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「早起きはカラダに悪い」説の真偽は?

10歳から55歳までの人の体内時計は「もっと寝かせてくれ」と訴えている

 大西淳子=医学ジャーナリスト

7時起床は体内時計とずれている?!(©nito500n-123rf)

 明日は早起きしなければ、と思っていつもより早めに布団に入っても、なかなか寝付けない。そんな経験は誰にもあると思います。それは、人間に本来備わった体内時計のなせる技なのです。

 ティーンエージャーの概日リズム(サーカディアンリズム)について研究している英国オックスフォード大学のPaul Kellye氏は、人間の体内時計について、興味深い学説を発表しています。それによると、10歳から55歳までの人々は、標準的な「朝9時前後の始業」に間に合うように起床することにより、毎日2~3時間の睡眠不足になっているというのです。さらに、このレベルの慢性的な睡眠不足は、健康被害をもたらす可能性があるとのこと。これはどいうことなのでしょうか。もう少し詳しく見てみましょう。

「早寝さえすれば、午前中の集中力は高まる」という考えは間違い

 英国Bradford大学で2015年9月7~10日に開催されたBritish Science Festivalにおける同氏の発表(*1)によると、体内時計は努力によって進めたり遅らせたりできないため、学校や仕事のある日には、人々は、もっと眠りたい体をむりやり起こして出かけ、翌朝のことを考えて、体が眠りを求めていない時間に布団に入る毎日を送っていることになります。これにより質の高い睡眠を取れる時間が短くなって、慢性的な睡眠不足に陥る危険があるというのです。

 Kelley氏らが「Learning, Media, and Technology」誌に発表した総論(*2)も利用して、彼らの主張を以下に解説してみます。

 教育の現場では、生徒の体内時計が示す時間を考慮せずに授業開始時間が設定されています。教師たちは、思春期の生徒の勉強に最も適しているのは朝であり、早寝さえすれば、午前中の集中力は高まると考える傾向があります。早寝早起きは健康と富と知恵をもたらす、といった格言は多くの国に存在し、親や教師は、思春期の生徒たちに早寝早起きの訓練をしなければならないと思い込んでいます。

 しかし、訓練で体内時計はコントロールできません。体内時計は、目の中にある光受容体を利用して昼夜のサイクルに合うようセットされます。体内時計の時間と、行動や代謝、生理的なリズム、たとえば睡眠と覚醒、ホルモン分泌、体幹温度、各臓器のリズムは通常、同調していますが、ここに乱れが生じると、さまざまな組織や臓器がそろって働くことができなくなります。特に睡眠と覚醒のリズムは乱れやすく、乱れが生じれば、健康にさまざまな悪影響が現れます。

 体内時計からずれた時間の就寝と起床によって生じる睡眠不足は、認知面、感情面、身体面に悪影響をもたします。免疫反応が低下し、代謝性疾患、糖尿病、高血圧、不安、うつ、肥満が生じやすくなります。特に、6時間未満の睡眠は有害であることが示されています。ある研究は、1週間の平均睡眠時間が8.5時間の人々と比較すると、5.7時間の人々では、711個もの遺伝子の発現が変化していたと報告しています。睡眠不足が、これほど多くの遺伝子の発現を上昇または低下させることは大きな驚きです。

 思春期の生徒を対象とする研究では、睡眠不足が、コミュニケーション障害や、集中力と認知機能の低下、居眠り、運動能力の低下、危険行為の増加、気分の変化(特にうつ)に関係すること、さらに、学習能力、長期記憶、学業成績を低下させることが明らかになっています。また、米国のように高校への通学にも車を使う国では、思春期後期のドライバーの交通事故は午前中に最も多く発生するというデータが得られています。

*1 Start secondary school at 10am to improve learning. British Science Association.
http://www.britishscienceassociation.org/news/start-secondary-school-at-10am-to-improve-learning
*2  Learning, Media, and Technology. 2014; 40(2):1-17.

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