── ビフィズス菌とはどういう菌なのでしょう。乳酸菌との明確な違いを教えていただけますでしょうか。
清水所長:ビフィズス菌とは、大腸の奥深くにすみつく菌で、乳酸菌と混同されることが多いのですが、生物学的にはヒトとナマコに例えられるほど、生物学的には乳酸菌とはまったく異なる微生物に分類されます。乳酸菌は多少酸素がある環境でも生息できるため、口から入ってきた空気がまだ残る小腸上部から広くすんでいますが、ビフィズス菌は酸素が嫌いなため、大腸の奥深くにすみついています。
ビフィズス菌はヒトの健康に不可欠な葉酸やビタミンB群を作ったり、栄養の吸収を助ける働きを持ちますが、なんといっても「酢酸を沢山作る」というのが特徴です。
ビフィズス菌が作る酢酸は、腸の中で、全身で、健康に役立つ
清水所長:酢酸とは最近話題の「短鎖脂肪酸」という成分の一つで、抗菌作用があり、大腸で酢酸が増えるとお腹の中で有害な菌がすみにくい環境ができるため、お腹にいい菌といわれています。
また、体内に有害な物質が入らないようにする「腸管バリアー機能」にも酢酸が役立ちます。
早稲田大学と東京大学が共同で行った大規模な腸内細菌のゲノム解析で、日本人のお腹には、欧米の人に比べてビフィズス菌などの酢酸を作る菌が多くいる傾向にあることがわかりました。日本人に適した腸内細菌として選ばれた菌の一つがビフィズス菌というわけですね。

赤ちゃんのお腹の中にはビフィズス菌が多くいるのをご存じでしょうか。赤ちゃんはお腹の中ではほぼ無菌状態にありますが、生まれるときに産道でお母さんから腸内細菌をお裾分けしてもらいます。そして、母乳を飲むたびにビフィズス菌は増えていき、多い場合は腸内細菌の90%以上がビフィズス菌となることもあります。母乳にビフィズス菌を増やす成分が含まれていることから、ビフィズス菌は赤ちゃんの健康を支える菌であると考えられています。
赤ちゃんのころに私たちの体を守ってくれるビフィズス菌ですが、成長するにしたがって食事や生活習慣の影響からお腹の中のビフィズス菌の割合は減ってしまいます。また、特に60歳以降は加齢に伴い減ってしまうこともわかっています。

ビフィズス菌と健康との関係はまだわかっていないことも多いのですが、ヨーグルトなどで生きたビフィズス菌をとることは脳や体の健康をサポートする選択肢の一つとなると考えます。
(グラフ作成/増田真一)
愛媛大学医学部附属病院 抗加齢予防医療センター長
愛媛大学大学院抗加齢医学(新田ゼラチン)講座教授

森永乳業 研究本部 基礎研究所長
