すい臓がんの早期診断マーカー、国がんが発見
検査キットも開発、検診への適用目指す
大下 淳一=日経デジタルヘルス
早期発見が難しく、予後不良ながんとして知られる「すい臓がん(膵がん)」。その早期診断につながり得る血液バイオマーカーを、国立がん研究センターが発見した。既に検査キットも開発。臨床での有用性を検討し、膵がん検診用バイオマーカーとしての実用化を目指す。
国立がん研究センター研究所 創薬臨床研究分野 ユニット長の本田一文氏らが、厚生労働省や日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受けて実施したもの。成果の詳細は、英オンライン科学誌「Scientific Reports」に英国時間2015年11月9日付で掲載された。
「膵がん模擬検診」を神戸大学などと開始
本田氏らのグループは今回、血液中の「アポリポプロテインA2(apoA2)」と呼ぶたんぱく質に着目。そのアイソフォーム(たんぱく質の構造や機能が似通った分子の総称)の血中濃度が、早期の膵がんや膵がんのリスクとなる疾患の患者において、有意に低下することを発見した。
今後、膵がん検診用バイオマーカーとしての実用化を目指し、apoA2アイソフォームを使う「膵がん模擬検診」を神戸大学などと開始する。これを通じ、apoA2アイソフォームの検査が早期膵がんや膵がんのリスクとなる疾患を適切にスクリーニングでき、検診として実用化できるかどうかを確認する。検証に使うキットは現時点では研究用試薬だが、体外診断薬としての承認を得ることも目指すという。
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