざっと50%。つまり、8年で半分の方が亡くなる予後の悪さに、多くの人は気づいていません。骨は常に“造骨”“破骨”というターンオーバーを繰り返しています。その骨の代謝が正常に行われるかどうかは、身体活動をはじめとして、カルシウムやビタミンDといった栄養素の摂取量、エストロゲンや甲状腺ホルモンなどのホルモンの分泌量、さらに体の中にある炎症物質の有無といったさまざまな要素が関連しています。骨はある意味、臓器なのです。この代謝を促す1つが運動。運動によって女性ホルモンのエストロゲンの分泌が上がり、それが骨を強くすることにつながるのです」(中村先生)
骨は単なる「骨格」ではなく、体の生理機能とも深くかかわっている。だからこそ、日頃から体のケアを積極的に行う。それが自分の骨を衰えさせないことにもつながるとの話に、参加者たちも深く頷いていました。
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- 抗重力筋の衰えとともに「老け見え」が進行