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腸を整えるビフィズス菌。認知機能が改善する研究も

認知症セミナー(後編)

 梅方久仁子=ライター

認知機能に関連する臨床試験

 ビフィズス菌に注目した清水さんらは、様々な菌株について認知機能を改善するものがないかをモデル動物で調べた。その結果、ビフィズス菌MCC1274株が有望と分かり、ヒトによる臨床試験を行った。

 予備試験として、軽度認知機能障害(MCI)を疑われる高齢者にビフィズス菌MCC1274を含むカプセルを24週間摂取してもらった。すると、摂取8週後、16週後、24週後に認知機能のスコアが改善されたという。

 そこで本試験では、プラセボ(偽薬)を対照とした二重盲検臨床試験を行った。

 50歳以上、80歳未満のMCIと疑われる方80名に、MCC1274株またはプラセボを含むカプセルを16週間摂取してもらい、摂取前後の認知機能を評価した。

 試験の結果、MCC1274株を摂取したグループでは、「アーバンス(RBANS)」(*2)という神経心理テストで、即時記憶(今聞いた電話番号や人の名前などの記憶)、視空間・構成(車の運転や物の整理など空間的な関係を把握する能力)、遅延記憶(一定時間経過後に思い出す能力)のスコアが、摂取前と比較して大幅に改善された。これらはプラセボ群と比較しても有意に改善されたといい、また、アーバンスの総合スコアも認知機能の改善が認められたそうだ。

ビフィズス菌MCC1274カプセルもしくはプラセボカプセルを16週間摂取し、摂取前から摂取後の変動値を比較した。対象者は50歳以上80歳未満。80名(ビフィズス菌群40名、プラセボ群40名)。神経心理テスト「アーバンス(RBANS)」で、即時記憶(今聞いた電話番号や人の名前などの記憶)、視空間・構成(車の運転や物の整理など空間的な関係を把握する能力)、遅延記憶(一定時間経過後に思い出す能力)のスコアが、摂取前と比較して改善されたという。アーバンスの総合点(左)も改善した。 **P<0.01, ***P<0.001, intergroup difference, Student's t-test (Xiao et al.,Journal of Alzheimer's Disease, 2020)
ビフィズス菌MCC1274カプセルもしくはプラセボカプセルを16週間摂取し、摂取前から摂取後の変動値を比較した。対象者は50歳以上80歳未満。80名(ビフィズス菌群40名、プラセボ群40名)。神経心理テスト「アーバンス(RBANS)」で、即時記憶(今聞いた電話番号や人の名前などの記憶)、視空間・構成(車の運転や物の整理など空間的な関係を把握する能力)、遅延記憶(一定時間経過後に思い出す能力)のスコアが、摂取前と比較して改善されたという。アーバンスの総合点(左)も改善した。 **P<0.01, ***P<0.001, intergroup difference, Student's t-test (Xiao et al.,Journal of Alzheimer's Disease, 2020)

 また、簡易認知機能スケールである「あたまの健康チェック(JMCIS)」においても同様に、プラセボと比較して有意な認知機能の改善が認められたという。

 「プラセボと比較してこれほどはっきりと認知機能が改善されたことには、私も驚きました。結果は、アルツハイマー病の国際学術誌Journal of Alzheimer's Diseaseに論文として投稿し、2020年7月に公開されました(*3)。国際的なアルツハイマー病の情報サイトALZFORUMで紹介されるなど、大きな注目を集めています」(清水さん)

 これまでのところ、MCIの疑いのある人に使用できる薬は存在せず、はっきりとした効果が証明されたサプリメントもないとのこと。

 今回のセミナー記事では、脳と腸が互いに影響を及ぼし合う関係を中心に紹介してきたが、今後、さらに研究が進めば、食べる物によって認知機能改善やMCIに対処できるようになるかもしれない。そんな日が来ることを期待したい。

*2 アーバンス(RBANS)は、認知機能の低下を手軽に数量化することを目的に米国で開発された神経心理学検査の一つ。1998年に開発された。
*3 Xiao et al.,Journal of Alzheimer's Disease, 2020

(図版制作:増田真一)

認知症セミナー記事一覧

(前編)

認知症の予防は40代から! 脳の老化を防ぐ5つのポイントとは?

(中編)

脳と腸の意外な関係 腸内細菌が認知症に影響する?

(後編)

腸を整えるビフィズス菌 認知機能が改善する研究も

清水金忠(しみず かねただ)さん 森永乳業株式会社 研究本部 基礎研究所長。日本農芸化学会フェロー、京都大学生命科学研究科客員教授、天津科学技術大学客員教授
清水金忠(しみず かねただ)さん 1984年中国華南農業大学卒、1991年名古屋大学大学院 農学研究科博士課程修了、理化学研究所などで研究職に従事。1995年森永乳業株式会社入社、主な研究テーマは腸内細菌やビフィズス菌、乳酸菌の基礎・機能性研究および応用技術開発。2013年に日本農芸化学会技術賞受賞、2016年には日本酪農科学学会賞を受賞。

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