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医師が思う、川島なお美さんの逝去から学ぶべきこと

がん患者は最期に急激に悪化する、そして、ギリギリまで自分らしく生きることができる

 廣橋 猛=永寿総合病院 がん診療支援・緩和ケアセンター長

 女優の川島なお美さんが9月24日、胆管がんのため逝去されました。胆管がんという、悪性腫瘍の中でも難しい病気と闘っておられたため、非常に心配していたのですが、不安が現実となってしまいました。

 今回、皆さんが驚かれたことは2つあったのではないでしょうか。1つ目は9月8日にご夫妻で記者会見に臨まれた際、非常に痩せたご様子であったこと。2つ目はその記者会見から、わずか16日後に逝去されたことです。

 記者会見では凛と立ってお話をされていましたが、見るからに羸痩(るいそう)が進んでおり、恐らく末期がんの状態なのではないかと感じました。そして、そのわずか16日後の訃報に驚きはしましたが、予想外とは感じませんでした。

 ここに、末期がん患者の経過について学ぶべきことが隠されています。

がん患者は最期に急激に悪化して亡くなる

 一般の方からすると、病は少しずつ悪化していくという印象をお持ちのようです。がん患者が亡くなるとき、ご家族は急に悪くなってしまったとショックをお受けになることがありますが、終末期がん患者を多く見ている医療者からすると、よくある光景です。

 このように、がん患者は最期に急激に悪化して亡くなります。逆の見方をすると、亡くなるギリギリまで、自分のやりたいことができる可能性があります。

[画像のクリックで拡大表示]

 ここに自分がよく患者さんやご家族に説明するグラフ(Lynn J. Serving patients who may die soon and their families. JAMA.2001;285: 925-32.から引用)があります。がん患者は亡くなる1~2か月前まで、ほとんど普通と変わらず活動することができます。しかし、最期は急激に身体機能が低下して動けなくなっていきます。外出・入浴・排泄といった生活動作に、誰かの助け、すなわち介護を要する状態となります。

 それに対し、心不全や呼吸不全などの内臓疾患、認知症・老衰は、ゆっくりと同じような傾きで機能が低下していきます。ここが、がん患者が他の疾患の患者と異なるところです。

 このグラフを患者さんやご家族に説明することで、最期をどこでどう過ごしたいかの準備を、未然に、元気なうちからすることの重要性に気付いてもらっています。まだ自分は元気だから大丈夫、ではなく、急に悪くなってからでは間に合わない恐れがあるので、なるべく早めに備えておきましょう、ということです。

 がん患者は最期の1~2か月に急激に悪化するという事実は、知らないままだと本人や家族に衝撃を与えてしまいますが、知っていると逆に良い面もあることに気付きます。それは亡くなるギリギリまで、普段通り生活できるチャンスがあること、そして介護を受けるのはごく短期間で済む可能性が高いということです。

 この事実を、抗がん剤治療の手が完全になくなってから知るのでは遅い可能性があります。既に最期の1~2カ月に差し掛かっていそうな人もいるからです。

 がんが他臓器に転移していて、抗がん剤治療の選択肢も残り少ないという状況。すなわち、既に完治は望めなく、そう遠くないうちに治療の手がなくなってしまうだろうというときに、たとえいつか亡くなるときが来るとしても、ギリギリまで自分らしく生きるチャンスがあるという事実は、残された時間を過ごす力になるのではないでしょうか。そして、そのときに自分らしく生きるために、必要な準備をするきっかけになるのではないでしょうか。

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