病気の情報はまず図書館で 病院連携で専用コーナーや出張相談も
進む図書館と病院の連携
福島恵美=ライター
飯塚市立飯塚図書館の職員、田中宏尚さんは「図書館がより身近にがん情報に触れられる場所になってほしいという思いで、がん相談支援センターの皆さまとの連携のもと、がん情報サービスに取り組んでいます。がんについて知りたいことができた時に、『そういえば図書館にがん情報コーナーがあった』『図書館で調べてみよう』と思っていただける図書館になれればと考えています」とがん情報を発信する思いを話す。
司書の力を借りてがんの情報収集を
実際に病気のことを調べに図書館に行くと、医療関係の本がずらりと並んでいる。中には、「○○でがんが消える」というような、怪しさを感じつつも、藁(わら)にもすがる思いにいる時には思わず手に取りたくなるタイトルの本もある。
「図書館では利用者の“知る権利を守る”ことが大事にされているので、読みたいというリクエストがあれば基本的に購入が検討されます。ただ、利用者が望む資料の提供は図書館理念からすれば当然とはいえ、そうした資料の中には、医療者から見ると明らかに医療の常識を逸脱しているものもあります。でも、さすが司書さんたちは情報探しを手伝うプロで、内容がちょっと怪しいと感じる本は、購入しても後ろの書庫に入れてしまう図書館もあったりします。どの本を選べばいいのか迷ったら、『このような資料はないですか』と、ぜひ司書さんの力を借りてください。信頼できる情報を推薦してくれます」と八巻さん。
「がん情報ギフト」コーナーを設けている図書館(*3)など、病院との連携が確立している図書館であれば、資料だけでは答えられない相談は、がん相談支援センターをはじめとする医療機関の相談窓口にもつなげてくれるという。
がん情報ギフトとは、国立がん研究センターが発行する各種「がんの冊子」を図書館に寄贈するプロジェクトで、2017年から始まっている(「がんの冊子」は、同センターが運営するウェブサイト「がん情報サービス 」でもPDFが公開されており、誰でも利用できる)。寄付金を得て冊子の活用を希望する図書館に贈っており、2019年度中に累計300館ほどに迫る見通し。この寄付事業では、消費者が自分が寄贈したい都道府県を選んで1000円からの寄付が可能。「がん情報ギフトを通じて、苦しかった時に情報に助けられた方の思いや、病気がもたらす様々な苦労を越えた方の思いなど、“思い”が回っていくような仕組みに育てていきたい」(八巻さん)
身近な場所の図書館で、がんの確かな情報である「がんの冊子」を手に取れるのは便利なことであり、インターネットが使えない人にとっては貴重な情報源だ。がん情報ギフトへの支援、図書館でのがん情報の広がりに期待したい。
(インタビュー写真:村田わかな)
国立がん研究センターがん対策情報センター医療情報評価室室長
