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結核の仲間だが治りにくい「肺NTM症」増加中

新薬登場で治療の選択肢広がるも過度の期待は禁物

 倉沢正樹=日経メディカル元編集長

求められる薬物療法の選択肢の増加

肺NTM症は治りにくく、長期にわたる治療が必要な病気だと聞いています。実際にはどのような治療が行われるのでしょうか。

 治療の基本は、複数の抗菌薬を用いた薬物療法です。ただし、薬を年単位で飲んでも、一部の患者さんは菌を体内から排除しきれないので、そのことが問題になります。特に、治療に不可欠なクラリスロマイシンやアジスロマイシンといった抗菌薬に対して菌が耐性化すると、治療は非常に難渋します。場合によっては呼吸不全、死亡に至る例もあるだけに、肺NTM症を難治化させないことが何より重要になります。

 仮に難治化してしまった場合には、現状では打てる手が少ないので、治療の選択肢、つまり抗菌薬の選択肢を増やす必要があると考えています。

2021年5月には、抗菌薬アミカシンの吸入製剤が新たに登場しました。

 この分野における新薬の登場ということで、非常に画期的であると捉えています。これによって救われる肺NTM症の患者さんは少なくないでしょう。ただし、過度の期待は禁物です。国内外の治験データを見ると、難治例に対する効果は3割程度にとどまっているからです。今後も、引き続き、効果が高い新薬の登場が望まれます。

 また2021年9月には、欧米の診療ガイドラインで使用が推奨されているにもかかわらず、日本では肺NTM症の治療に使えなかったクロファジミンとイミペネムという抗菌薬が、保険診療で使えるようになりました。諸外国で使える薬が国内で使えない状況を「ドラッグラグ」と呼んでいますが、こうした事例はまだたくさん残っています。その解消のためには、我々医療従事者がさらに努力していくことはもちろんですが、使用を求める患者さんの声が大きくなれば、行政の姿勢を変えることにもつながります。ぜひ患者さんにも、声を上げていただきたいと考えています。

既存薬のほか、肺NTM症に関する新薬をめぐる動きについてはいかがでしょうか。

 海外では、肺NTM症の治療に用いる新薬が、いくつか治験の段階にあると聞いています。日本をはじめ東アジアは肺NTM症が多い地域なので、医師をはじめとする医療従事者、患者さん、そして企業が一体となって、期待される治療法の開発に社会全体で取り組んでいける体制を整備できれば、と思っています。

 患者さんも悩まれていると思いますが、治療に当たる私たちも同じように、とても悩んでいます。肺NTM症は本当に分からないことだらけで、この病気に対して、いろいろなことを知りたいというのが正直なところです。患者さんも、私たち医療従事者と一緒になって、肺NTM症に立ち向かっていただければと思っています。

NPO法人が市民公開講座を開催

11月6日には前述のNPO法人、NTM-JRCによるオンライン市民公開講座が予定されているそうですね。

 これは昨年に続き2回目の開催となるもので、タイトルを「いま急増する呼吸器感染症~『肺NTM症』ってどんな病気?」としました。今回、私は事務局を務めています。肺NTM症の治療に携わる様々な立場の医師が登壇しますので、患者さんご自身に合った考え方をぜひ取り入れていただきたいと思います。

 また、長く治療を受けているベテランの患者さんにとっては、知っていることばかりかもしれません。ですが、それを元に患者さんが我々医療従事者や行政の背中を押してくれるような、そういった動きが出てくることも期待したいと考えています。

南宮湖(なむぐん ほう)さん 應義塾大学医学部感染症学教室専任講師
南宮湖(なむぐん ほう)さん 2007年慶應義塾大学医学部卒業。国保旭中央病院、慶應義塾大学医学部助手、日本学術振興会特別研究員、永寿総合病院呼吸器内科医員などを経て、2018年米国国立衛生研究所留学。2021年より慶應義塾大学医学部感染症学教室専任講師。

第2回 NTM-JRCオンライン市民公開講座

いま急増する呼吸器感染症
『肺NTM症』ってどんな病気?

開催日時:

2021年11月6日(土)13:00~15:15

受講方法:

申し込み者にYouTubeのアドレスをメールにてご連絡

主  催:

NPO法人 非結核性抗酸菌症・気管支拡張症研究コンソーシアム(NTM-JRC)

協  賛:

インスメッド合同会社

参 加 費 :

無料(事前登録制)

※セミナーお申し込みはこちら

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