日本経済新聞 関連サイト

ようこそ ゲスト様

日経 Gooday

ホーム  > 医療・予防  > トピックス  > 大隈氏「役に立つかどうかで科学を捉えると社会はダメになる」
印刷

トピックス

大隈氏「役に立つかどうかで科学を捉えると社会はダメになる」

ノーベル生理学・医学賞受賞の大隅良典氏が会見

 久保田 文=日経バイオテク

 ノーベル生理学・医学賞の受賞を受け、10月3日の夜、記者会見に応じた東京工業大学大隅良典栄誉教授は、「役に立つかどうかという観点でばかり科学を捉えると、社会をダメにすると思う」と話し、基礎研究の重要性などを強調した。会見の途中、大隅栄誉教授は安倍晋三首相、松野博一文部科学大臣からのお祝いの電話にも応じた。主な質疑応答の内容は以下の通り。

会見で記者の質問に答える東京工業大学栄誉教授の大隅良典氏。

受賞の一報は。家族へ伝えたのか。

 研究室で電話を受けた。妻に伝えたところ、第一声は『えっ…』という感じだった。最近、ノーベル賞の発表時は、毎年母校の高校に同窓生が二十人、三十人集まっていると聞き、毎年申し訳ないと思っていた。ある意味で肩の荷が下りた。

家族への感謝の言葉は

 「妻は一時期は研究を共にしていた研究仲間。それだけに、そこに甘えてきたという風にも思う。そういう意味では、いい家庭人ではなかったかもしれない。

研究者として「人がやらないことをやる」という姿勢を貫いてきた。そのきっかけは。

 実はあまり競争が好きではない。大勢で寄ってたかってすごいことができるのも1つの科学の在り方だが、一番乗りを競うよりは、誰もやってないことを見つける喜びこそが研究者を支えるのではと常々思っている。だからこそ、従来、ゴミ貯めだと思われていた液胞に注目し、誰もたんぱく質分解に興味のないときにオートファジーの研究を始められた。

政府の研究費は近年、出口志向を強めている印象だ。

 大変憂いている。やはりサイエンスは、どこに向かっているか分からないからこそ楽しい。そういうことが許される社会的な余裕が欲しい。分からないことにチャレンジするのが科学的な精神だろうと思っているので、少しでも社会がゆとりを持って基礎科学を見守る社会になってほしいと常々思っている。今後は、そのためにも努力していきたい。

ノーベル生理学・医学賞の日本人の単独受賞は利根川氏以来だ。

 最近は、2人、3人での受賞がしばらく続いていたので、単独受賞と知らされて実は驚いた。昨日の夜中、もし自分が受賞するならだれと共同受賞かと考えていたのだが、オートファジー研究は日本が大きく世界をリードしてきた分野であり、海外でこの人という研究者が思い当らなかった。共同受賞があったらいいなと思ったが、日本人3人という組み合わせはないなとも思っていた。蓋を開けてみて、だから単独受賞になったのかなあ、と思った次第だ。驚きも含めて感慨深い。

岡崎国立共同研究機構基礎生物学研究所時代に水島昇氏(東京大学大学院医学系研究科教授)、吉森保氏(大阪大学大学院生命機能研究科教授)とオートファジーの研究をした。当時の研究が受賞に果たした影響は。

 私は40年間、酵母の研究をつづけ、27年間、オートファジーを研究してきた。オートファジーは動物細胞で初めに見つかったので、高等生物のオートファジーを研究したいと思って吉森氏を助教授に迎えた。その点では基礎生物学研究所はとってもありがたいところだ。酵母を中心として、動物も植物もやるという世界に類のない研究室を数年間運営できたというのはオートファジーの世界を広げる意味で意義のあるものだったと思う。

子どものころノーベル賞にあこがれていたと発言されていた。

 そんなに大きな意味はなく、子供が研究者になりたいと思った時にあこがれとしてあったということ。小学校の卒業時、友人と交わしたメモに、友人がそういうことを書いてくれていた。小さなときから研究者にあこがれをもっていたのだと思う。ただ、実際に研究をスタートしてから賞につながると思ったことはない。そういうことが励みになったこともなかったように思う。

研究への姿勢を聞きたい。

 科学にはゴールがない。何かが分かっても、新しい疑問が湧いてくる。酵母で全部解けたと思ったことは一度もないし、未だに酵母にたくさんのことを問いかけてみて、動物細胞の理解につながればいいなと思っている。

1/2 page

最後へ

次へ

RELATED ARTICLES関連する記事

医療・予防カテゴリの記事

カテゴリ記事をもっと見る

FEATURES of THEMEテーマ別特集

  • 「胃がん」撃退のため知っておきたい最新情報

    これまで多くの人の命を奪い、「死の病」であった胃がんが、「ピロリ菌」除菌の登場によって未然に防ぐことができる病気になってきた。また、万が一胃がんになってしまった場合も、胃カメラによる検診を定期的に受けていれば、超早期の段階で見つけて治療し、胃の機能をほとんど損ねることなく日常生活に戻ることができる。本特集では、近年死亡率が大きく減少している胃がんの最新事情をまとめる。

  • 寝ても取れない疲れを取るには?

    「疲労大国」といわれる日本。「頑張って仕事をすれば、ある程度疲れるのは当たり前」「休む間もないほど忙しいが、やりがいがあるから、さほど疲れは感じない」などと思っている人も多いかもしれない。だが、睡眠時間を削るような働き方を続けていると、知らぬうちに疲れはたまる。結果、「寝てもなかなか疲れがとれない」という状態に陥るばかりか、免疫力の低下や、生活習慣病の発症につながることは多くの研究で知られている。疲労の正体から、疲労回復の実践的な方法までをまとめた。

  • つらい筋トレ不要? 効率的に「お腹を凹ませる」トレーニング

    薄着の季節になると、何かと気になる“お腹ぽっこり”。短期間で何とか解消したい!と思う人は多いだろう。しかし、スポーツジムでしっかり運動するのはつらいし、運動する時間を確保するのも大変だ。そこで、今回のテーマ別特集では、手軽に実践できる「ドローイン」と「猫背姿勢の改善」で“ぽっこりお腹”を解消していこう。

テーマ別特集をもっと見る

スポーツ・エクササイズSPORTS

記事一覧をもっと見る

ダイエット・食生活DIETARY HABITS

記事一覧をもっと見る

からだケアBODY CARE

記事一覧をもっと見る

医療・予防MEDICAL CARE

記事一覧をもっと見る

「日経Goodayマイドクター会員(有料)」に会員登録すると...

  • 1オリジナルの鍵つき記事鍵つき記事がすべて読める!
  • 2医療専門家に電話相談できる!(24時間365日)
  • 3信頼できる名医の受診をサポート!※連続して180日以上ご利用の方限定

お知らせINFORMATION

SNS

日経グッデイをフォローして、
最新情報をチェック!

RSS

人気記事ランキングRANKING

  • 現在
  • 週間
  • 月間

NIKKEICopyright © 2018 Nikkei Inc. All rights reserved.