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傾斜マンション騒動で専門医に聞いた「建物が傾くと本当に体に良くないの?」

建物の影響なのか? 心理的な影響なのか?

 梅方久仁子=ライター

2015年10月、横浜市都筑区のマンション1棟が、基礎工事の施工不良により傾くという“事件”が発覚した。では、万一住居が傾いてしまったとき、構造上の危険とは別に、傾いた空間で暮らし続けることで健康被害はあるのだろうか。一部では、めまい、頭痛、吐き気のような体調不良が起こるという説もあるようだ。傾斜した住居で、めまいや頭痛は本当に起こるのか、めまいの専門医に聞いてみた。

「気がつかないような傾きなら、気にしなくていい」

 傾いた建物で暮らすと健康障害が生じるという話は、大地震の液状化現象で地盤沈下が起こった地域の被災者へ聞き取り調査で報告されている。日本建築学会のまとめによると、新潟地震(1964年)、阪神・淡路大震災(1995年)、鳥取県西部地震(2000年)、東日本大震災(2011年)のあとに、傾いた住居で暮らす人を対象にした健康障害調査だ(*1)。

 それによると、傾斜が0.6度程度でめまいや頭痛が見られ、1.3度で牽引感、ふらふら感、浮動感、2~3度でめまい、頭痛、吐き気、食欲不振、4~6度で強い牽引感、疲労感、睡眠障害、7~9度で牽引感、めまい、吐き気、頭痛、疲労感が強くなり、半数以上で睡眠障害などが見られたという。

 これらの健康障害は、本当に傾いた建物で暮らすことで起こっているのだろうか。めまい診療の専門家、国立病院機構東京医療センター耳鼻咽喉科の五島史行医師に聞いてみた。

国立病院機構東京医療センター耳鼻咽喉科・五島史行医師

 「実は、家の傾きで健康障害が起こるという話は、これまで耳鼻科の医師の間では聞いたことがありませんでした」と五島医師。「気がつかないような傾きなら、気にしなくてもいいと思います」という。

 そう言われると安心…とはいえ、実際に傾いた住宅で暮らしていて、頭痛やめまいがあるという報告は、どう考えればいいのだろう。

 五島医師によれば、もし傾きによってめまいや頭痛が起こるとしたら、前庭自律神経反射(耳の中にある「前庭」という器官が刺激されることによって現れる自律神経の症状)の可能性があるという。

 人間の身体はバランスをとるときに、目からの情報、耳にある前庭からの情報、それに足裏の感覚からくる情報を小脳で統合して、平衡状態を判断するという。ちなみに前庭は、身体の移動に伴う加速度や、重力の向きを感知する器官だ。

 柱の傾きなど目からの情報と、ここが真下という前庭の情報、足裏の感覚の情報にズレがあると、小脳でミスマッチを起こす。このミスマッチが繰り返されると、前庭自律神経反射により、めまい、吐き気、冷や汗、頭痛などが起きてくるというのだ。これは、実は乗り物酔いと同じ現象だ。

 明らかに分かるような大きな傾斜なら、この感覚のズレが原因で、めまい、頭痛、吐き気のような症状が起こり得る。

*1 日本建築学会 建物の傾きによる健康障害 http://news-sv.aij.or.jp/shien/s2/ekijouka/health/index.html

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