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依存症を考える なぜリスクを承知で痴漢行為を繰り返すのか?

精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳さんに聞く(下)

 及川夕子=ライター

男尊女卑が変わらない限り、性犯罪はなくならない?

「弱さ」でつながることの必要性について、詳しく教えてください。

斉藤 前回記事「大卒・妻子持ちが性犯罪に走る背景に『依存症』」でもお伝えしましたが、「日本社会に残る男尊女卑の価値観が変わらない限り、性犯罪者は量産されていく」というのが私の考え方です。選挙演説のときなどに、年配の男性が女性の候補者を馬鹿にしたりかみ付くような場面があるかと思いますが、あれはとても象徴的なシーンだと思います。たぶん、議員が女に務まるのか?と言いたいんでしょう。こういう人にとって、自分より弱いと思っていた人から反発されることや、その人たちから自分の存在価値を否定されたり、拒否されたりすることは、とても怖いことなんです。

 ストレスで追い詰められたとき、助けを求めるのではなく、相手を傷つけることで自分自身のパーソナリティを取り戻す。残念ながらこの世の中には、このような人が少なからず存在します。パワーゲームから降りることが怖いから、つまり負けを認められないから、苦しいのです。

泣いてはいけない、我慢をしないといけない、悩みは自分で解決しなくてはいけないとか、大人らしさ、男らしさを求められる社会では、ストレスもたまるでしょう。現代社会では、誰もが抱えがちなストレスかもしれないですね。

斉藤 そうですね。男性はむしろお酒の席などで自分の武勇伝を語りたがりますが、それは他者を支える力にはなりません。むしろ、弱さを認めると、弱さでつながること、そこに人間同士の絆が生まれる。誰かの弱さが、他の人の力になったりするわけで、そこに回復のヒントがあります。

 本当は、泣いてもいいし、弱音を吐いてもいいんです。私もあるとき、患者から「斉藤さんの弱い話が聞きたいんだ」と、言われたことがありました。治療を担当する側も、正直になること、楽になることが大切なのだと気づかされました。これは、誰にでも当てはまります。性依存症に限らず、自分の「弱さ」を認めそれが共有できることは、ストレスや依存症を解消する鍵なのです。

健康的な生活習慣と、仕事以外のつながりが重要

では、私たちが依存症に陥らないための具体的な予防策としては、やはり趣味など、何かのつながりを持つことが重要でしょうか。

ストレスを感じたときのコーピング(対処行動)はたくさん持っておくことが大事。写真はイメージ=(c)Olena Yakobchuk -123RF

斉藤 依存症は、日常の生活習慣の中から生まれてくるものです。ですから、日ごろの習慣や人間関係を見直すことはとても大事ですね。仕事以外の健康的で楽しい趣味や仲間を作ること、生活習慣の乱れを改善すること、コーピング(ストレスに対処する行動)は一つといわずたくさん持っておくことなどがポイントになります。誰の中にも加害者性が潜んでいると自覚し、ストレスの対処を心掛けてほしいですね。

 当クリニックの再犯防止プログラムには、参加者が共同で行うような運動プログラムもあります。スポーツは、汗をかいてすっきりして気持ちがいいものですよね。続けるうちに、体重や食生活にも関心が出てきますし、きちんと睡眠をとろうとか、食べるものも含め自分の体に関心が向く。上達していくことで、達成感も得られます。運動は習慣を変えたい人にはお勧めの方法です。

 仕事以外のコミュニティにつながった例としては、やはり性依存症を例に挙げると、痴漢常習者だったある患者は、某アイドルの追っかけという新たな趣味を見つけ「ファン同士のコミュニティでつながりができたことで、(痴漢行為以外の)生きがいができた」と語っています。「『推しメン(アイドルグループの中のイチ推しメンバーのこと)』に迷惑をかけると思うと、痴漢をやっちゃいけないというストッパーになる」とも話していました。彼にはパートナーもいますが、家族も、犯罪行為をするよりずっといいということで、応援しているそうです。

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