コロナ患者、なぜ減らないのか 受診すべき症状とは?
増谷彩=ライター
ソーシャルディスタンス(社会的距離)に手指消毒・手洗い、マスク着用――。こうした感染予防策を行っていても、新型コロナウイルス感染症はなかなか減らないのはなぜなのか。例年であれば多くの人が移動し交流が増える年末年始が近づく中、新型コロナウイルス感染症の患者数と重症者数は減る兆しが見えない。患者の治療に当たっている国立国際医療研究センター国際感染症センターの忽那賢志医長に話を聞いた。

「密集・密接・密閉」だと感染が広がりやすい
新型コロナウイルス感染症と同じく飛沫感染するインフルエンザですが、今シーズンは例年に比べ大幅に少ない状況が続いています。インフルエンザがこれだけ抑えられているのに、新型コロナウイルス感染症の感染が抑えきれていないのは、それだけ感染力が強いということでしょうか。

そうですね、感染力が強いというより、新型コロナウイルス感染症は「特徴的な環境」で感染が広がりやすいということだと思います。特徴的な環境とは、3密(密集、密接、密閉)のことです。実際、感染の9割超が屋内で発生していたという論文があります(*1)。
また、感染しても無症状の人が一定の割合でいるのも感染が広がりやすい理由の一つでしょう。そうした人の割合はまだはっきり分かっていませんが、これまでの報告ではおよそ3~8割の人が感染しても無症状であったといわれています。クルーズ船ダイヤモンド・プリンセスでPCR検査陽性だった人のうち、6割弱は無症状でした。
なお、新型コロナウイルス感染症に感染してから、何らかの症状を発症するまでの潜伏期間は1~14日と幅がありますが、多くの人がおよそ4~5日で発症します。感染した人が、他人に感染させる期間は発症の3日前から発症後5~10日まであり得るとされています。
インフルエンザやかぜと症状で区別するのは難しい
どのような症状が出たら、新型コロナウイルス感染症を疑うべきでしょうか。インフルエンザやかぜと症状で区別できますか。
新型コロナウイルス感染症の典型的な症状は、発熱、咳(せき)、だるさ、食欲低下、息切れ、痰(たん)、筋肉痛、嗅覚・味覚障害などといわれています。まれですが、目の充血、嘔吐(おうと)、血痰(けったん)が起きたり、血液が固まりやすくなったりすることが分かっています。
かぜやインフルエンザの症状も、新型コロナウイルス感染症に似ています。かぜはゆっくりと発症し、微熱、鼻水、のどの痛み、咳などが数日続きます。それに対し、インフルエンザは比較的急に発症し、高熱と咳、のどの痛み、鼻水、頭痛、関節痛などが3~5日続きます。かぜに比べると高熱が出やすく、頭痛や全身の関節痛・筋肉痛を伴うことがあります。
このうち、息切れや嗅覚・味覚障害はかぜやインフルエンザではなかなか起こらない症状ですので、新型コロナウイルス感染症を疑うきっかけになります。しかし、新型コロナウイルス感染症の症状はかぜやインフルエンザの症状とよく似ているので、ご自身で判断するのは非常に難しいと思います。私も区別が付かないことがあるくらいです。ですから、症状だけで「これはかぜだから受診しなくても大丈夫だな」などと判断しない方がいいでしょう。
- 次ページ
- 忘年会・新年会、帰省はオンラインで
