100万人を超えた心不全、死因の上位だが実は4回予防できる
65歳から急増。40代、50代の習慣改善が鍵
但本結子=21世紀医療フォーラム取材班
息切れ、むくみが起こり、だんだん悪くなり死に至る――これが心不全の怖さだ。心不全の患者数は100万人を超えており、これからも増えると予想されている。ところが、病気の知識を持っていれば、人生で4回予防のチャンスがあるという。2018年12月2日(日)、東京(TKPガーデンシティ御茶ノ水)で行われる市民向け心不全啓発セミナーを前に、心不全はどのように予防できるのかについて、東京大学大学院 医学系研究科 循環器内科学教授の小室一成氏に伺った。

「心不全」予防の第一歩は?
12月2日に、市民向けの心不全啓発セミナーが行われます。40~50歳代から心臓のケアを意識すると、健康寿命が延びるという新しい知識を市民向けにご披露いただけます。セミナーのタイトルにもなっていますが、小室先生は「心不全は4回予防ができる」と繰り返し言われています。これについて、詳しく教えてください。
小室 心不全はあらゆる循環器疾患、特に心臓疾患の終末像です。ただし、心臓疾患や血管疾患になっても必ずしも心不全になるわけではなく、発症するのは一部の人です。では、どんな人が心臓疾患になりやすいかというと、高血圧、肥満、糖尿病、コレステロールが高いといった人たちです。
逆に言えば、心不全にならないための最初の予防は、良い生活習慣を身につけること。暴飲暴食をしない、塩分を取り過ぎない、煙草を吸わない、運動をして太りすぎないことが心不全の予防の第一歩であり、生活習慣の乱れをなくすことが「0次予防」です。
ところが食べ過ぎて太ってしまった、塩分を取り過ぎて血圧が高くなってしまった、さらに血糖やコレステロールが高くなってしまったという人は心筋梗塞や不整脈などの心臓病になりやすくなりますが、皆がなるわけではありません。遅すぎることはないので、心臓病になる前に生活習慣を改善すれば良いのです。肥満や高血圧、糖尿病、脂質異常症を少しでも改善し、脳卒中や心筋梗塞にならないようにするのが「一次予防」です。
しかし、生活習慣の改善が十分できずに心筋梗塞や弁膜症になってしまった、あるいは不整脈が出てしまった場合はどうしたら良いのか。この段階で気をつけなければならないのは、心筋梗塞を繰り返さないことも重要ですが、さらに重要なのが心不全にならないことです。先ほどお話したように、心筋梗塞や弁膜症、不整脈があっても心不全になる人は一部なので、心不全にならないようにすることが「二次予防」です。
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