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疲れのせいじゃない。貧血を見落とさないで

血液内科医・女医の貧血観察記

 濱木珠恵=鉄医会ナビタスクリニック東中野 院長

(©Jasmin Merdan-123rf)
(©Jasmin Merdan-123rf)

 貧血という病名をきいたとき、みなさんはどのような症状を思い浮かべるでしょう。

 貧血は、血色素(ヘモグロビン=Hb)の値が減ってしまっている状態です。なんらかの原因で赤血球をうまく作れなくなってしまった状態で、一般的には、10~40代の女性に多い鉄欠乏性貧血がよく知られています。男性でも中高生やアスリートではよく見られる病気ですし、高齢者でも貧血の原因としてがんが見つかるという話はよくあります。材料である鉄分が不足することで起こる貧血は、実は身近な病気なのです。

 しかし、クリニックで内科外来をしていると、立ちくらみやめまいの症状を『貧血』と思っている方が多いことに気づきます。たとえば、「通勤電車の中で貧血を起こした」とか「たちくらみを起こして、血の気がひいて倒れた」と言ってくる方がいます。もちろん体調不良のサインの一つではありますが、これらはいわゆる『脳貧血』と言われる、起立性低血圧などの血圧の調節障害の症状であり、貧血の典型的な症状ではありません。

 このような勘違いは映画やドラマの影響があるかもしれません。古いところでは山口百恵さんの『赤い疑惑』、比較的新しいものでは綾瀬はるかさんや長澤まさみさんの『世界の中心で愛を叫ぶ』など、白血病になった主人公の女性が貧血による立ちくらみをおこし倒れてしまう描写が出てくるせいか、『めまい・立ちくらみ=貧血』のイメージが強いようです。

 では、実際に貧血になったとき、どのような症状が出るのか、ある女性患者さんの場合を見てみましょう。

30代後半の女性

 中肉中背、好き嫌いなくしっかり食べるタイプ、花粉症以外は目立った持病はありません。月経痛が強かったものの鎮痛剤を飲めば仕事をすることはできており、月3回程度の夜勤もこなせる体力はありました。健康診断で異常を指摘されたことはなく、貧血の既往もありませんでした。

 ある年の秋に職場を異動した頃から、毎日が疲れやすいと感じるようになってきました。疲れているのに、夜中に目が覚めたり、早朝に一度目が覚めたりと、眠りが浅くなったと感じるようになりました。

 最初は、21時までの勤務で生活リズムがずれたせいや、緊張感による疲れもあるのだろうと考えて様子をみていましたが、そのうち、平日の朝は出勤のギリギリまで寝たり昼の休憩時間も仮眠を取ったりしているにもかかわらず、だるさと身体の重さが抜けなくなってきてしまいました。土日も疲れが残っているため、少なくとも週末の1日は家で休んでいるようになり、それまで通っていたジムも、自然と足が遠のいてきました。

 同僚からは「顔色が悪い」と言われるようになりました。自分ではそこまで不健康とは感じていなかったので「寝不足のせいかな」とか「メイクが適当で」と答えていましたが、実際のところ、慢性的に疲れていました。そのせいか、集中力が続かないと感じていました。睡眠は浅くなっていましたが、うつ状態などの精神的な異変は出ておらず、いろいろやりたいという気持ちはあっても、疲れていて行動にうつせなくなりました。ふだんどおりの日常業務はこなせるのですが、新しいことを始めたり思考の転換をはかったりという余力がなくなってきました。

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