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過労による突然死が40~50代男性に多いのはなぜ?

知っておきたい!過労死の実態と防止策(上)

 田村知子=フリーランスエディター

吉川 一つには、女性は女性ホルモンによる血管老化を抑える働きや喫煙率が低いことなどで、男性に比べると血管が詰まりにくく、脳出血(脳内出血)やくも膜下出血、脳梗塞や心筋梗塞などを起こしにくいことがあると思います。また、組織で重責を担っているのは男性のほうが依然として多く、「逃げられない」と感じるような社会環境・職場環境の中で、過重労働になりやすいことも要因と考えられます。

そもそも、過重労働と脳・心臓疾患はどのように関連しているのでしょうか。

吉川 2001年に定められた脳・心臓疾患の労災認定基準では、「業務による明らかな過重負荷」として、3つの要件が挙げられています。1つめの「異常な出来事」は、例えば、発症直前から前日に業務に関連した重大な事故に関与するなど、予測できない異常な事態、例えば自然災害や重大な事故への遭遇などによって、極度の緊張や恐怖といった精神的負荷や著しい身体的負荷を受けた場合、急激な作業変化があった場合などです。

 2つめの「短期間の過重業務」は、発症までのおおむね1週間以内に継続した長時間労働が認められる場合などが該当します。そして、3つめの「長期間の過重業務」は、発症前の1カ月間に100時間もしくは2~6カ月間に平均で80時間を超える時間外労働があった場合に、発症との関連性が強いと考えられます。短期間・長期間の過重業務が認められるときは、労働時間に加えて、労働時間以外の負荷要因もあわせて、総合的に判断されることになります。

 3つめの長期間の過重業務が要件となっている背景には、恒常的な長時間労働が長期間にわたって継続した場合、「疲労の蓄積」が生じ、通常の経年変化を超えた著しい血管病変の増悪などを引き起こし、その結果、脳・心臓疾患を発症させることが、疫学研究(*1)や長時間労働と関連する健康障害の研究などから分かってきているためです。

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 もう少し簡単に説明すると、長時間労働が長期間にわたって継続すると、睡眠時間が短くなるほか睡眠の質が低下するなどして、疲労を回復する機会が失われます。疲労が蓄積すれば、交感神経が常に高ぶった状態になることで、血管に負荷がかかって高血圧になったり、血管が収縮して血流が悪化したりします。それが要因となって、脳や心臓の血管が破れて出血を起こしやすくなったり、詰まりやすくなったりするのです。

月60時間の残業で、脳卒中リスクは1.3倍以上に

研究ではどのようなことが分かってきているのでしょう。

吉川 例えば、最近の海外の疫学研究では、週の労働時間が35~40時間の人の脳卒中の発症リスクを1とした場合、週の労働時間が55時間以上の人の発症リスクは1.33倍になるという報告があります(参考記事「週に55時間以上働くと脳卒中リスクが1.3倍に」(*2))。このデータを週の労働時間が40時間と定められている日本の場合に置き換えて考えてみると、月の残業が60時間と換算できます。

 また、睡眠と脳・心臓疾患の発症リスクとの関連は、さまざまな研究で報告があります。例えば、1日に6~7時間の睡眠を取る人の脳卒中の発症リスク・死亡リスクを1とした場合、5時間以下の睡眠の人では発症リスクは1.26倍、死亡リスクは1.19倍とするデータがあります(*3)。睡眠の質を低下させる不眠症状の中でも、寝つきが悪い「入眠困難」がある人は、ない人に比べて心筋梗塞などの循環器疾患で死亡するリスクが1.45倍高まるという報告もあります(*4)。つまり、睡眠は時間が短い場合だけでなく、質の悪化も脳・心臓疾患のリスクを高めるのです。

過重労働が原因で脳・心臓疾患を発症する場合、その前兆となるような症状はあるのでしょうか。

*1 地域社会や特定の人間集団を対象として、健康に関する事象(病気の発生状況など)の頻度や分布を調査し、その要因を明らかにする医学研究のこと。
*2 Kivimaki M,et al.Lancet.2015;386:1739-46.
*3 Li W, et al. Sleep duration and risk of stroke events and stroke mortality: A systematic review and meta-analysis of prospective cohort studies. Int J Cardiol. 2016; 223: 870-6.
*4 Li Y, et al.Association between insomnia symptoms and mortality: a prospective study of U.S. men. Circulation. Circulation. 2014; 129: 737-46.

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