コロナワクチン3回目は違うメーカーでも大丈夫? 米国は交差接種を承認
ファイザーとモデルナを替えても抗体価は十分に上昇、デルタ株にも効果
大西淳子=医学ジャーナリスト
新型コロナワクチンの3回目の接種(ブースター接種:既に持っている免疫をさらに強化するためのワクチン接種)において、先に接種したものとは違うメーカーのワクチンを用いても、十分な抗体価の上昇が得られることが、米国の研究で明らかになりました。
ワクチン接種完了者が7割を超え、3回目接種の準備が進む日本
新型コロナワクチンの接種完了者の割合が7割を超えた日本では、最初に接種を受けた医療従事者などに対する3回目の接種(ブースター接種)の準備が進んでいます。現時点では、先に2回接種したのと同じワクチンが用いられることになっています。しかし、過去2回の接種でアレルギー反応を示した人や、副反応に数日間苦しんだ人にとっては、3回目は気が重いものになるでしょう。
厚生労働省は、ファイザー社とモデルナ社のワクチンの2回目の接種時点で、特定の要件を満たす人(1回目の接種で重い副反応を経験し、医学的見地から同一のワクチンの接種が困難と判断された人など)には、交差接種、すなわち、初回とは別のメーカーのワクチンを接種することを認めています(*1)。また、10代、20代の男性については、モデルナ社のワクチンの接種後に、ごくまれに心筋炎・心膜炎を発症することがあるため、初回接種を終えた人も、希望すれば2回目はファイザー社のワクチンを選択できるようになっています(*2)。
今後、世界各国で提示されるデータによっては、日本でも、3回目のブースター接種において、先に2回目接種したものと異なるメーカーのワクチンを選べるようになる可能性はあると予想されています。
既に米国は、2021年10月20日、ブースター接種における交差接種を正式に認めました(*3)。この判断の背景にあったのが、査読前の論文を迅速に公開する「medRxiv」に、2021年10月15日に公開された以下の研究結果です(*4)。

違うメーカーのワクチンをブースター接種した場合の効果は?
米Baylor医科大学の研究者らは、米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)から資金を得て、ファイザー社、モデルナ社、ヤンセン社(ジョンソン・エンド・ジョンソン社)のいずれかのワクチンの接種を終えている人々を対象に、ブースター接種にこれまでと同じワクチンを用いた場合と、別のメーカーのワクチンを接種した場合の免疫反応を調べる小規模な臨床試験を行いました。
試験は米国内の10施設で行われました。少なくとも12週間前までに、モデルナ社、ファイザー社、ヤンセン社のワクチンのいずれかの接種を完了(モデルナ社とファイザー社は2回接種、ヤンセン社は1回接種)しており、新型コロナウイルス感染歴のない、健康な人たちを登録して、これら3種類のワクチンのいずれかをブースター接種しました。先に接種したワクチンとの組み合わせは、全部で9通りになりました。
採血は、接種前と接種日(1日目)の15日後、29日後に行い、ウイルス表面のスパイクたんぱく質(抗原)に結合する抗体(IgG抗体)の量と、偽ウイルスに対する中和抗体(ウイルスの細胞への感染を阻害する抗体)のレベルを測定しました(ワクチンの抗体価を測定する方法の詳細はこちら)。
*2 厚生労働省「新型コロナワクチン接種後の心筋炎・心膜炎について」
*3 FDA News Release. Coronavirus (COVID-19) Update: FDA Takes Additional Actions on the Use of a Booster Dose for COVID-19 Vaccines.
*4 Atmar RL, et al. Heterologous SARS-CoV-2 Booster Vaccinations – Preliminary Report. MedRxiv. Oct 15, 2021.