奇跡の60歳・南雲流「いい油の使い方」
飽和と不飽和は石と砂、油を使い分けるカギは料理の温度
南雲吉則=ナグモクリニック院長・乳腺専門医
ナグモクリニック院長で乳腺専門医の南雲吉則は1955年生まれ。60歳とは思えない若々しさで知られる南雲さんが指南する「いい油の選び方」とは何か。エゴマオイルを使って南雲さんが実践しているシンプルな健康法とは。日経Goodayセンター長の藤井省吾がインタビューした。
「油の原料」の環境が温暖か寒冷かで考える
とてもシンプルでわかりやすい、いい油の選び方を提案されていますね。
南雲 油に関しては、今、情報が大混乱していますね。ココナツオイル、アマニ油、コメ油、何がいいのかわからなくて何種類も買い込んじゃった、みたいな人がたくさんいます。そもそも油には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があり、不飽和脂肪酸はオメガ3、オメガ6、オメガ9に分かれ…そう言われた段階でめげませんか(笑)。
僕はもっとわかりやすくコンパクトにしないと納得できない。そこでこんなふうにとらえてみたんです。飽和と不飽和は、石と砂に例えるとわかりやすい。成分は共通していても、結合が石のようにしっかりしているものを化学では飽和といい、砂のようにゆるく結合しているものを不飽和という。不飽和には酸素が入りこんで酸化されやすく、飽和は酸化されにくいという特徴があります。
熱帯地方のココナツオイルや恒温動物のように、温かい環境下に存在するものは体内で液状を保つことができる。また、紫外線にもさらされるので、酸化しにくい飽和脂肪酸を持っていたほうが有利なのです。
一方、寒い地方の植物油や変温動物の魚は、飽和脂肪酸だと血管内で固まって死んでしまう。だから固まりにくい不飽和脂肪酸を持っています。地中海地方など温暖な環境のオリーブオイルは飽和脂肪酸に近いオメガ9、温帯地方のコーンや大豆はオメガ6、寒い環境で育つクルミやヒマラヤ原産のエゴマ、そして魚の油は最も固まりにくいオメガ3。
こう考えると、いい油の使い方はシンプルです。油の原料がもともと温かい環境下にあったバターやラード、牛脂、ココナツオイルなどの飽和脂肪酸は、加熱する料理に使う。冷たい料理には、寒い環境下にあったエゴマオイル。これで決まりです!
なかでも現代生活の中で、積極的に体に補うべき油はオメガ3ということですね?
南雲 自然界においては必ず拮抗する作用のものが存在し、動物はそれらをバランスよく体に取り込んで利用します。
原始時代、人間は毎日のように寄生虫や病原菌にさらされ、怪我も多かったから、体内に入り込んだ異物と戦うための炎症作用や血を固める作用があるオメガ6が必要だった。
しかしオメガ6ばかりだと、血管で炎症が起きたり免疫が過剰反応したりしてアレルギーを引き起こす。だからこそオメガ6の摂取過剰である現代人は、抗炎症作用があり血液をさらさらにするオメガ3をとるべきなのです。