早期検診でがんや糖尿病、認知症に先制パンチを!
「生活習慣から健康寿命を科学する」と題して京都で講演会
竹林篤実=ライター
注意したい「隠れ糖尿病」
「糖尿病が疑われる人は、厚生労働省の調査によれば、年々増え続けています。ところが糖尿病と診断されて、治療している人は65%にとどまります。糖尿病になると、平均寿命が男性で10歳、女性なら13歳も縮まるにもかかわらずです」と、またもショッキングなデータを福島さんが突き付けた。
糖尿病が、それほど深刻に受け止められないのは、病状が急変しないから。けれども、糖尿病はさまざまな合併症を引き起こし、確実に寿命を縮める恐ろしい病気。例えば網膜症で失明したり、末梢神経障害から足壊疽に至って足の切断をやむなくされたり、脳卒中や心筋梗塞なども引き起こす。
そもそも糖尿病とは、血液中のブドウ糖濃度が適正な範囲を超えて上昇している状態のこと。その原因は、血液中の不要なブドウ糖を筋肉や肝臓などへ取り込む働きをするホルモン「インスリン」の作用が不十分になるため。日本人の場合は、欧米人に比べるとインスリンの分泌が生まれつき少ないために、糖尿病になるケースが多数を占めているというのだ。
糖尿病の診断は、血液検査で行う。通常は朝食前の、血糖値が一番低くなる早朝空腹時血糖値を測定する。ただし、この検査だけでは、隠れ糖尿病を見落とすリスクがある。早朝の空腹時には血糖値が低いけれども、インスリンの分泌が悪いため食後に血糖値の上がる人がいるのだとか。
「ぜひ食後血糖値の検査も行ってください。この食後血糖値の高い、いわば『隠れ糖尿病』の人が、意外に多いので注意が必要です」(福島さん)
昔の日本食に戻れば予防できる
日本では戦後、糖尿病になる人が増えた。その理由は、食生活が大きく変化したからだ。日本人は農耕民族であり、タンパク源としては豆や魚をとっていた。これならインスリンの分泌量が少なくても、血糖値はそれほど上がらない。
ところが、食生活の欧米化に伴って、動物性の脂肪をたくさん取るようになった。欧米人は日本人と比べてインスリン分泌量が多いため、動物性の脂肪を大量に食べても病気になるリスクは、それほど高まらないという。けれども、本来インスリン分泌量の少ない日本人が、食生活だけ欧米化したために糖尿病が増えたとのこと。
「日本人に適した糖尿病の予防策は、実はとても簡単で、昔の日本食に戻ればよいのです。例えば、夏ならそうめんや鱧の湯引き、鮎の塩焼きなどを食べていれば十分に美味しいし、糖尿病になるおそれはぐっと低くなります」(福島さん)
グリセミック・インデックス(GI)と呼ばれる、食品ごとの食後血糖値の上昇度を示す指標がある。食品にはGIの高いものと低いものがあり、糖尿病を防ぐには低いものを食べればよいと福島さんはアドバイスする。
例えば、白米は高GIだけれど、玄米は白米より低い。白米同様に高GIの食品としては、うどん、食パンがある。これに対して、「同じパンでも全粒粉を使えばGIが低くなります」(福島さん)。そのほか、高GIなのがじゃがいもや、とうもろこしだ。
「サラダは体にいいからとポテトサラダを好む人は要注意です。高GIのじゃがいもをすりつぶして、動物性脂肪の高いマヨネーズがたっぷりかかっていますから。同じじゃがいもを使うにしても、すりつぶすのではなく、角切りにしましょう。マッシュポテトのGI値が91なのに対して、角切りのじゃがいもは58まで下がります。ポタージュスープもとうもろこしではなく、グリーンピースにすればGI値を3分の1ぐらいに抑えられます」(福島さん)という。
食事のときに、野菜を先に食べることも効果的。先にお腹の中に入れた野菜が、白米などの炭水化物の吸収を遅くしてくれる。
「糖尿病に関しては、まず先制医療を行って発症しないことが大切です。仮に病気になった場合は、栄養療法、運動療法、薬物療法の3つをうまく使いわけること。血糖を自分でコントロールする意識を持ちましょう。自分が日々、どれぐらいのエネルギーを消費しているのか、それに見合うエネルギー補給には、どんな食事が良いのかを計算することです。悲観することなく食事を楽しみながら、血糖値をコントロールするよう心がけてください」と、福島さんは参加者にアドバイスしてくれた。
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