日本経済新聞 関連サイト

ようこそ ゲスト様
日経Gooday TOP  > 医療・予防  > トピックス  > 最近耳にする「肺MAC症」ってどんな病気?  > 2ページ目
印刷

トピックス

最近耳にする「肺MAC症」ってどんな病気?

中高年女性に急増中、治りにくいやっかいな呼吸器感染症

 倉沢正樹=日経メディカル前編集長

進行は遅いが放置すると命の危険も

肺MAC症にかかると、病気はどのように進行していくのですか。

オンラインで取材に応じる倉島篤行氏

 月単位で進行していくことはなくて、「年単位で見ると以前より悪くなったな」という感じで緩やかに進行していくのが特徴です。だんだんと咳や痰が多くなってきて、特に痰が長引きます。何もしないで放っておくと、肺のあちこちに病巣ができて、徐々に呼吸が苦しくなったり熱が出てきたりします。場合によっては命の危険を招くこともあります。

そういう意味では早期の治療が必要ということですね。

 ええ。ただ治療の前に、まずは診断を確実にすることが必要です。診断をつける際に大事なのは、痰の検査で菌を見つけることです。肺MAC症の原因となる菌は水や土の中にもいるので、たまたま1回検出されたからといって、すぐこの病気だとは判断できません。そのため間隔を置いて2回、痰の検査をして、いずれも菌が検出された場合に肺MAC症と診断しましょうというのが国際的な基準になっています。

 肺MAC症と診断されたらX線写真やCTで肺の状態を見て、直ちに治療が必要かどうかを判断します。病気のせいで肺に大きな空洞があるようならすぐ治療に取りかかりますが、肺に大きな影がなくて症状も穏やかな状態であれば、しばらく様子を見ることもあります。人から人へはうつらないので、慌てる必要はないわけですね。

治療が必要な場合は、どのような治療を行うのでしょうか。

 標準的には3種類の薬を同時に飲んでいただく治療をします。残念ながら1種類だけで効く薬はまだないので、いろいろな薬を使って治療していくことになります。その点は結核の治療と同様なのですが、肺MAC症の治療は結核よりも長引くことが多いですね。

 結核の治療では、3種類の薬を6カ月使えば、ほとんどの場合は治ります。でも肺MAC症の場合、3種類の薬を飲んでも6カ月で治すことはできません。症状を改善して肺の状態を良くするには、最低でも1年以上の内服治療が必要です。1年半とか2年とか、それ以上かかることも多いやっかいな病気です。

肺MAC症は呼吸器感染症ですが、新型コロナウイルス感染症との関連について分かっていることはありますか。

 これはまだよく分かっていません。数は少ないですが、私たちが診ている肺MAC症患者さんの中にも新型コロナにかかった人はいます。でも新型コロナにかかったからといって、肺MAC症の状態が直ちに悪化したようなケースは経験していません。

24時間風呂の使用や翌日の追い炊きは避ける

最後に、肺MAC症の予防について伺います。感染を避けるために気をつけるべきことはありますか。

 先ほど24時間風呂の話をしましたが、これは避けた方がいいです。また、最近は追い炊き機能が付いた風呂も増えていますが、いったん沸かした湯を翌日に追い炊きすることも避けるべきです。湯に含まれる菌が倍以上に増えることは確かですから。

 海外ではシャワーヘッドの菌にも注意すべきだという報告もありますが、日本ではあまり報告がありません。シャワーの利用頻度の違いからくるのかもしれませんが、そこに神経質になる必要はないように思います。

土ぼこりから感染するという話もありましたが、その面で気をつけた方がいいことがあれば教えてください。

 園芸のときの土の扱いには注意した方がいいと言われていますので、土ぼこりを吸わないようにするなどの配慮は必要でしょう。

肺MAC症の予防にマスクは効果がありますか。

 もちろん一定の効果はあると思いますが、どの程度の効果があるかについては何とも言えません。肺MAC症は、感染してから症状が出てくるまでに1年とか2年とか長い年月がかかるからです。そういう意味では肺MAC症は、治療もさることながら、予防も難しいタイプの病気と言えるだろうと思います。この記事をお読みになった方が、肺MAC症に関する正しい認識を持っていただければ幸いです。

倉島篤行(くらしま あつゆき)さん 公益財団法人結核予防会複十字病院臨床研究アドバイザー
倉島篤行(くらしま あつゆき)さん 1971年信州大学医学部卒業。呼吸器内科医として長年、肺MAC症の治療および研究に携わっている。日本呼吸器学会指導医・専門医、日本内科学会認定内科医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症指導医。

先頭へ

前へ

2/2 page

RELATED ARTICLES関連する記事

医療・予防カテゴリの記事

カテゴリ記事をもっと見る

FEATURES of THEMEテーマ別特集

  • 強い足腰を維持するための「骨」の強化法

    健康長寿の大敵となる「骨の脆弱化」を予防するには、若いうちから「骨を強くする生活習慣」を取り入れていくことが大切だ。このテーマ別特集では、骨が弱くなるメカニズムや危険因子、骨を強く保つための生活習慣のポイントなどについて解説していく。

  • もの忘れと認知症の関係は? 認知症リスクを下げる生活のポイント

    年を取っても認知症にはならず、脳も元気なまま一生を終えたいと誰もが思うもの。しかし、「名前が出てこない」「自分が何をしようとしたのか忘れる」といった“もの忘れ”は、中高年になると誰もが経験する。⾃分は周りと比べて、もの忘れがひどいのでは? ひょっとして認知症が始まったのか? と不安になる人も多い。このテーマ別特集では、もの忘れの原因や、将来の認知症にどうつながるのか、認知症を予防するにはどうすればいいのかについて、一挙にまとめて紹介する。

  • 痛風だけじゃない!「高すぎる尿酸値」のリスク

    尿酸値と関係する病気といえば「痛風」を思い浮かべる人が多いだろう。だが、近年の研究から、尿酸値の高い状態が続くことは、痛風だけでなく、様々な疾患の原因となることが明らかになってきた。尿酸値が高くても何の自覚症状もないため放置している人が多いが、放置は厳禁だ。本記事では、最新研究から見えてきた「高尿酸血症を放置するリスク」と、すぐに実践したい尿酸対策をまとめる。

テーマ別特集をもっと見る

スポーツ・エクササイズSPORTS

記事一覧をもっと見る

ダイエット・食生活DIETARY HABITS

記事一覧をもっと見る

からだケアBODY CARE

記事一覧をもっと見る

医療・予防MEDICAL CARE

記事一覧をもっと見る

「日経Goodayマイドクター会員(有料)」に会員登録すると...

  • 1オリジナルの鍵つき記事鍵つき記事がすべて読める!
  • 2医療専門家に電話相談できる!(24時間365日)
  • 3信頼できる名医の受診をサポート!※連続して180日以上ご利用の方限定

お知らせINFORMATION

日経Gooday新型コロナ特設

SNS

日経グッデイをフォローして、
最新情報をチェック!

RSS

人気記事ランキングRANKING

  • 現在
  • 週間
  • 月間

NIKKEICopyright © 2021 Nikkei Inc. All rights reserved.