「地域包括ケアシステム」をご存知ですか?
団塊の世代が75歳以上となる2025年へ向けての対応策
今、医療・介護の現場では、「地域包括ケアシステム」が大きなキーワードとなっています。皆さん、「地域包括ケアシステム」ってご存知でしょうか? 「耳にしたことはあるけれど…」といった方が、大半なのではないかと思います。
迫りく来る多死時代
「地域包括ケアシステム」とは、簡単に言えば、「介護が必要な高齢者が、住み慣れた家や地域で最期を迎えられるようにする仕組み」です。

2025年には団塊の世代が75歳以上となり、全人口の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上の超高齢化社会が到来すると推測されています。当然、死亡者数も増え、いわゆる「多死時代」を迎えます。
一方で、財源的な理由もあり、医療機関のベッド数は簡単には増やせません。長期間入院する高齢者が増えれば、必要な治療を受けられない人が出てくる恐れがあるため、住み慣れた家や地域で最期を迎えられるようにする「地域包括ケアシステム」の考え方が生まれたのです。
主役は病院ではなく「住宅」
このシステムの大きな特徴は、病院は主役ではなく、必要時のサポート役に回るということです。まず重要なのは、介護や生活支援などを受けながら、住み続けられる「住宅」の確保。次いで、住宅での高齢者の生活を支える在宅医療・介護などの整備です。そして、「住宅」には、有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅などの集住系住宅が含まれます。
現在、各自治体で、その地域に合った「地域包括ケアシステム」構築への取り組みが進められています。ただ、課題も多く抱えています。「住宅」や、在宅医療・介護の担い手の不足、医療と介護のコミュニケーションの悪さ…。
病院から退院となっても療養生活が送れる「住宅」が見つからなかったり、また、「住宅」での生活を支えるサービスが不十分であったりして、住み慣れた家や地域で最期を迎えられるようにするという環境を整備できていない例もまだ多数あります。社会問題化している「介護退職」の背景には、こういった事情もあるのです。
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- 都市圏では今後10年で高齢者が倍増する