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疲れのせいじゃない。貧血を見落とさないで

血液内科医・女医の貧血観察記

 濱木珠恵=鉄医会ナビタスクリニック東中野 院長

(©maksym yemelyanov-123rf)

 ちなみに、鉄剤を飲み始めてしばらくすると、睡眠の質が圧倒的に改善し、ぐっすり寝られるようになりました。集中力も戻ってきて、気持ち的にも余裕をもてるようになりました。正直に言えば「自分は頑張れなくなった。気合いが足らないのかな」とかなり凹んでいたのですが(医者は体育会系だと思います)、それだけではなかったみたいです。

 仕事の疲れは今でも普通に感じますが、えたいの知れない疲労感は消えました。歩いたり階段を上がったりということも以前どおりにできています。もちろん運動不足や年齢変化による筋力や心肺機能の低下は今でも少し感じますが、症状の大部分が貧血の影響だったことは治療を終えてから強く実感しています。なお子宮筋腫の治療もすませ、月経痛も出血もとても軽くなりました。今では貧血も子宮筋腫もほとんど問題ありません。まったくあの当時の苦行はなんだったのかと思うくらいです。

 クリニックに受診する鉄欠乏性貧血の患者さんの多くは、健康診断で貧血を指摘されて受診します。しかし、なかには数年前から指摘されていたのに自覚症状がなかったから放置していた、という方もたくさんいます。自分の経験をもとに考えてみると、私の場合は急に出血が増えたので自覚症状がはっきり出ていますが、慢性的に進行する鉄欠乏性貧血は、身体が順応してしまって自覚しにくいかもしれません。また自覚症状があっても、私がそうであったように、それを貧血の症状と思っていないこともありえます。

 そんな患者さんでも、鉄剤投与で貧血が改善すると「身体がラクになった。実は今までしんどかったんだということが分かった」と言う方がほとんどなのです。それに、自覚症状がないからといって、身体に対して負担がかかっていないというわけではありません。赤血球は身体全体に酸素を運ぶ役割を果たしているので、貧血のときには体中が酸欠となってしまい、ジワジワと身体を苦しめています。身体からSOSサインは出ているはずなのですが「軽い貧血だから」「貧血くらいで病院に行けない」と無視している方が少なくありません。あぁ自分で書いていて胸が痛みます。

 たかが貧血、されど貧血。ということを、身をもって体験した一例についてのお話でした。貧血、あなどるべからず。

濱木珠恵さん
鉄医会ナビタスクリニック東中野 院長
濱木珠恵さん 北海道大学卒業。国立国際医療センターにて研修後、虎の門病院、国立がんセンター中央病院にて造血幹細胞移植の臨床研究に従事。都立府中病院、都立墨東病院にて血液疾患の治療に従事した後、2012年9月より現職。専門は内科、血液内科。生活動線上にある駅ナカクリニックでは貧血内科や女性内科などで女性の健康をサポート中。
この記事は医療ガバナンス学会が発行するMRICメールマガジンからの転載です。

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