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大動脈弁狭窄症の新治療法「TAVI(タビ)」って?

専門医が語るTAVIのメリットと課題

 伊藤左知子=医療ジャーナリスト

動脈硬化などが原因で発症する大動脈弁狭窄症(だいどうみゃくべんきょうさくしょう)という心臓の病気が、社会の高齢化に伴い増えている。治療は従来、胸を開いて行う手術が主流だったが、近年、TAVI(タビ:経カテーテル的大動脈弁植え込み術)という胸を開かずに行える新しい治療が可能となった。今回は大動脈弁狭窄症という病気と、新しい治療法TAVIについて紹介する。

治療をしないと1年以内に急性心不全の恐れ

65歳以上に多く見られる大動脈弁狭窄。(©Nutdanai Apikhomboonwaroo/123RF.com)

 あなたや、あなたの高齢な家族が、ちょっとした動作に伴う動悸や息切れ、疲れやすさなどの症状を最近感じているとしたら、大動脈弁狭窄症の可能性がある。

 大動脈弁狭窄症は加齢や動脈硬化などが原因で起こる心臓弁膜症のひとつで、心臓の4つの部屋を隔てて血液の逆流を防止する弁のうち、心臓から血液を全身に送り出す最後の扉にある大動脈弁が、硬化(血管が硬くなること)と癒着(動脈硬化によるカルシウムの沈着などで組織がくっついてしまうこと)により、狭く、動きが悪くなってしまう病気だ。65歳以上に多く見られる。

 病気が進むと、血液を送り出す力、すなわち血圧が、例えば100必要なときに、心臓は120、130と余計な力を出さなければならなくなる。この血圧差が大きくなると、ちょっとした動作で息切れがしたり、胸が痛くなるといった症状が現れる。ひどい場合は失神発作を起こすこともある。

 「適切な治療をしないと、症状が出てから1年以内に約半数が急性心不全で死亡するという研究報告もあります」と話すのは、上尾中央総合病院心臓血管センター長の手取屋岳夫さん。

 また、心筋肥大を伴う進行した大動脈弁狭窄症の場合、心不全の発作時にすぐ心臓マッサージができたとしても、心臓内に十分なスペースがないため血液を送ることができず、蘇生の確率は低くなるという。

治療のスタンダードは開胸を伴う外科手術

 大動脈弁狭窄症の治療は、症状の軽いうちは、心臓の負担を軽減させる薬の投与が中心となるが、薬物療法では硬く狭くなった弁を元の状態に戻すことはできない。そこで、従来行われてきた治療は、悪くなった大動脈弁を人工弁と入れ替える大動脈弁置換術という外科手術である。

 「胸を切って開けて、人工心肺という機械で一時的に生命を維持しながら、動きの止まった心臓を開けて機能の落ちた大動脈弁を取り、人工弁に置き換える手術です」と手取屋さん。

 この手術はすでに40~50年前から行われており、機械の性能や、人工弁(主に使われるのはウシやブタの生体組織で作った生体弁。他に機械弁がある)の品質は以前に比べ、格段の進歩を遂げている。「年齢などにもよりますが、人工弁(生体弁)の耐久性は15~20年の実績があります。例えば、70歳代で手術を行えば、人生を全うするまで手術をやり直す必要はまずありません」と手取屋さんは話す。

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