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結核の仲間だが治りにくい「肺NTM症」増加中

新薬登場で治療の選択肢広がるも過度の期待は禁物

 倉沢正樹=日経メディカル元編集長

結核と同様に抗酸菌という種類の菌が引き起こす「肺NTM症」。その9割は「肺MAC症」という病気だが、近年、国内外で患者の増加傾向が著しい。病原性が強くないにもかかわらず治りにくいのが特徴で、治療には長い年月がかかる。しかし2021年5月の吸入型新薬の登場や、これまで使用が認められていなかった抗菌薬の投与が可能になったことにより、肺NTM症の治療は転換期を迎えている。その最新事情を、慶應義塾大学医学部感染症学教室の南宮湖氏に伺った。

慶應義塾大学医学部感染症学教室の南宮湖氏
慶應義塾大学医学部感染症学教室の南宮湖氏

まず肺NTM症について、どういう病気なのかを教えてください。

 肺のNTM症(非結核性抗酸菌症)は結核と同じように、抗酸菌という細菌によって引き起こされる病気です。主な症状は痰、血痰、発熱、食欲不振、体重減少、全身倦怠感などで、基本的には結核と変わりません。ただし結核とは違って、ヒトからヒトにはうつらないと言われています。にもかかわらず、ここ数年、日本国内でも世界的に見ても患者さんが増えています。その理由はよく分かっていません。

 一方で、肺NTM症の治療法はまだ確立されていないため、治療に当たる医師や患者さんを悩ませているのが実情です。肺NTM症と診断されても、すぐに治療が開始されるとは限りません。軽症であれば経過観察となることもありますし、症状を抑える対症療法のみで様子を見ることもあります。症状が重い場合には抗菌薬による治療を開始しますが、そのタイミングや、治療をいつまで続けるべきかなどについて、確たる知見は得られていません。

検査や診断技術の進歩で診断される患者が増加

患者が増えている理由はよく分からないということですが、どのようなことが考えられますか。

 一つには、今まで見逃されてきたものが、検査や診断技術の進歩によって見つかるようになったということが考えられます。また、医師の間にこの病気に関する認識が広がってきたことで、診断の機会が増えてきたことが影響しているのかもしれません。ただ、正確なことは分かっていないのが現況です。

 このため、感染したものの肺NTM症と診断されていない患者さんは、いまだに多いと思われます。この病気の原因となる菌は日常生活の環境中、特に水回りにいる菌なので、痰の検査で菌が見つかっても、すぐに診断に至るわけではありません。2回にわたり菌が見つかって初めて肺NTM症と診断されるのですが、菌の発育が非常にゆっくりしているので、肺の中にある菌がうまくつかまえられず、診断に至らない例が多々あると推測されています。

そういう患者さんを拾い上げていくことが今後は大事になりますね。

 その通りです。そのために私たちは、まだ分からないことが多い肺NTM症に関して、多くの患者さんを診ている医療機関や研究施設とチームを組んで、病気の実態や特徴を明らかにすることを目指しています。また、NPO法人の「非結核性抗酸菌症・気管支拡張症研究コンソーシアム(NTM-JRC)」という組織を通じて、社会や市民の方に向けた肺NTM症に関する広報活動も行っています。

 こうした活動を通じて、最終的には画期的な新規治療法の開発を目指したいと考えています。とはいえ、すぐには難しいので、しばらくは草の根の活動を続けて、将来的にそういった方向につなげたいと思っています。

肺NTM症の治療法は確立されていないというお話でしたが、受診する病医院によって治療の内容が変わってくるということでしょうか。

 はい。肺NTM症については一応、治療指針があるのですが、その内容があいまいなため、同じ患者さんに対する治療方針が医師によって異なるということは実際にあり得ます。そのことが患者さんを惑わせる原因にもなっていますので、私たちは治療の均てん化が実現できるように、多くの科学的エビデンスを社会に送り出すことを目指して鋭意努力しているところです。

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