知らないと損!病気になったときのお金のこと
「高額療養費制度」「限度額適用認定証」をよく知らない人は必見!
市川純子=ヘルスケアコンテンツストラテジスト 医療ジャーナリスト
一時的な高額の支払いを避けるには
なお、高額療養費制度により自己負担限度額を超えた額が払い戻されるとはいえ、一時的な高額の支払いは大きな負担となります。そんな事態を避けるには、健保組合などに申請すると発行してもらえる「限度額適用認定証」を健康保険証と併せて医療機関などの窓口に提示すれば、窓口での支払いを自己負担限度額で収めることができます。この申請は家族が行ってもOK。妻が認定証を提出したことでAさんは、一時的に生じる41万円もの支払いを避けることができ、窓口支払い額は約9万円に抑えることができました。
長期で高額の医療費がかかる場合は
Aさんのように抗がん剤治療が長期で高額の医療費がかかる場合は、「多回数該当」という仕組みを利用すれば、さらに最終的な自己負担額が軽減されます。これは直近12カ月の間に3回以上高額療養費の支給対象になった月がある場合に、4回目の治療費の自己負担限度額が減額される制度です。Aさんの4回目の治療費の自己負担金額は4万4400円で済みました(所得額によって減額幅は変わります)。
このほか、健康保険組合には、独自の負担軽減制度を用意している例も少なくありません。「付加給付」と呼ばれる仕組みで、組合が定める一定の基準額を超えた費用負担について、支給を行います。医療費が高額になった際には、加入している組合に付加給付について尋ねてみるといいでしょう。
また、治療のために仕事を休み、給与の支払いを受けられない(もしくは十分な報酬が受けられない)場合、「傷病手当金」の支給対象となります。1日につき、標準報酬日額の3分の2に相当する額が支給されます。医師の署名などを添えて、健康保険組合などに申請します。
医療に伴う経済負担の悩みに関しては、まずは加入している保険組合の担当者に相談してみることが大切です。また、各病院の相談窓口も活用しましょう。Aさんも、健保組合や病院の相談窓口を利用しながら、長期治療に取り組み順調に回復しています。