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冬の定番「吸湿発熱素材」、使い方誤るとかえって冷える?

シーンに応じた素材選びのコツ

 塚越小枝子=フリーライター

 また、同じ室温で同じ素材のシャツを着ていても、汗のかき方の個人差によって影響は違ってくるという。実験では、綿は衣服内の湿度が急に上がるほど、繊維の温度も急激に上がることが分かった(*2)。つまり、大量の汗を急にかくような人は繊維の影響もより大きく受けることになる。

 そして、「吸湿発熱をうたう素材は、綿よりもずっと発熱量が大きい」(平田さん)。ということは、影響は上記の実験より顕著に表れることが考えられる。吸湿発熱素材は寒いときに早く快適な状態にするには効率的だが、暑くなるような環境にいる場合や、汗かきの人の場合は、ますます汗をかいて困るという弱点もあるのだ。

山では肌着選び一つが生死を分ける

 ちょっとした違いのようにも思われるが、例えば山などの過酷な環境では肌着の素材一つが生死を分けることもあるという。山での凍死事故で死亡した人の多くは綿のシャツを、生き残った人の多くはウールか化学繊維のシャツを着ていたという調査報告もある(*3)。

 「現在は山へ行くときはウールや化学繊維を着ることが常識になってきましたが、昔は綿のシャツを着用する人もいました。登山は汗をかくほどの運動量になることもありますし、雨にぬれることもあります。そんなとき、綿の場合、吸湿して発熱するまではいいのですが、繊維の中に水分を多量に吸い込むという性質があるのです。汗が止まってからも繊維の中に残った水分の蒸発が続くため、体熱をどんどん奪って体温が下がってしまうのです」(平田さん)

 日常生活では山ほど極端な環境にはなりにくいが、身につける衣服の素材によって少なからず体への影響があることを知っておこう。冷え症の人がよけいに冷えるような事態を招いては本末転倒だ。汗をかいたらなるべく着替える、着替えることができない場合は最初からウールや化学繊維の肌着を選ぶほうが賢明だ。また、肌着だけで防寒を考えるよりも、マフラーや重ね着など調節できる服装を心がけよう。

スポーツなど汗をかく場合は「吸水速乾素材」を

 登山に限らず、スポーツなどで多量の汗をかくことが想定される場合は、吸湿発熱素材は適さない。

 「スポーツの場合は、かいた汗をいかに早く乾かすかということが大切なので吸水速乾の繊維が適します。それも皮膚に密着していなければなりません」(平田さん)

 ポリエステルなどの化学繊維を使った多くの機能性素材が開発されているが、平田さんによれば、吸水速乾素材は、液体が繊維と繊維の間の細い隙間を吸い上がる「毛細管現象」を利用したものだという。ポリエステルは綿のように繊維の中に水分が入ることはなく、繊維の隙間に毛細管現象で水分を吸い上げて表面から衣服の外へ汗を出すので、その汗が空気にさらされて乾いていく。皮膚と繊維が密着していればこの現象はどんどん起こるが、皮膚と繊維の間にゆとりがあると汗はそこで蒸発して移動しなければならないので、効率が悪くなるのだ。

 「最近のスポーツウエアは密着したものが多く、スパンデックス(ポリウレタン弾性繊維)のような弾性繊維も多く使われています。ポリエステルも伸縮性がありますから、織り方や編み方によって多様なウエアができます。これらの繊維は発色がよく、汗をかいても色が変わらず汗ジミが目立たないのも利点です」(平田さん)

 シーンに合わせて衣服の素材をうまく使い分け、寒い冬も快適に、アクティブに過ごしたい。

*2 Tanaka K, et al. Effects of individual sweating response on changes in skin blood flow and temperature induced by heat of sorption wearing cotton ensemble. Journal for the Korean Society of Clothing Industry. 2000;2:398-404.ほか
*3 安田武:事例と重ね衣の問題点、第2回登山用雨衣シンポジウム~下着・肌着も含めて~、日本山岳会科学研究委員会、1990年11月17日(土)13時10分~17時、於:青山学院大学総合研究所、会議室

(図版:増田真一)

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平田耕造(ひらた こうぞう)さん
神戸女子大学家政学部教授 医学博士
平田耕造(ひらた こうぞう)さん 東京学芸大学大学院修了後、金沢大学医学部生理学第一講座助手、講師を経て1989年4月から神戸女子大学家政学部助教授、93年から教授、2013年4月から副学長。専門は環境生理学。気象条件の急変や室温差に対し、衣服はポータブルな快適環境を作るもの。衣服内や皮膚の温湿度・皮膚血流や発汗等を指標として、特に皮膚の動静脈吻合(AVA)血流に注目して研究に取り組む。

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