「睡眠不足」悪事の数々 免疫低下、無力感、体重増も
アリアナ・ハフィントン流 最高の結果を残すための「睡眠革命」(2)
アリアナ・ハフィントン
睡眠は、ほかのどんな方法よりもプラス効果がきわめて高い「究極の健康法」だ。睡眠を犠牲にして何かしようとするのは、「愚の骨頂」。人生を豊かにする「睡眠革命」に今すぐ取りかかろう!……こう主張するのは、「ハフィントンポスト」の創設者として知られるアリアナ・ハフィントン氏だ。現在は睡眠の伝道師ともいえる活動に取り組むハフィントン氏が、睡眠がいかに健康に深刻な影響を及ぼすのかを語る(第1回「死を招く睡眠不足、世界最短は東京」はこちら)。

あなたの睡眠不足の原因は、本当に時間がないから?

睡眠は万人共通だが、「十分な睡眠を取る時間がない」という思い込みもまた万人共通だ。しかし実際には、私たちは自分の裁量で使える時間を、思うよりずっと多く手にしている。鍵は、その使い方を正直に見つめることにある。
例として、マサチューセッツ工科大学で科学技術社会論の教授を務めるシェリー・タークルに登場してもらおう。テレビを自分への褒美にしていた彼女は、本の執筆を終えた後に「マッドメン」や「ホームランド」「ジ・アメリカンズ」といったドラマを見るのが常だった。彼女は私にこう言った。
「すばらしいご褒美だと思っていたわ。『友情』の章を書き終えたら『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』を見よう、『ロマンス』を仕上げたら『ハウス・オブ・カード』って独り言を言ってね。私は『テレビドラマを優先する』なんて言っていたわけじゃない。でも自分が『睡眠を優先する』と言ったことがないことに気づいて、ショックだった」
世界中で何百万もの人々が彼女と同じことをしているが、睡眠不足の代償は非常に大きい。一晩の睡眠時間が5時間以下になると、すべての死因を合計した死亡率は15%上昇する。米国睡眠医学会による発表をもとにCNN.comが2015年に掲載した記事では、「眠るか、さもなくば死すか」という挑発的なタイトルのもと、心臓発作・脳卒中・糖尿病・肥満のリスク上昇と睡眠不足との関連性が紹介された。十分な睡眠を取るかどうかは、実際に生死にかかわることなのだ。
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