突然死を引き起こす大動脈破裂の怖さ ~阿藤快さんの訃報を受けて~
大動脈解離、大動脈瘤の予防は生活改善から
大西淳子=医学ジャーナリスト
数々のTV番組や映画で悪役として強い印象を残し、グルメ・旅番組では親しみやすい人柄で人気を博した阿藤快さんの突然の死は、多くの人に喪失感をもたらしています。前日まで元気だったという阿藤さんの死因は、報道によると、大動脈破裂、または大動脈瘤破裂による胸腔内出血だったようです。
これらはどのような病気なのでしょうか。予防はできないのでしょうか。
大動脈破裂とは ~大動脈解離から出血に至った場合~
大動脈解離から出血に至った場合を大動脈破裂といいます。大動脈解離については、関連記事(「突然発生する急性大動脈解離、救命は時間との闘い」)をご覧ください。
大動脈は、心臓から横隔膜までを胸部大動脈、横隔膜より下を腹部大動脈と呼びます。大動脈の壁は、内膜・中膜・外膜の3層構造になっています。内膜のどこかに傷ができ、そこから血液が中膜部分を裂くようにして流れ込んだ状態を解離といいます。解離によって大動脈の壁が外膜だけで維持されている状態になり、そこに血圧がかかると、外膜が破れて出血することがあります。破れる場所によっては、胸腔内出血が発生します。
大動脈瘤破裂とは ~ひとたび破裂すると約半数が病院到着前に死亡~
大動脈瘤は、大動脈の壁が3層構造のままこぶ状に膨らんだものをいいます。大動脈瘤があっても、破裂前にはほとんどの患者が無症状で、ひとたび破裂すると約半数が、病院にたどり着く前に死亡します。運よく生きて病院に到着し、手術を受けたとしても、40~60%の患者が死亡します。胸部大動脈瘤が破裂すると、破れる場所によっては胸腔内に出血します。
大動脈瘤が生じる原因 ~動脈硬化で弱くなった血管壁が血圧に負ける~
動脈硬化が主な原因といわれています。正常な胸部大動脈の直径は約25~30mmですが、動脈硬化によって弱くなった動脈壁が血圧に負けて膨らむと、その部分の直径が徐々に大きくなります。動脈硬化の危険因子は高血圧、脂質異常症、喫煙、糖尿病などで、これらが大動脈瘤の発生リスクを高めると考えられています。
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- 通常は無症状だが破裂の前兆も