粘膜免疫を高めるには? 加齢は免疫低下のリスク。喉の潤いを保ちウイルス侵入を防ぐ
西沢 私たちには実によくできた免疫システムが備わっています。しかし、免疫機能が低下してしまう場合もあります。特に注意したいのはどんな人でしょうか。
野阪 糖尿病や免疫疾患などの基礎疾患がある人、また、肥満のある人は免疫機能が低下しやすいことがわかっています。また、健康な人でも加齢とともにどうしても粘膜免疫、そしてウイルスが侵入後に体内で戦う全身免疫も、ともに低下してきます。
西沢 甲田所長は、粘膜免疫の指標として唾液中のIgAの変化を見ておられますね。
甲田 多くの文献で、唾液中で粘膜免疫の立役者であるIgA量が低下する主要な要因が3つあることが報告されています。
1つめは、野阪先生が触れられた、加齢。高齢になるとともに唾液中のIgAの分泌が低下します。2つめは、慢性的ストレス。そして3つめが激しい運動です。
また、唾液のIgA量には、IgAがどのくらいの割合で含まれるかという濃度とともに、唾液の分泌量そのものも関わることがわかってきました。研究現場で唾液を取る場合に、健康な若い方であってもわずかしか唾液が出ないことがあり、IgA量も測定できないほど少ない方も少なからずいる事を確認しています。粘膜免疫低下の一つのサインとして、安静時に唾液がたっぷり出ているかどうかも確認してみてください。
野阪 唾液は重要なポイントですね。唾液にはIgAだけでなく抗菌作用のあるディフェンシンという物質も含まれます。私たちは緊張すると口がカラカラになりますし、冬はエアコン環境や、飛行機内なども極端に乾燥しますから、口の中を湿潤状態に保つことが重要です。マスクを着用し、粘膜をウエットな状態にしておくと、粘膜にある線毛など、ウイルスの侵入を除去する組織がしっかり働いてくれるので、感染防御にも役立ちます。
甲田 体に備わる粘膜免疫、そして全身免疫がしっかり働く状態に体を整えるために、栄養バランスもぜひ意識してください。免疫機能維持に役立つビタミンD、ビタミンCやビタミンB1といった栄養素も重要です。たんぱく質不足は感染症の発生に関連するとされていますが、私たちの研究では、たんぱく質とともに先述したB240乳酸菌を摂取すると、体内でIgAが多く産生されることを確認しました[2]。
西沢 野阪教授、甲田所長、大変有用なお話をいただきまして、ありがとうございました。