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週1回飲むだけでOK! 糖尿病の新薬に高まる期待

低血糖の心配なく、合併症の発症を予防

 伊藤左知子=ライター

製薬会社のMSDは、1回の服用で1週間作用する2型糖尿病の治療薬「マリゼブ」を2015年11月に発売した。これは、低血糖になりにくいメリットがある「DPP-4阻害薬」に分類される薬品で、週1回投与のDPP-4阻害薬は日本で2剤目。従来のDPP-4阻害薬は少なくとも1日1回の服用が必要だったが、新薬は1週間に1回で済むようになった。患者の服薬負担が軽減されるため、2型糖尿病の治療継続者が増えると期待されている。同社が開催したセミナーを基に、糖尿病治療の現状と新しいDPP-4阻害薬の意義についてまとめた。

糖尿病患者の35%は治療を受けていない!

糖尿病が強く疑われる人の治療状況
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出典:平成24年国民健康・栄養調査

 中高年の太った人に多く、糖尿病の9割以上を占める2型糖尿病で怖いのは合併症である。厚生労働省の2007年の調査では、医師から糖尿病と診断されたことがある人のうち、合併症として網膜症や腎症、神経障害がある人はいずれも10%以上で、足に壊疽(組織が腐ること)がある人は0.7%いることが分かっている。また、糖尿病が疑われる人のうち、現在治療を受けている人の割合は65%で年々増加しているものの、いまだに35%の人は治療を受けたことがないか、治療を継続できていないというのが現状である。

 「これらの合併症は、糖尿病の治療を早期に開始して、血糖値を適正にコントロールすることで、防ぐことができます。一方、高血糖のまま治療せずに10年間放置してしまうと、高い確率で合併症を発症します」と今回のセミナーで奈良県立医科大学糖尿病学講座教授の石井均さんは話した。

DPP-4阻害薬の服用間隔が週1回に

 2型糖尿病の治療は基本的に食事療法、運動療法、薬物療法からなり、食事療法と運動療法で血糖値が改善されない場合は、薬物療法が追加される。その薬物治療は、大きく分けて「インスリン療法」と「経口血糖降下薬」がある。

 このうちインスリン療法は、患者が自分でインスリン注射を行い、足りないインスリンを補う治療法である。インスリンが絶対的に不足する1型糖尿病や、厳格な血糖管理が必要な妊娠糖尿病、他の治療で血糖コントロールが不十分な2型糖尿病の患者を対象に行う。

 一方、経口血糖降下薬は主に、「インスリン抵抗性改善系」「インスリン分泌促進系」「糖吸収・排泄調節系」の3タイプに分かれる。冒頭で紹介したDPP-4阻害薬はインスリン分泌促進系の薬で、インスリンの分泌が低下したときに使われる。その主流はSU薬(スルホニル尿素薬)だったが、2009年からDPP-4阻害薬という新しい薬が登場して、現在、この2種類が多く使われている。

 DPP-4阻害薬が登場するまでのインスリン分泌促進系の主流だったSU薬は、膵臓の細胞(膵β細胞)に直接働きかけてインスリンの分泌を促すもの。体内に糖があってもなくてもインスリンの分泌を促し続けるため、例えば激しい運動をした後などに低血糖になる欠点があった。一方でDPP-4阻害薬は、糖の刺激を受けてインスリンの分泌を促す「GLP-1」というホルモンの働きを邪魔するDPP-4という物質を阻害することで、GLP-1の働きを促す。このため、DPP-4阻害薬を単剤投与すれば低血糖になりにくいという利点がある。

 DPP-4阻害薬のメリットについて石井教授は、「DPP-4阻害薬はSU薬が効かなくなった場合にも効果があります。また、単独投与では低血糖がほとんどないことに加え、体重も増加しません」と話した。ただし、併用薬がある場合は、飲むタイミングを間違えると低血糖になる恐れがあるので、注意が必要だ。

 さらに、これまでのDPP-4阻害薬(8種類程度)は主に1日1回の投与が必要だったが、今回は1週間に1回投与すればよい新薬が日本で発売された。石井教授は、「服用が1週間1回に減ることで、患者さんの生活の質は大きく改善されると思います」と言う。

服用回数が減ることで生活の質が向上

 糖尿病の患者は、降圧剤など数種類の薬を服用していることも多い。「週1回服用のDPP-4阻害薬の登場によって、毎日飲む薬が1剤減るだけと思うかもしれないが、慢性疾患の患者は薬が一つ減ることで気持ちの負担が軽くなり、生活の質が向上する場合が多い」(石井教授)。実際に、2型糖尿病患者がどの経口血糖降下薬を選ぶかを調べた調査では、67%の患者が週1回投与の薬を選ぶ結果となったという。

 糖尿病治療は、再生医療の発展により、膵島(すいとう)移植などによってインスリンを分泌できる体への完治を目指す新しい治療法の開発が進められている。しかし、それが実際の治療として普及するのは10年以上も先の話とされる。それまで、2型糖尿病の患者は、血糖コントロールをして合併症の発症を予防するとともに、生活の質を改善させる治療を行っていく必要がある。こうした意味からも、週1回の服用で済むDPP-4阻害薬の役割は大きいと期待できる。