症状が出てからでは遅い!「いきなり透析」を防ぐために健診で必ずチェックすべき2つのこと
静かに進行する慢性腎臓病はこんなに怖い
日経Gooday編集部
「尿たんぱく」と「クレアチニン」は必ずチェック!

こうした「いきなり透析」を防ぐために、普段の健診で気を付けておくべきことはどんなことでしょうか。
「健康診断で腎臓の状態を知るために重要な指標は、尿たんぱくと血清クレアチニンの2つです」と木村さん。
慢性腎臓病ではおおざっぱに言って2つのことが起こっています。それは、「腎臓の傷害(血液のフィルターの役割を果たす糸球体が傷ついている)」と「働きの低下(糸球体のろ過量が低下している)」です。
このうち、糸球体が傷ついているかどうかが分かるのが、尿検査の「尿たんぱく」の項目。これが陽性(+)になるということは、糸球体が傷ついた結果、尿の中に本来漏れ出してはいけないたんぱくが漏れ出していることを意味します。
尿たんぱくは陽性の度合いが大きいほど、腎臓の傷害の程度が大きいことが疑われ、その後の17 年間に透析導入となる割合は、(3+)以上の人で16%、(2+)の人で約7%という報告もあります(*1)。それと同時に、心筋梗塞や脳卒中を発症するリスクも高まります。尿たんぱく陽性の状態が3カ月間続けば、慢性腎臓病と診断されます。
一方、腎臓の働きの低下は、血液検査の血清クレアチニンの値が上昇することで分かります。
「クレアチニンは、筋肉でつくられる体内老廃物の1つです。腎臓でのろ過量が低下すると、血液中のクレアチニン濃度が上がってきます」(木村さん)
慢性腎臓病の診断では、この血清クレアチニンの値を特定の計算式に当てはめ、「推算糸球体ろ過量(eGFR)」という値を求めます。腎機能が正常の場合、eGFRは100(mL/分/1.73m2)になります。eGFRが60(mL/分/1.73m2)未満の場合、腎機能が正常の60%未満に落ちていることを意味します。その状態が3カ月以上続けば、やはり慢性腎臓病と診断されます。
日本腎臓学会のホームページなどでは、血清クレアチニン値と年齢、性別を入力すればeGFRを自動的に算出できる機能があるので、クレアチニンの値が分かったら、自分のeGFRを求めてみましょう。もし60を切っていたら、それは危険信号です。
⇒健診の項目で分かる腎機能の低下について、さらに詳しく解説した記事はこちらです。
◆「尿たんぱく」と「クレアチニン」は必ずチェック!
腎機能の検査値を理解して、「いきなり透析」を回避しよう
慢性腎臓病が進み、深刻な事態に陥る前に、自分の努力で腎臓の状態を改善することはできるのでしょうか。
「まずは慢性腎臓病の背景をよく見極める必要があります。生活習慣病が原因となっているものは、それらをしっかり治せば悪化が抑えられる、あるいは良くなる可能性もあります。一度傷ついた糸球体を治すことは難しいのですが、そこから漏れ出すたんぱくの量は減らすことはできます」と木村さん。
⇒具体的な「腎臓ケア」の方法は、以下の記事で解説しています。
◆残された腎機能を“長持ちさせる”ことはできる
いかがでしたか。長寿の時代になったからこそ、腎臓に負担をかけすぎない生活を心がけ、寿命をまっとうするまで“元気に長持ちさせる”努力がますます必要になってきています。まずは健診の項目をチェックして、あなたの腎臓が危険信号を出していないか、確認してみましょう。