良質な睡眠のための自律神経の整え方 4つのポイント
順天堂大学・小林弘幸教授に聞く快眠のコツ
塚越小枝子=フリーライター
秋は休養・睡眠に適した季節。この時期に夏の疲れをしっかり取りたいところだが、ストレスの多い現代社会では、自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスが乱れ、十分に休養できない人も多いという。明日のパワーにつながる質の良い休養・睡眠をとるためにはどうしたらよいのだろうか。リカバリーウェアを扱うベネクス主催のセミナーで順天堂大学・小林弘幸教授に聞いた。
現代人の9割は「交感神経過緊張型」

自律神経とは、心臓や腸、血管などの体の機能を、自分の意思とは無関係にコントロールしている神経系。交感神経と副交感神経から成る。これらは1日のうちでも変動があり(日内変動)、健康な体では、朝から日中にかけて交感神経が活発にはたらき、アクティブで活動的な状態になる。副交感神経は夕方から夜にかけて活発にはたらき、リラックスしている状態に切り替わる。車に例えれば、交感神経がアクセルで、副交感神経がブレーキの役割だ。
順天堂大学医学部総合診療科教授・小林弘幸さんによれば、自律神経は特に血管系に作用して血流をコントロールしており、いわばカラダのライフラインのような存在だという。
「60兆個の細胞一つひとつに、いかに血流を行き渡らせるかが健康のカギを握ります。どんなに立派な骨や筋肉を持っていても、自律神経がはたらかなければ健康は保てません」(小林さん)
血管は交感神経が優位にはたらくと収縮して、副交感神経がはたらくと拡張する(表)。イライラしてどなったりすれば、交感神経が上がって血管が収縮し、血圧も心拍数も上がる。交感神経が過度に緊張していると、頭が痛くなったり倒れたりすることもある。
「ストレスがかかると交感神経が優位になって、血管が細くなり、血流が減少して、さまざまな不調につながります。本来なら交感神経と副交感神経がバランスよくそれぞれ高いレベルではたらくのが理想ですが、現代の日本人は9割方、“交感神経過緊張型”です」(小林さん)
ストレスが多い現代では交感神経が過剰に優位になりがちなのだ。ストレスは自律神経だけでなく、内分泌系や免疫系などいろいろなところに障害をもたらす。ストレスがかかっても、ある程度は恒常性を維持しようとする機能がはたらくのだが、耐えきれずに破綻をきたすとさまざまな病気の発症につながるという。
交感神経 | 副交感神経 | |
血管 | 収縮 | 拡張 |
血圧 | 上がる | 下がる |
心拍 | 速い | ゆっくり |
胃腸 | はたらきを抑える | はたらきを活発にする |
筋肉 | 収縮 | 弛緩 |
瞳孔 | 開く | 狭まる |