ノロウイルスで嘔吐! どうやって消毒すればいい?
ノロウイルス徹底対策【後編:消毒法】
大西淳子=医学ジャーナリスト
汚れた布類は浸け置き消毒か熱湯消毒

嘔吐物が付着した布類は感染源になります。そのまま洗濯機で他の衣類と一緒に洗うと、洗濯槽内と他の衣類にウイルスが付着し、一気に拡散してしまいます。
汚れた衣類や嘔吐した人が口を拭いたタオルなどは丈夫なビニール袋に入れて洗面所や浴室に運び、消毒しましょう。マスクと手袋をした上で、バケツを用いて水洗いし、次に200ppmの薄い消毒液に1時間程度浸す、または85~90度で90秒以上加熱してから洗濯機にいれます。
この処理で痛んでしまうような衣類は、残念ですが捨てる方が無難です。使い捨てエプロンや手袋などと一緒に、ビニール袋に入れて薄い消毒液を掛け、袋の口を縛って廃棄しましょう。
水回りの消毒も念入りに
嘔吐、下痢のある人が使用した便器の中は、ノロウイルスの巣窟。マスク、手袋、使い捨てエプロンなどを身につけ、換気を良くした状態で、濃い1000ppm消毒液を使って消毒します。トイレの床や洗浄レバーやドアノブ、ペーパーホルダーなどは薄い200ppm消毒液とペーパータオルを用いて消毒し、その後水拭きをします。
汚れた衣類を水洗いした場所や、嘔吐した患者が口をゆすいだ場所も、必ず消毒しましょう。
さらに、ノロウイルス感染が疑われる人が使用した食器も消毒が必要です。使用後すぐに、薄い200ppm消毒液に5~10分浸してから洗います。
以上、気の遠くなるような作業ですが、備えあれば憂いなし。漂白剤や使い捨てウエアなどを一式そろえた「ノロウイルス対策セット」を準備し、作業をシミュレーションしておけば、いざというときに、自分と周囲の人の感染リスクを大きく下げることができるはずです。
嘔吐物に含まれるノロウイルスは、どのくらいの範囲まで広がるのでしょうか。東京都健康安全研究センターが、模擬嘔吐物を各種床材の上に落下させる興味深い実験結果を公開しています(*1)。
最初に、高さ100cmから落下させて、床面で飛び散る範囲を調べたところ、模擬嘔吐物は半径2.3mの範囲に広がりました。85cmの高さから落下させたところ、飛沫は1.6mまで上がりました。また、飛散した粒子の中で、直径が小さなものは、数時間にわたって空気中を漂う可能性があることも明らかになりました。
この結果は、消毒すべき範囲の目安となると共に、嘔吐から数時間後まで、空中にウイルスを含む粒子が漂っており、積極的に換気をしないと、清掃後に室内に入った人の顔などにウイルスが付着して口に入る危険性があることを示しています。