世界初!薄毛リスク遺伝子検査は悩める男性を救うか
アンファーが開発した薄毛リスク遺伝子検査とは
塚越小枝子=フリーライター
「新たな治療薬が加わることによって、一人ひとりが“自分はどちらの薬を選択することがより有意義で適正なのか?”を判断する材料が必要となったのです」と、メンズヘルスクリニック東京院長・小林一広さんは開発の目的を話す。
この検査は、5αリダクターゼⅠ型およびⅡ型の遺伝子発現量を毛包から測定する技術だ。前頭部・頭頂部から毛髪を5〜6本ずつ、毛包を残した状態で採取し、保存する。特定の遺伝子を増幅させる処理によってⅠ型・Ⅱ型の遺伝子発現量がどのくらいかを解析。フィナステリドとデュタステリドのどちらの薬剤が有効かを選定することができる。
「データ上はデュタステリドの方が育毛効果がファナステリドの1.5倍高く有効なように見えますが、これはもともと前立腺肥大症の治療薬として承認されていたものが、AGAに適応になった薬です。50代以上の前立腺肥大症の患者さんが飲み続けた場合と、20代・30代のAGA患者さんが長年飲み続けた場合とでは、副作用の現れ方も違うと思われるので、慎重に適応を見極める必要があります。そのためにもこの検査が役立つと考えています」(小林さん)
「新しいからといって飛びつくのではなく、冷静に患者さんの将来を踏まえたうえで薬を選択していくことが重要です。そのためにこのような検査を取り入れることによって、説得力のある客観的な判断材料の一つとしていただきたい」(井上さん)
将来的にはAGAリスクが判定可能に?
「AGAリスク遺伝子検査」は、2015年10月21日よりヘアメディカルグループに属する4つのクリニック(※)で始まった。検査費は1万9000円(税抜)。
現状では、診察時に毛髪を採取し、約1カ月後の次の診察日に解析結果を見て治療薬の選定に役立てるという形での運用だ。今後は、この検査を行った患者の数年後の毛髪状況を調査し、未来のAGA発症リスクの判定に用いる検査にしていきたいという。
「当院では初診時に来院される患者さんのうち、AGAがまだ発症していない方が約3割を占めます。この調査により相関が証明されれば、将来、薄毛になることへの不安を感じている多くの方の未来も予測できる検査になります」(小林さん)
従来、AGAの発症には5αリダクターゼⅡ型が関与していることが常識となっていたが、この技術の開発段階で、5αリダクターゼⅠ型も発症に何らかの関係がある可能性を示す結果が得られたという。今後、さらなるデータの蓄積と研究の成果によって、より個別化した薬の選択ができるようになる、AGAを発症していない人の発症を予測するなど、頭髪を取り巻く医療の在り方が変わっていくかもしれない。
なお、来春にはアンファーからより手軽な簡易検査キットが発売される予定だという。
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メンズヘルスクリニック東京 院長
聖マリアンナ医科大学形成外科学教室幹細胞再生医学(アンファー寄附)講座 特任教授