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トピックス

ポストコロナの時代、がん患者・がんサバイバーが心がけるべきこととは

「がん患者本位のエンゲージメント」を考える会が示したがん医療の新しいかたち

 千田敏之=医療ジャーナリスト

コミュニケーションの重要性が高まっている理由としては、どんなことが考えられますか。

天野 今、医療はどんどん進歩していて、さまざまな治療によって患者さんが享受できる利益は高まってきています。それはがん医療の分野でも顕著で、私が悪性リンパ腫の治療を受けた20年前と比べても全然違います。治療法だけではなく、支持療法や緩和ケアの手法も充実してきていますし、がん対策基本法ができて、患者さんを支える制度面も充実してきています。

 しかし一方で、治療法などがどんどん高度かつ複雑になることで、患者さんがそれをきちんと理解することが難しくなってきていると感じます。そんな状況で、医師の説明不足や、信頼感の欠如などによって、患者さんと医療者との間のコミュニケーション不全が生じると、患者さんが最善の治療法やケアにたどり着くことが難しくなってしまいます。

 がんと診断された患者さんが、今の医療への不信から全く治療を受けずに、科学的根拠が確かでない怪しげな民間療法に走ってしまうことが、最近増えている印象もあります。

 報告書が出版された直後、新型コロナウイルス感染症の流行が始まったのですが、報告書に書かれているような、医療現場におけるコミュニケーションの問題点も一気に顕在化したように感じます。コロナ禍の中、ワクチン接種を忌避する人が少なくないということも、コミュニケーション不全に起因する医療不信が関係していると考えられます。

医師と患者間のコミュニケーション不足や不全は昔から問題視されてはいました。

天野 その通りです。問題があるという認識はあっても、患者と医療者のコミュニケーションは医療現場ではなおざりにされる場合もありました。その結果、医療に対する不信や不安が今でも多くの人々の心の根底にあるのが実情です。

 例えば、がんの診断を受けた患者は自分の命が危機にあるということで、相当な精神的なプレッシャーを感じながら、さまざまな意思決定を行わなければならない状態にあります。医師をはじめとする医療者と良好なコミュニケーションを取ることが、そうした不安やプレッシャーを払拭することにつながるのですが、実際にはなかなかうまくいっていません。

 報告書でも指摘していますが、医療現場が忙し過ぎて、患者との会話に十分な時間が取れないことも問題です。具体的なアクションとして、具体的なスキルや手法の普及や、ICT(情報通信技術)などを活用して忙しい医師がコミュニケーションのための時間を確保するよう提言しているのはそのためです。

がんになっても隠す時代ではない

天野さんは、がん患者団体の連合体組織である全国がん患者団体連合会の理事長を務めておられますが、この報告書で患者さんや一般の人に読んでもらいたいポイントはどこですか。

天野 一つには、がんの患者さんの意識の変化の部分です。私が治療を受けた20年前は、がんであることを周囲に打ち明けるのは、精神的にもハードルが高かった時代です。がんに罹っても、そのことを職場や知人に隠す人は今よりも格段に多かったと思います。

 私自身は20年前発病したときに、自分の経験をホームページを作ってそこに綴ったのですが、そんなことをする人は当時はまだ多くはありませんでした。

 しかし、状況は随分変わりました。若い芸能人やスポーツ選手の方も、がんに罹患するとそれを公表し、闘病の状況をTwitterやFacebookなどSNSを通じて発信するケースが増えています。また、一般の方でもがんの闘病経験をSNSなどで発信するということも増えています。

 このように、がんだということを公にしても問題ない社会になってきているのですが、そのことがまだ広く、多くの人々に浸透していません。

 確かに、がんと診断された直後などは、周囲にカミングアウトできないことがあるとは思います、しかし、逆にそのほうが精神的にきつかったり、さまざまなサポートを受ける上での阻害要因になることもあります。「がんは隠す時代ではない」「オープンにして患者同士で情報交換したり、さまざまなサポートを受ける時代だ」ということを、是非知ってもらいたいと思います。

「がんになっても安心して暮らせる社会」ということですね。

天野 その通りです。例えば働いている人であれば、自分ががんになったということを職場で公にすれば、不利益を被ったり、解雇されるんじゃないかと恐れて、なかなか公にしない方は今でもまだいらっしゃいます。個人の考え方なので、絶対オープンにしろとは言えませんが、よく考えるとおかしいですよね。がん以外の他の病気では、あまりそういうことはありませんから。

 その意味では、「がん=死の病」というスティグマ(負の烙印)は、日本においてはまだ完全に解消されていないかもしれません。治療成績も上がり、がんは不治の病ではなくなってきました。がん患者に対するさまざまな支援の仕組みも整ってきています。そうした状況を、我々患者会も含め、もっと世の中にアピールし、患者さんや一般の方々の意識を変えていく必要があると思います。

「『がんは隠す時代ではない』ということを、是非知ってもらいたいと思います」と話す天野氏。
「『がんは隠す時代ではない』ということを、是非知ってもらいたいと思います」と話す天野氏。
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