ワクチンって効くの? インフルエンザの素朴な疑問6問6答
今シーズンのインフルエンザの傾向から、かかった時の対策まで
武田京子=医療ライター
「A香港型ワクチンの効果は、健康な成人の場合30%程度。65歳以上の高齢者では20%と考えられています。一方で、H1N1型とB型に対するワクチンの効果は50~60%とみられるので、4種混合ワクチン全体としての効果はおおよそ50%程度ということになります(*1)」と菅谷先生。
なぜ、A香港型はワクチンの効きが悪いのか。それは、「ワクチンは鶏卵から作りますが、卵の中で香港型はなかなか増殖せず、ウイルスは変異を起こしてしまいます。つまり、実際に流行すると予測したA香港型ウイルスと異なった性質を持ったウイルスでワクチンを製造することになるのです。それでマッチした抗体を体の中で作れないために効きが悪くなるのです」(菅谷先生)
しかし、それでもワクチンを接種する意味は大きいという。「確かにA香港型に対する効果は低いのですが、小児では十分に有効です。慶應義塾大学医学部小児科研究グループが行った調査で(延べ約8500人の小児を対象)、ワクチンを接種した小児のA型ウイルスによる入院は、接種しない人に比べて50~70%減ることがわかっています(*2)。さらに、今シーズンもA香港型流行が収まった後に2月ごろからB型が増える可能性がありますが、ワクチンを接種していればB型に対する発病防止効果は30~50%あります(*3)」(菅谷先生)
*2 N Sugaya, et.al. Trivalent inactivated influenza vaccine effective against influenza A(H3N2) variant viruses in children during the 2014/15 season, Japan. Eurosurveillance 2016 Oct:21(42)2-14.
*3 成人では50~60%で、これは*1と同じ。日本の小児は30%前後で、これはMasayoshi Shinjoh, et.al. Effectiveness of Trivalent Inactivated Influenza Vaccine in Children Estimated by a Test-Negative Case-Control Design Study Based on Influenza Rapid Diagnostic Test Results. PLOS ONE 2015より
Q3. インフルエンザかな
と思ったらどうしたらいいの?
「インフルエンザに感染した場合、約1~2日の潜伏期間があります。インフルエンザになると、高熱が出て、倦怠(けんたい)感、関節痛、筋肉痛、頭痛などが現れます。このような全身の症状が最初に強く出ることが特徴です。その後に咳(せき)や鼻水といった呼吸器の症状が強まります」(菅谷先生)
ただし、インフルエンザの症状の特徴である高熱が目立たず、微熱だったりすることもあるそうなので注意が必要だ。
「インフルエンザに感染した際、最も重要なのが、できるだけ早く治療することです。2009年に新型インフルエンザH1N1型が流行した際、数万人の入院患者のデータを分析したところ、自覚症状が出てから48時間以内に、タミフルなどのノイラミニダーゼ阻害薬治療を受けた患者では無治療の患者に比べて、死亡のリスクが65%少なかったことが報告されています(*4)。特に妊婦の場合、48時間以内の治療で死亡リスクが8割以上低下したという報告もあります。よくいわれている抗インフルエンザ薬(タミフル等)を飲んでも1日罹病(りびょう)期間が短くなるだけというのは間違いで、抗インフルエンザ薬には重症化や死亡を防止する効果が明らかにあるのです」と菅谷先生は言う。
熱が出た、体がだるいといった症状が出たら、速やかに医療機関を受診することが肝要だ。
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