糖質のとりすぎが、さまざまな病気の出発点になる
このように、「健康のために、食事に気を配っている」という人にまでも気づかないうちに進行しているのが、食後高血糖。
では、なぜ食後高血糖が怖いのか。放置すると糖尿病になるから? 実はそれだけではない。「糖質摂取過剰によって起こる食後高血糖は、糖尿病を含めたメタボリックシンドロームだけでなく、がんや認知症、見た目の老化、骨折リスクなど、加齢とともに進行するあらゆる病気の出発点になると考えています」(山田さん)。
以下の図が、山田さんが提唱している「メタボリックドミノ 山田version」だ。

図の最上流には、「糖質摂取過剰」がある。ドミノがパタパタと倒れた先にあるのが、糖尿病によって起こる合併症や、動脈硬化が影響する脳卒中や心不全などだ。
糖質のとりすぎによって「食後高血糖」が起こると、血糖値を下げるために大量のインスリンが分泌する。すると血糖値が急降下するため、急激な「飢餓感」が起こる。
もちろん、食後高血糖が長年続くと空腹時血糖値も上昇し、糖尿病につながるわけだが、それに加えて、血糖値の上下動による「飢餓感」の問題についても理解を深めておきたい。飢餓感によって空腹感が増し、「つい、食べすぎてしまう」という食習慣が定着する。「わけもなく甘いものが食べたくなる、あるいは、食後、猛烈に眠くなるということに思い当たったら、それは血糖値の急上昇と急降下によるものである可能性が高いです」と山田さんは言う。
図のように、糖質摂取過剰を出発点として糖尿病、肥満、脂質異常症、高血圧などのメタボリックシンドロームが悪化していくわけだが、近年は、食後高血糖とがんや認知症、見た目の老化や骨折との関連も明らかになってきた。「インスリンが多く分泌されると、がん(悪性腫瘍)を増殖させるメカニズムがあることがわかってきました。また、食後高血糖が起こるようになった段階から認知機能の低下は始まり、数十年かけて認知症へとつながっていきます。糖質の摂取量が多すぎて余った糖が体内のたんぱく質にくっつくと、たんぱく質が劣化して、AGEs(糖化最終生成物)という老化物質が生成され、しわやたるみといった見た目の老化、さらには骨のコラーゲンが硬くもろくなり、骨密度が正常でも骨質が悪くなり、骨折が起こりやすくなる、という老化の加速も起こります」(山田さん)。
ワンコイン健診で自分自身の食後血糖値を知ろう!
生活習慣病なんて他人事、と思っていた人も、食後高血糖がドミノをどんどん倒していき、たくさんの病気を引き起こすと知って驚いたのではないだろうか。
自分の食後血糖値が気になる、食後高血糖が起こっていないかどうか知りたい!
「そのためには、3つの方法があります」(山田さん)。

3つの選択肢のうち、最も気軽に実行できるのが、①の「検体測定室」だ。
検体測定室とは、被験者が自分で人さし指の先を消毒し、専用の細い針を刺してごく微量な血液を採取することで、数分後に血糖値などを測ることができるというもの。
検査が可能な項目は、血糖値、HbA1c、中性脂肪など、特定健診と同じ8項目だ。例えば血糖値であれば、500円というワンコインで調べることができる(検査項目などにより価格は異なる)。

薬局やドラッグストアに「検体測定室(ゆびさきセルフ測定室)」の表示があったら、ぜひ一度、食後血糖値を調べてみよう。そのポイントについて山田さんはこう説明する。
「おにぎり1個あたり、糖質を約40g含みます。おにぎり2個と野菜ジュース1パックで、合計の糖質量が100gほどになります。このセットを食べた1~2時間後に血糖値測定をして、血糖値が140mg/dl以上になると食後高血糖と推定されます。200mg/dlになると、糖尿病の可能性があります」(山田さん)。
「検体測定室」は現在、全国の薬局で2000店舗以上開設されている[2]。
自分の住まいや勤務先の近くに「検体測定室」があるかどうかを知りたいときは、スマホやパソコンから簡易検索ができる「ゆびさきセルフ測定室ナビ」で検索してみよう。