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大流行懸念される「新型ノロウイルス」、なぜ怖い?

国立感染症研究所が異例の「ノロウイルス大流行」の予測を発表した理由

新型ノロウイルスは診断キットでは検出できないことがあるという。(©Vitaliy Vodolazskyy 123-rf)

 毎年、秋以降に流行が本格化するノロウイルスだが、国立感染症研究所によると、この秋冬には新型のノロウイルスが大流行する可能性があるといい、いつも以上の警戒が必要だ。

 実は国立感染症研究所がノロウイルスの流行の「予測」を発表したのは今回が初めてのことだ。

 同研究所ウイルス第二部第一室の片山和彦室長によると、ノロウイルスについては毎年9月1日から翌年8月末までを一つのシーズンとし、これまでは新シーズンのスタート後、早い時期に感染者が急増した場合に「ノロウイルスが流行し始めた」という事実を発表していた。

 2015年9月から始まった今シーズンについては11月9日現在、各地で感染者が散見される程度でまだ流行とは言えない状況だ。それでもシーズン前の7月下旬 という早い段階で「例年にない大流行の恐れがある」と予測し、全国の地方衛生研究所にウイルスの分析を徹底するよう注意を呼びかけた。それに加え、今シーズンの始まりには、NHKと厚生労働省を通じて、大規模な流行への注意喚起を行ったのは、それだけ警戒しているということの現れだ。

GⅡ.4からGⅡ.17の時代に?

 大流行が予測されるのは、今シーズンは新型ノロウイルスである「GⅡ.17」という型が主要流行株になる可能性が大きいためだ。

 ノロウイルスについてきちんとしたデータが集められるようになった2005年以降、流行の主要株はずっとGⅡ.4と呼ばれる型だったが、前シーズンの半ばである2015年2月以降、GⅡ.17型がこれに取って代わった。「厳密に言うと、GⅡ.17の仲間はこれまでも年に数例は見られたが、今回のGⅡ.17は実質『新型』と呼んでもいいくらい、過去のものとはかなり違う」(片山室長)という。

 2月はノロウイルスの流行シーズンの終盤時期のため、その後GⅡ.17ウイルス感染者は漸減し、8月にはほぼゼロとなったが、同じ時期に中国でもGⅡ.17が主要株として報告され、また、台湾でも2014年にすでに同じ型が流行していたことが後で分かり、日本でも2015年9月からのシーズンに大きな流行となる可能性が懸念されるようになった。

 実際、今年9月以降、 国内の患者から検出されたウイルスのうち国立感染研究所が調べたもののほとんどは、GⅡ.17型だったという。

新型ウイルスが主流になると感染者が増えるワケ

 新型ウイルスが怖いのは、一つは、人がそれまでに獲得した免疫が役に立たなくなると考えられているためだ。もう一つは、医療機関で使われているノロウイルスの診断キットでは検出できないことがあるという点だ。

 ノロウイルスは、一度感染すると、1年から1年半程度は、同じ型のウイルスに連続して感染することはまずないとされている。「逆に同じ型でもほんのちょっと変わるだけで感染する可能性があり、2006/07年のシーズンにノロウイルスが史上最大の流行となったのも、それまでと同じGⅡ.4型ながらほんの少し変化したことが原因だったといわれている。今年はGⅡ.4からGⅡ.17にガラッと大きく変わる可能性があり、となると免疫を持っている人はほとんどいないので、感染する人が増える可能性が非常に高い」(片山室長)。

 また、ノロウイルスの診断キットは3歳未満、65歳以上の人には保険適用されており、感染で重症化しやすい年齢層は従来これでカバーできていたが、今年は診断をキットに頼ってしまうと、ノロウイルスなのにノロウイルスではないという診断を下す可能性もある。

 「そうなると、二次感染、三次感染を食い止められなくなる。そのようなことがないよう、キットに頼るのではなく、嘔吐、下痢など、臨床診断によってノロウイルスへの感染が強く疑われる場合は、ノロウイルスとして対処するよう厚生労働省を通じて医療機関に呼びかけている」(片山室長)という。

 今冬は新型ノロウイルスが流行する可能性があること、それがひとたび流行すれば、感染者が加速度的に増え、かつてないほどの大流行となる可能性があることは分かった。では、私たち一人ひとりはどんなことに気を付ければいいのか。具体的な対策については明日公開の続編(「大流行の可能性の「新型ノロウイルス」、対策は?」)で紹介する。

片山和彦(かたやま かずひこ)さん
国立感染症研究所ウイルス第二部第一室室長
上西一弘(うえにし かずひろ)さん

1985年、東京農工大学蚕糸生物学科卒業、株式会社ビー・エム・エル基礎研究部を経て、1990年、国立予防衛生研究所(現、感染症研究所)協力研究員に。2001年、国立感染症研究所ウイルス第二部主任研究官、2005~2007年、米国ベイラー医科大学分子ウイルス学部メアリー・エステス教授の研究室にリサーチアソシエートとして留学、2009年、国立感染症研究所ウイルス第二部第一室室長に。2014年より東北大学大学院医学系研究科大学院非常勤講師を兼任。国際ウイルス分類委員会(ICTV)・カリシウイルス研究グループメンバー、国際カリシウイルス会議役員。