週1回飲むだけでOK! 糖尿病の新薬に高まる期待
低血糖の心配なく、合併症の発症を予防
伊藤左知子=ライター
DPP-4阻害薬が登場するまでのインスリン分泌促進系の主流だったSU薬は、膵臓の細胞(膵β細胞)に直接働きかけてインスリンの分泌を促すもの。体内に糖があってもなくてもインスリンの分泌を促し続けるため、例えば激しい運動をした後などに低血糖になる欠点があった。一方でDPP-4阻害薬は、糖の刺激を受けてインスリンの分泌を促す「GLP-1」というホルモンの働きを邪魔するDPP-4という物質を阻害することで、GLP-1の働きを促す。このため、DPP-4阻害薬を単剤投与すれば低血糖になりにくいという利点がある。
DPP-4阻害薬のメリットについて石井教授は、「DPP-4阻害薬はSU薬が効かなくなった場合にも効果があります。また、単独投与では低血糖がほとんどないことに加え、体重も増加しません」と話した。ただし、併用薬がある場合は、飲むタイミングを間違えると低血糖になる恐れがあるので、注意が必要だ。
さらに、これまでのDPP-4阻害薬(8種類程度)は主に1日1回の投与が必要だったが、今回は1週間に1回投与すればよい新薬が日本で発売された。石井教授は、「服用が1週間1回に減ることで、患者さんの生活の質は大きく改善されると思います」と言う。
服用回数が減ることで生活の質が向上
糖尿病の患者は、降圧剤など数種類の薬を服用していることも多い。「週1回服用のDPP-4阻害薬の登場によって、毎日飲む薬が1剤減るだけと思うかもしれないが、慢性疾患の患者は薬が一つ減ることで気持ちの負担が軽くなり、生活の質が向上する場合が多い」(石井教授)。実際に、2型糖尿病患者がどの経口血糖降下薬を選ぶかを調べた調査では、67%の患者が週1回投与の薬を選ぶ結果となったという。
糖尿病治療は、再生医療の発展により、膵島(すいとう)移植などによってインスリンを分泌できる体への完治を目指す新しい治療法の開発が進められている。しかし、それが実際の治療として普及するのは10年以上も先の話とされる。それまで、2型糖尿病の患者は、血糖コントロールをして合併症の発症を予防するとともに、生活の質を改善させる治療を行っていく必要がある。こうした意味からも、週1回の服用で済むDPP-4阻害薬の役割は大きいと期待できる。